成年後見人は本人のお金を贈与できるか 親族への支出の確認

成年後見人は、本人のお金を家族へ自由に贈与できる立場ではありません。本人の意思を尊重し、本人の生活と利益のために財産を管理します。将来相続する家族の税金を減らすことだけを目的に、本人のお金を移すことはできません。
一方、従来からの慣例的な祝い金などは、事情に応じた検討が必要です。少額なら自由、家族全員が賛成なら可能と決めず、支出前に本人の意向・資力・関係を整理します。
- 贈与税の110万円と後見人の権限を別に考える
- 慣例的な贈答でも本人の意向と今後の生活資金を確認する
- 送金前の相談と支出後の記録・報告を分ける
後見人は本人の財産を本人のために管理する

家族が相続する予定でも本人の財産である
後見人が管理している預金は、後見人や将来の相続人のお金ではありません。民法858条は本人の意思を尊重し、心身の状態と生活の状況に配慮することを求めています。859条の財産管理・代理の権限も、家族の財産形成のために使う権限とは違います。
| 支出の例 | 確認の方向 |
|---|---|
| 本人の医療費や施設費 | 本人のための必要性と支払記録を確認する |
| 本人の費用を家族が立て替えた精算 | 元の支出と精算額が対応するか確かめる |
| 家族の住宅資金を新たに渡す | 本人財産の贈与として慎重な検討が必要 |
| 将来の相続税を減らすため毎年送金する | 本人の利益という根拠にならず、自由に行えない |
慣例的な贈答と大きな財産移転を分けて考える

金額だけで一律に線を引かない
暦年課税の基礎控除110万円は、贈与税を計算するための仕組みです。110万円以下なら後見人が贈与してよいという許可ではありません。税額が生じないことと、本人の財産から出してよいことは別です。
以前からの習慣と本人の資力を資料にする
横浜家庭裁判所の案内では、祝い金等は慎重な判断が必要としつつ、本人なら贈るであろう事情や親密な関係、社会通念上の額、今後の療養看護への支障の有無などを踏まえる考え方が示されています。
例として、本人が長年渡してきた孫への通常の祝い金と、これまでなかった数百万円の住宅資金では、目的と規模が違います。従来の記録、本人の意向を確認できる資料、今後の介護費を含む資金見通しを用意します。一律の上限額を自分で作らないでください。
支出する前に家裁や監督人へ事情を示す

家族の同意や相談だけを適法性の保証にしない
送金を決める前に、担当家裁や監督人へ具体的な事情を示します。誰へ、何のために、いくら渡したいかだけでなく、本人の意向、従来の習慣、資産・収入と今後の支出見込みを説明します。
| 項目 | 用意する説明 |
|---|---|
| 本人の意思 | 本人の現在の意向や、判断能力低下前の習慣 |
| 相手と目的 | 関係、出来事、何のための金銭か |
| 金額と余力 | 贈答額、預金残高、介護・生活費の見通し |
| 利害関係 | 後見人自身やその家族が利益を受けるか |
裁判所へ相談したことだけで、どんな贈与も適法になるわけではありません。全ての贈与を許可一つで認める制度があるとも考えず、本人の利益と必要な手続きから確認します。家族全員の同意も、後見人の義務に代わるものではありません。
すでに支出したら贈与と精算を区別して報告する

後見人自身への支出は利益相反にも注意する
すでにお金を渡した場合は、受取人、送金日、金額、目的、本人の意向を確認した経緯を記録し、担当家裁や監督人へ説明します。贈与を立替精算に見せるため、後から事実と違う領収書を作らないでください。
本人費用の精算なら、その請求書と家族の支払記録を示します。後見人自身が相手になる取引では、利益相反と代理の方法も問題になるため、家族内の合意だけで処理せず相談します。
返還や原状回復が必要かも含め、専門家と対応を整理します。説明が終わる前に同じ目的の送金を繰り返さず、次の支出は本人の利益と権限を確認してから判断してください。
関連する手順は、成年後見制度とは 親の財産管理でできることと申立ての注意点で確認できます。
よくある質問

年間110万円以下なら後見人が贈与できますか。
贈与税の基礎控除は後見人の権限を認めるものではありません。本人の意思と利益、生活資金、支出の目的を別に確認します。
孫への祝い金もすべて禁止ですか。
慣例的な贈答は本人の意思、関係、社会通念上の額、今後の生活への影響などから慎重に検討します。金額だけで決めず、支出前に担当家裁や監督人へ具体的な事情を示してください。
家族が同意すれば節税のために渡せますか。
家族の同意だけで後見人の義務や権限は変わりません。将来の家族の相続税軽減だけを目的に、本人のお金を自由に贈与することはできません。
渡したい相手・目的・金額と、本人が以前どうしていたかを整理してください。本人の生活資金の見通しを添え、送金する前に担当家裁や監督人へ確認します。