家族信託の受託者が破産したら 財産の区分と後任を確認する

相談に持参する書類と封筒

親の財産を管理している子が受託者として破産しても、信託財産が当然にその子の破産財団へ入るわけではありません。ただし、何が信託財産かを示す資料と、誰が次の管理を行うかは別に確認する必要があります。

ここでは、母の生活費を支払う家族信託で、受託者の子について破産手続きが問題となった場面を考えます。不動産、管理口座、個人資金との混在を示す三つの資料から、開始決定、契約条項、後任への引継ぎをたどります。

この記事でわかること
  • 受託者個人の財産と信託財産を示す資料
  • 破産手続開始と任務終了の原則や契約の例外
  • 後任の権限と母の定期支払いを引き継ぐ準備
目次

信託財産と受託者本人の財産を資料で区分する

取引記録を保管するファイルと資料

信託法25条は、受託者が破産手続開始の決定を受けても、信託財産に属する財産は破産財団に属しないと定めています。受託者個人の財産と、受益者のために管理している信託財産を区別する仕組みです。

ただし「母のお金のはず」という説明だけでは、個々の財産の所在や権利を確かめられません。信託契約、登記、帳簿、通帳、資金移動の記録を対応させ、信託財産に属することと、その財産を第三者へ主張するための条件を確認します。

資料この架空例の状態確認する作業
T01 不動産の登記母から信託した物件に信託登記がある対象の地番と信託目録を契約に対応させる
T02 管理する金銭通帳と信託の収支帳簿がある基準日の残高と入出金の根拠を合わせる
T03 混在した入金受託者の個人口座へ一部入金がある送金元、目的、日付、移動先を一件ずつ追う

不動産など登記や登録のできる財産については、信託法14条の対抗要件も関わります。また、34条は財産の種類に応じた分別管理を定め、金銭等では計算を明らかにする方法を示しています。口座名に「信託」とあることだけで全てを判断せず、口座の契約内容と帳簿も確認してください。

T03に混在があるなら、残高を推測で信託と個人に分けたり、見つかった金額を急いで別口座へ移したりせず、経緯を示して弁護士へ相談します。混在したことだけで信託財産全体が無効になると断定するのも適切ではありません。

信託財産に関わる債務と本人の借金を区別する

提出書類を照合するための紙資料と筆記具

信託財産が個人の破産財団に入らないという説明は、誰からの請求でも無条件に拒めるという意味ではありません。信託法23条は、信託財産に対する強制執行等について、信託財産責任負担債務に係る場合などの例外を定めています。

届いた請求の例分けて調べること
受託者が個人で使ったカードの請求契約者、使途、信託財産と関係する根拠の有無
信託不動産の修繕代金契約と権限、工事の対象、支払義務の内容
信託設定前からの権利に関する連絡権利が生じた時期と登記、設定時の事情

請求書に受託者の氏名があるだけで、全てを個人債務にすることはできません。反対に、家族の生活に関係する支出だったというだけで、全て信託財産から払えるともいえません。請求書、契約書、工事の目的、支出の経緯をセットで示します。

詐害的な信託など、債権者との関係で別に検討すべき問題もあります。返済を避ける目的で今から個人資産を信託へ動かす方法として利用しないでください。受益者自身が持つ受益権と、受託者が管理する財産の区別も必要です。

差押えや訴状など期限のある書面を受け取ったら、信託だから関係ないとして放置せず、受領日と期限を記録して相談します。相手への回答や財産の移動をする前に、T01〜T03と請求の根拠を確認することが先です。

開始決定と契約条項から任務終了と後任を確認する

合意の内容を確認する契約書類

破産の申立てを検討している、申立書を出した、破産手続開始の決定を受けた、という段階は別です。信託法56条1項3号は、所定の受託者が開始決定を受けたことを任務終了の事由としています。相談開始の日だけから、すでに受託者でなくなったと決めないでください。

ただし、同条1項ただし書は、破産開始等について信託行為に別段の定めがあるときはその定めによるとしています。その定めにより任務が終了しない場合は、56条4項により破産者が受託者の職務を行います。原則と例外を読むため、開始決定書T04と、信託契約の該当条項T05をそろえます。

段階・契約確認すること
申立て前や申立て中開始決定の有無と、他の任務終了事由や契約条項
開始決定あり56条の任務終了事由とT05の別段の定め
任務が終了する新受託者の指定、選任、就任承諾
任務が終了しない定めがあるその条項の内容と職務の実際の継続方法

後任を指定する契約条項があれば、候補者の就任承諾等をT06で確認します。指定がない場合や、指定された人が引き受けない場合等には、信託法62条に基づく委託者と受益者の合意による選任、必要に応じた裁判所の選任などを検討します。委託者が現にいない場合の読替えもあり、家族の多数決だけで決めるものではありません。

母が認知症等で合意に関わる判断を難しくしている場合は、誰がどの立場で手続きを進められるかを相談します。また、民事再生の開始は破産と同じ任務終了の原則ではありません。手続きの名前を確認し、破産の説明をそのまま流用しないでください。

口座と登記と定期支払いを引継ぎ一覧へまとめる

送金と受領を確かめる口座の資料

後任の候補が決まったことと、その人が口座から支払えることは別です。就任と権限を示す資料、財産の引渡し、不動産の登記、金融機関の変更手続きを対応させます。必要な資料や手順は、交代の理由や口座の種類により確認が必要です。

対象次の支払・手続き引継ぐ記録
母の住居費次回期限と請求先を確認請求書、過去の支払、口座手続きの状況
信託不動産の修繕支払義務と期日を確認契約、請求額、未払額、工事の状態
管理口座T02就任資料等を金融機関へ照会残高、利用権限、受付記録
不動産T01受託者変更等の登記を相談信託目録、T04〜T06、契約の原本等

期限が近い支払いは、誰がどの権限と資金で対応するかを先に弁護士等へ伝えます。権限が未確認の兄弟が、母のためだからという理由だけで勝手に出金する進め方にはしません。受託者不在で管理が滞る場合は、裁判所の信託財産管理に関する手続き等も含めて個別に相談します。

T01〜T06の所在、原本を持つ人、未取得の資料、次に回答する窓口を一覧にすると、破産の担当者と信託の担当者が違う場合にも説明をつなげられます。財産の区分と日常の支払いを、同じ引継ぎ資料で追える状態にしてください。

信託の仕組みを含めて相談先を選ぶ際は、家族信託は必要ないか 向かないケースと遺言や成年後見との違いも参考にしてください。

資料の確認や手続きの進め方に迷う場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。

よくある質問

疑問点を調べるための本とメモ

受託者が破産すると信託財産も全て処分されますか

信託法25条は、信託財産が受託者の破産財団に属しないと定めています。ただし財産の区分、対抗要件、信託に関わる債務等の確認は必要です。

破産を申し立てた日から受託者は交代しますか

申立てと開始決定は別です。開始決定の有無、信託法56条の原則と契約の別段の定めを確認して、任務終了と後任を判断します。

家族が後任を決めればすぐ口座を使えますか

後任の選任と就任、口座や登記の手続きは別に確認します。権限を示す資料と、支払いを行える時期を金融機関等へ照会してください。

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