山林の相続税納税猶予 森林経営計画と承継条件

山林を相続して林業を継ぐ場合、一定の相続税の納税を猶予できる制度があります。ただし、山林を持っていることや、相続後に所有者の届出をすることだけで適用されるものではありません。
入口になるのは、親の生前の森林経営計画と確認の状況です。兄弟で土地を分ける協議を始める前に、計画区域内で誰が何を取得する必要があるか、税額のどの部分が猶予されるかを分けて読みます。
- 親の計画と生前の確認から制度の対象を絞る
- 区域内の全部取得と特例山林の範囲を区別する
- 担保と継続届や打切り後の納税を見込む
親の生前の計画と農林水産大臣の確認から対象を絞る

この特例は、特定森林経営計画が定められている区域内の山林を、一定の林業経営相続人が相続・遺贈で取得し、引き続き経営する場合の制度です。単なる所有地の一覧や、相続後の管理計画があるというだけでは足りません。
国税庁の現行手引は、属人計画に当たる森林経営計画、規模拡大や作業路網整備に関する目標、相続前から続く農林水産大臣の確認などを要件として示しています。作業路網の整備を行う部分の面積100ha以上という条件もあり、一般の小規模な山林所有に広く自動適用される制度ではありません。
まず計画書、認定や確認の書類を探し、どの区域と山林が対象なのかを森林の管理担当者と照合します。死亡後に初めて申請すれば、生前の確認に関する不足もすべて補えるとは考えないでください。
森林所有者の届出や立木の評価とは別の制度
相続による所有者の届出、相続登記、木の相続税評価は、それぞれ別の作業です。これらを済ませても納税猶予の適用が決まるわけではありません。木の評価で使う割合を、猶予の割合と同じ意味にしないことも大切です。
計画区域内の親の山林は後継者一人が全部取得する

林業経営相続人には、相続開始直前に被相続人の推定相続人であることなどの条件があります。そのうえで、特定森林経営計画の区域内にある親所有の山林を、全部取得することが必要です。猶予に使いたい区画だけ取ればよい、という条件ではありません。
| 分割案の仮定 | 先に検討すること |
|---|---|
| 計画区域内の親所有山林120haを子一人が全部取得 | 全部取得の条件を確認し、各区画の対象要件へ進む |
| 同じ120haを兄弟で各60haずつ取得 | 各人が親の区域内山林全部を取得する前提と合わない |
| 対象にしたい区画だけ分け、別の区域内山林は未分割 | 区域内の全部又は一部が期限まで未分割なら適用できない条件を確認 |
この120haは説明用の面積です。計画の規模要件や生前確認などは別に満たしていると仮定しており、120haなら自動的に適用できるという意味ではありません。また、全部を取得しても、全区画が特例山林として猶予の計算対象になるとは限りません。
未分割の山林を残したまま適用を決めない
相続税の申告期限までに区域内山林の全部又は一部について分割が済んでいない場合、この特例は使えません。申告期限までの継続保有・経営も含め、協議書の土地と立木が計画書の対象と一致するかを確認しましょう。
猶予対象の区画と税額80%を分けて計算する

猶予されるのは、特例山林に係る課税価格の80%に対応する相続税額です。全遺産の相続税を80%減らす制度でも、山林の評価額を申告書上で一律80%引く制度でもありません。対象外の預金や住宅は分けて計算します。
特例山林には、計画上の作業路網整備の対象であること、市街化区域内の山林でないことなどの条件があります。土地と立木では条件が異なるため、同じ地番にあるからと一括して結論を出さないでください。
立木については、相続開始から標準伐期齢等に達する日までの期間が、林業経営相続人の平均余命と30年のうち短い期間を超えることが条件です。すぐ伐採時期を迎える木を同じ扱いにせず、樹種・林齢と計画上の期間を担当者へ示します。
山林の評価減と納税猶予を同じものにしない
最初に財産の価額を求め、次に対象となる課税価格と猶予税額を計算します。立木評価の割合と猶予の80%を、根拠なく順に掛けて節税額を作らないでください。「特定計画山林の特例」との併用もできないため、どちらを使うかを申告担当へ相談します。
期限内申告に担保と確認書類を添える

適用を受けるためには、相続税の申告書を期限内に提出し、所定の添付を行うとともに、山林納税猶予税額と利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。猶予という言葉は、申告も担保も要らないという意味ではありません。
| 期限までに対応させる内容 | 主な資料や相談事項 |
|---|---|
| 生前からの適格な計画と確認 | 計画書、認定・確認、区域と対象山林の資料 |
| 相続人と全部取得 | 相続関係、遺言又は協議書、土地・立木の取得範囲 |
| 猶予税額と担保 | 相続税の計算明細、担保財産と設定手続 |
| その後の管理予定 | 作業路網、経営体制、継続届の基準日 |
相続税の申告期限だけでなく、計画の認定や確認の状態を誰が調べるかも早めに決めましょう。実際の案件では税理士と林業の計画担当が同じ区域図と取得一覧を使うと、対象の食い違いを減らせます。
継続届の周期と売却した場合の打切りを管理する

継続届は、初めからすべて3年ごとではありません。施業整備期間中は原則として当初認定起算日から1年ごと、その後は所定の起算日から3年ごとです。死亡した日を基準に自己流の周期を作らず、申告時に基準日を台帳へ残します。
計画の認定取消しや継続認定ができない場合、一定の経営が行われない場合、対象山林の譲渡・転用等がある場合などは、全部又は一部の猶予が打ち切られることがあります。売却できた金額だけで足りると考えず、猶予税額と利子税を合わせて試算してから決めてください。
相続した子の死亡でも自動免除と決めない
林業経営相続人の死亡などは免除事由になりますが、必要な手続きまでなくなるわけではありません。免除のための書類を死亡の日から6か月以内に提出する扱いも確認し、次の家族が申告書と継続届の保管先を分かるようにします。
制度の基本は、父が亡くなったときの相続税 申告が必要なケースと期限や手続きも参照してください。
財産や申告について相談する場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

山林を相続すれば誰でも相続税の80%が猶予されますか
いいえ。生前からの特定森林経営計画や確認、一定の後継者による全部取得等の条件があります。対象となる特例山林の課税価格の80%に対応する相続税額の猶予で、全遺産の税額の80%ではありません。
兄弟で計画区域内の山林を分けても適用できますか
親が区域内に所有していた山林の全部を取得するなどの条件を確認する必要があります。一部ずつ分ける案や期限まで未分割の山林を残す案では、その条件を満たすとは限りません。
申告後はずっと納税しなくてよいのですか
条件の継続と届出が必要です。譲渡や計画認定の取消し等により猶予が打ち切られると、本税と利子税の納付が必要になる場合があります。免除事由が生じても所定の手続きを確認します。