準確定申告の所得税と債務控除 源泉徴収と未納額を照合

亡くなった人の準確定申告で所得税を納めることになった場合、その税は相続税の債務控除の対象になり得ます。ただし、申告書で計算した所得税の全額を、そのまま相続財産から引くとは限りません。
源泉徴収や予定納税、既に納めた分を確認し、未納額を相続税の担当へ渡します。ここでいう控除は相続税の課税価格を計算する際の債務控除で、所得税と同額を相続税額から直接差し引く制度ではありません。
- 相続税の課税価格から控除する故人の未納所得税を確認する
- 源泉徴収と予定納税や既払額を反映して二重控除を防ぐ
- 附帯税の原因と最終負担者を申告担当へ伝える
申告書の税額と実際の納付額を分ける

まず、故人のどの年分の所得に対する税なのかを特定します。準確定申告の計算税額、源泉徴収された額、予定納税した額、申告により追加で納める額は、それぞれ違う数字です。
国税庁は、死亡時の債務で確実なものを基本とし、故人に課される所得税等のうち一定のものは、死亡時に税額が確定していなくても控除できると案内しています。申告書が死亡後に完成したことだけで、全て対象外になるわけではありません。
| 書類にある金額 | 調べる意味 |
|---|---|
| 年間の所得から計算した税額 | 源泉徴収等を反映する前後の欄を区別 |
| 源泉徴収税額 | 給与や年金等から既に徴収されている額 |
| 予定納税額 | 故人の年分について先に納めた額 |
| 申告納税額又は還付額 | 実際の申告書で追加納付か還付かを確認 |
相続税の債務控除には、取得した人の課税範囲等による条件もあります。家族が全員同じ条件で控除できるとせず、申告担当へ居住関係や取得内容も示してください。
源泉徴収と予定納税を引いた残額を資料でつなぐ

説明を単純にするため、他の税額調整や端数処理はなく、所得税等の計算税額120万円、源泉徴収30万円、予定納税20万円と仮定します。実際の申告では所得税及び復興特別所得税の欄と納付額へ対応させます。
| 説明用の項目 | 金額 | 照合する資料 |
|---|---|---|
| 計算した税額 | 120万円 | 準確定申告書の計算欄 |
| 既に源泉徴収された税 | 30万円 | 源泉徴収票、支払明細 |
| 予定納税した税 | 20万円 | 通知、納付や引落しの記録 |
| 追加で納める残額 | 120−30−20=70万円 | 申告書の納付欄と納付記録 |
この例で相続税の債務として確認するのは、未納の70万円です。120万円を全額控除したり、70万円に既納の20万円を再び足したりしません。還付となる場合は、納付債務と別に還付請求権の確認が必要です。
死亡前の納付と死亡後の支払いを区分する
死亡前に完納した税は、既に減っている死亡日の預金等との関係を確認し、未払いの債務としてもう一度引かないようにします。一方、死亡後に相続人が納めたからといって、故人の所得に対する控除対象の税が消えるわけではありません。
施行令3条は、死亡後に相続人等が納付し又は徴収される故人の所得等に対する所得税等を対象に含めています。死亡日、納付日、どの年分の税かを分ければ、申告までに支払った額も追えるようになります。
本税と相続人の責任で生じた附帯税を別欄にする

本税と、期限を守らなかったこと等による附帯税は、同じ一行へまとめません。施行令3条ただし書は、相続人等の責めに帰すべき事由によって納付することとなった延滞税等を除いています。
仮に本税70万円に加え、相続人の対応の遅れによる附帯税8万円が請求されたとしても、合計78万円をそのまま債務控除へ渡すことは避けます。本税、附帯税の種類、発生原因と期間を示して、それぞれ判定します。
反対に、名称に加算税や延滞税があるものを、全て同じ理由で除外すると決めるのも早計です。故人に係るものか、相続人側の責任で新たに生じたものかを、通知や経緯と照合してください。
負担者と申告後の訂正を相続税担当へ伝える

長女が代表して70万円を振り込んでも、その送金記録だけで、長女が最終的に全額を負担すると決まるわけではありません。誰の原資で支払い、家族間で立替分をどう精算し、誰が実際に負担するかを整理します。
| 相続税担当へ渡す情報 | 確認する根拠 |
|---|---|
| 故人の年分と確定した税額 | 準確定申告書と計算明細 |
| 源泉徴収・予定納税・既納額 | 源泉徴収票、通知、納付記録 |
| 残る未納額と納付日 | 納付書、口座の引落し、領収記録 |
| 原資と最終負担 | 使用した口座、家族の精算と負担の資料 |
| 後日の訂正 | 所得税申告の修正等の控え、増減した税額 |
相続税の債務明細では、税の内容と負担する人が資料から追えるようにします。代表者が提出する申告書、税を払う口座、控除を受ける人を、名前が同じだからという理由で一つにしないでください。
相続税申告の後で所得税の計算が変わったときも、訂正は所得税だけで終わると考えません。債務控除や還付請求権への影響を両方の担当へ伝え、相続税側の修正や更正の請求等の要否と期限を個別に確認します。
相続の資料をそろえる際は、父が亡くなったときの相続税 申告が必要なケースと期限や手続きも参考に、今回の判断と全体の申告準備をつなげてください。
ご家族の資料や未確認の点を整理して相談する際は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

準確定申告の算出税額をそのまま債務控除できますか
源泉徴収や予定納税等を反映した未納額、既払額を照合します。算出税額を丸ごと使うと控除額を過大にするおそれがあります。
死亡後に相続人が払った所得税は控除できませんか
故人の所得に対する所得税で相続人が納付することとなったものも対象になり得ます。納付日だけでなく税の対象と最終的な負担を確認します。
所得税の延滞税や加算税も全部控除できますか
相続人の責めに帰すべき事由で生じた附帯税等は除かれます。本税と附帯税の内訳、発生原因を別に確認してください。