生産緑地を相続したら 買取申出の条件と解除前に確認する税金

生産緑地で農業をしていた親が亡くなった場合、指定から30年が過ぎていなくても、主たる従事者の死亡を理由に買取申出ができることがあります。
ただし、相続しただけで自由に建築や売却ができる状態になるわけではありません。
農業を続けるか、土地を使い替えるかを決める前に、親が受けていた相続税の納税猶予を確認してください。
申出により猶予期限が確定し、税金と利子税の納付が必要になる場合があります。
- 死亡を理由に買取申出ができる条件がわかる
- 申出から行為制限解除までの手続きを整理できる
- 解除前に確認する猶予税額と土地評価がわかる
生産緑地は相続だけで指定が外れるわけではない

生産緑地と特定生産緑地の違い
生産緑地は、市街化区域内の農地等を都市の緑地として保全する制度です。税負担上の措置がある一方で、農地としての管理や建築等の行為制限が伴います。
特定生産緑地は、当初の指定から30年となる申出基準日以後も、買取申出ができる時期を原則10年延長する仕組みです。
延長期間が終われば自動的に宅地になるという制度ではありません。
主たる従事者の死亡なら指定期限前でも申出を検討できる
当初指定から30年の経過のほか、主たる従事者の死亡や農業従事を不可能にする故障も、買取申出の事由になります。
特定生産緑地でも、主たる従事者の死亡を理由とする申出は検討できます。
亡くなった人が単に所有者だったのか、中心となって農業を担っていたのかを区別します。
ほかの家族が主たる従事者だった場合などは、死亡だけを根拠に手続きを進められるとは限りません。
買取申出の前に農業委員会と市区町村へ相談する

主たる従事者の証明と対象地を確かめる
死亡を理由に申し出る場合、農業委員会による主たる従事者の証明などを求められます。
証明のために営農実態の調査が必要になることもあるので、まず所在地の農業委員会と都市計画担当窓口へ連絡します。
同じ親が複数の生産緑地で農業をしていた場合は、一部の土地を継続するのかも説明します。
残す農地で引き続き営農できるかという確認が、申出対象を決める際に関わります。
相続人や担保権者との調整が必要になる
必要な書類や所有者の表示は自治体で確認します。相続人全員で申し出る場合と、遺産分割後に取得者が申し出る場合では、提出する相続関係資料も変わります。
抵当権などの権利が設定されていると、権利者との調整が必要です。
納税猶予の担保として設定された抵当権もあり得るため、登記と親の申告書を別々に確認してください。
申出後は買取りの判断とあっせんを経る

自治体が必ず買い取る制度ではない
買取申出をすると、自治体は原則1か月以内に買い取るかどうかを通知します。買い取らない場合には、農業委員会による農業従事者へのあっせんへ進む仕組みです。
「買取申出」という名前でも、自治体が必ず代金を払って土地を引き取る制度ではありません。
土地を手放すつもりなら、買い取られない場合の処分方法まで考えておく必要があります。
3か月後の行為制限解除と都市計画の手続きを分ける
申出の日から3か月以内に、売買等による所有権の移転が行われなかった場合は、行為制限が解除されます。
相続などの一般承継による移転は、この判定の移転に含めません。
行為制限の解除と、都市計画上の生産緑地地区を変更・削除する手続きは分けて考えます。
用途地域や接道、農地転用等の確認も残るので、建物を建てられるかは所在地の窓口で確かめます。
解除する前に納税猶予と固定資産税を試算する

猶予税額と利子税の納付が必要になる場合がある
親が過去の相続で納税猶予を受けていた場合と、今回取得する子が新たに猶予を受ける場合を区別します。
親の死亡による既存猶予の免除手続きと、子が使う特例の要件は同じ手続きではありません。
買取申出は猶予期限が確定する原因となり得ます。申出前に、猶予税額、利子税、担保の処理、固定資産税の今後の負担を税務署や税理士に確認してください。
相続税評価は死亡日に申出ができたかで異なる
生産緑地の相続税評価では、死亡日に買取申出ができる土地だったかが重要です。
主たる従事者だった親が亡くなり申出が可能となる場合は、原則として生産緑地でないものとしての価額から5%を控除する扱いです。
申出ができない生産緑地は、申出できる日までの期間に応じて10〜35%を控除します。
後から指定が外れたという理由だけで、死亡日の評価額を自由に選び直すものではありません。
耕作を続ける案と土地を使い替える案を比較する

貸付けによる営農継続も制度の対象を確認する
農業を続ける選択肢には、自ら耕作するほか、制度で認められた都市農地の貸付け等もあります。ただし、どの貸付けでも納税猶予を続けられるわけではありません。
農業委員会へ貸付け制度の利用を相談し、税務上の要件も併せて確認します。税金だけでなく、農地の管理を現実に続けられるかという点から比べてください。
申出書より先に税額と利用計画を固める
土地を売却して納税する案なら、売却価格だけでなく、猶予税額や利子税、売却費用を差し引いた手取りを確認します。
土地の相続税が払えないときの選択肢も判断材料になります。
最初に用意するのは、生産緑地の指定資料、登記事項証明書、農地の一覧、親の過去の相続税申告書です。
相続税申告に必要な書類を参考に、今回の相続の資料と過去の特例の資料を分けて保管しておきましょう。
よくある質問

親が亡くなれば生産緑地は解除できますか
親が主たる従事者だった場合などは、死亡を理由に買取申出ができることがあります。相続だけで指定や行為制限が自動的に外れるわけではありません。
買取申出をすれば市区町村が買ってくれますか
必ず買い取られるとは限りません。自治体の買取り判断や農業従事者へのあっせんを経て、所定の期間に所有権移転がなければ行為制限の解除へ進みます。
相続税の納税猶予中でも買取申出はできますか
申出によって猶予税額と利子税の納付が必要になる場合があります。担保権の調整も含め、申出を出す前に税務署等へ確認してください。