成年後見人も相続人のとき 利益相反と特別代理人の手続

家族関係を整理する戸籍と図の資料

母の成年後見人である子が、父の遺産を母と一緒に相続するときは、子が母を代理してそのまま遺産分割協議へ参加することはできません。自分の取得分と母の取得分を決める、利益相反の関係になるためです。

本人に有利な案を考えていても、必要な手続を省けるとは限りません。監督人の有無と後見・保佐・補助の権限を確認し、特別代理人等の選任から分割案の提出へ進む順序を説明します。

この記事でわかること
  • 共同相続と利益相反の確認方法
  • 監督人と特別代理人や臨時保佐人等の分岐
  • 分割案と評価資料をそろえ権限内で進める手順
目次

同じ遺産を分ける後見人は本人を代理できない

提出書類を照合するための紙資料と筆記具

後見人は本人の利益を守る立場ですが、自分も同じ相続の当事者なら、取得する財産の配分について二つの立場が対立します。実際に自分の取り分を多くするつもりがあるかどうかだけで、利益相反を判断するものではありません。

例えば父が亡くなり、相続人が母と子二人の場合を考えます。長男が母の後見人なら、長男は自分の相続人としての立場と、母を代理する立場を同じ協議で兼ねられません。「母へ法定相続分を渡すから大丈夫」と署名するのではなく、まず誰が母のために関与するかを確認します。

また、一人の後見人が、同じ遺産を分ける複数の本人を支援している場合も点検が必要です。同じ家族内で一人が書類をまとめる便宜と、それぞれの人の利益を代表する権限を区別してください。

家族が協議を進める前に、相続関係図へ本人、後見人等、監督人の氏名と立場を書き込みます。既に協議書へ署名した場合は、日付や内容を自分で修正せず、権限の問題を弁護士や裁判所へ相談します。

監督人の有無と後見の類型で必要な人を分ける

取引記録を保管するファイルと資料

成年後見では、後見監督人が選任されていれば、その監督人が本人を代理するため、通常はこの行為のための特別代理人の選任は不要です。監督人がいない場合は、家庭裁判所へ特別代理人の選任を申し立てます。

本人の支援最初に確認すること監督人がいない場合
成年後見共同相続等の利益相反と後見監督人の有無当該行為について特別代理人の選任
保佐協議への同意権又は付与された代理権と保佐監督人の有無当該行為について臨時保佐人の選任を確認
補助付与された同意権又は代理権の対象と補助監督人の有無対象なら臨時補助人の選任を確認

保佐と補助は同意する場面も落とさない

保佐・補助では、本人が協議し支援者が同意する方法と、代理権を持つ支援者が本人に代わる方法があります。利益相反の確認は「代理権があるか」だけで終えません。同意権を行使する保佐人自身も相続人なら、その同意の公正さが問題になるためです。

東京家庭裁判所の手引は、利益相反の場面で臨時保佐人が今回のみ同意権又は代理権を行使し、保佐監督人がいれば監督人が対応すると説明しています。補助も、付与された権限と監督人の有無を確かめます。

登記事項証明書や審判に付いた目録で、現在の類型と権限、監督人を確認してください。監督人がいてもその人自身に利害があるなど、別の問題があれば個別の検討が必要です。

分割案と財産評価で本人の取得分を示す

贈与の合意を記録する契約書類

申立先は、後見開始等の審判をした家庭裁判所です。既に後見事件を管理している裁判所へ、対象となる相続と必要な行為を示します。本人の住所が変わった場合などは、記録や連絡先を確認してから提出先を決めてください。

全国案内の標準資料は申立書、遺産分割協議書案など利益相反の内容が分かる資料、候補者の住民票又は戸籍附票です。候補者の住所資料には発行から3か月以内という条件があります。既提出で変更がない資料の扱い、追加資料は個別の案内で確認します。

用意する内容本人の利益を示す資料
対象となる相続亡くなった人 相続人 関係図と必要な戸籍等
遺産と価額預金残高 不動産評価 負債など案の根拠
分割案本人が何をいくら取得し生活資金をどう確保するか
候補者住所 本人等との関係 利害がないか
対象行為どの協議等のための選任かを特定

不動産を子が取り、母へ代償金を払う案なら、価額の根拠だけでなく、母が受け取る金額、支払時期、子に払える資金があるかも示します。母が十分に説明を理解できない事情を利用して、子の資金不足をそのまま母の取得減へ置き換えないようにします。

候補者を推薦しても、その人が必ず選ばれるわけではありません。裁判所が第三者の関与を相当と判断すれば、推薦と異なる人が選任されることがあります。候補者本人にも、特定の家族の希望を通す役ではなく、本人の利益を守る役であることを伝えます。

申立手数料は全国案内では800円で、郵便料等は裁判所ごとに確認します。資料の数や分割案が変わった場合の扱いも、提出前に現行チェック表で照合してください。

選任された行為の範囲で協議と名義変更を進める

支払内容を確かめる領収書と計算道具

選任された人ができるのは、審判で示された対象行為の範囲です。その遺産分割のために選ばれたからといって、本人に代わる全ての契約や財産管理を引き継ぐわけではありません。

協議を進める途中で、不動産の評価、取得者、代償金などを変更する場合は、当初の案や権限との関係を先に確認します。家族だけで変更後の協議書へ差し替え、後から同じ印鑑をもらえばよいとは考えないでください。

本人の居住用不動産を処分する内容が含まれる場合は、特別代理人等の選任とは別に、居住用不動産処分の許可等が必要かを検討します。選任の審判が出たことだけで、他の許可も全て得た扱いにはできません。

成立後は、審判書、協議書、評価資料、本人への入金、銀行や登記へ提出する権限資料を対応させて保管します。特別代理人の対象行為が終わっても、通常の後見人等による本人の管理と裁判所への報告は続くため、引継ぎを確認してください。

相続関係図と後見等の権限資料、分割案をそろえれば、誰がどの立場で協議に関与するかを確認できます。協議書への署名前に、本人を適切に支える人と手続を整えましょう。

手続きの状況や相談したい内容を整理する際は、相続の相談窓口もご利用ください。

よくある質問

疑問点を調べるための本とメモ

本人へ法定相続分を渡すなら特別代理人は不要ですか

分割案が有利かどうかだけでは省けません。後見人自身も共同相続人なら利益相反を確認し、監督人の有無に応じて必要な人を選びます。

保佐人に代理権がなければ利益相反の手続は不要ですか

代理権だけで判断しません。本人の協議へ同意する権限も対象に含め、保佐監督人の有無と臨時保佐人等の手続を確認します。

特別代理人は家族が指名した人に決まりますか

必ずしも決まりません。家庭裁判所は本人との利害や対象行為を考慮し、推薦とは異なる人を選任する場合があります。

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