遺言で未成年後見人を指定するには 親権と届出を確認する

子が成人する前に自分が亡くなった場合へ備え、遺言で未成年後見人を指定する方法があります。ただし、親なら誰でも、もう一方の親の親権にかかわらず指定できるわけではありません。
最初に読むのは、誰が現在親権を行い、財産の管理権を持っているかです。そのうえで、子の生活を支える人、遺産の渡し先、死亡後の届出を分けて準備します。
- 遺言で指定できる親権者と共同親権の場合の確認
- 候補者の資格と事前相談で決めること
- 指定後の届出と家庭裁判所の監督の違い
最後に親権を行う者と財産の管理権を確かめる

民法839条は、未成年者に対して最後に親権を行う者が、遺言で未成年後見人を指定できると定めています。ただし、管理権を持たない者は除かれます。また、親権を行う父母の一方に管理権がない場合の指定も、同条2項で定めています。
2026年4月からの親権制度では、離婚したという事情だけで、一方のみが親権者だと決めつけられません。現在の戸籍、親権についての合意や審判等を確認し、誰が親権を行うかを特定します。
| 家族の状態という仮定 | 遺言作成前に確認すること |
|---|---|
| 父母双方が親権者で母が亡くなり、父が親権を行える | 母の遺言だけで父の代わりの後見人が当然に就くとはしない |
| 一方だけが親権を行い、管理権も持つ | その人が最後に親権を行う者に当たるかを資料で確認 |
| 親権者でも管理権を持たない | 839条の指定資格を満たすと即断しない |
| 養子縁組や親権の変更等がある | 過去の関係ではなく現在の戸籍・審判等を読む |
父母の一方が死亡しても、もう一方が親権を行える場合と、親権を行う人がいなくなる場合は違います。単独親権の親が亡くなった場合も、元配偶者の地位がどうなるかを含め、個別の家族関係を法律専門家へ示してください。
候補者には資格と生活上の負担を分けて相談する

候補者に特定の国家資格が必須という制度ではありませんが、誰でもなれるわけではありません。民法847条の欠格事由を確認します。近い親族だからという理由だけで点検を省かないでください。
| 法律上の確認 | 候補者との実際の相談 |
|---|---|
| 未成年者ではないか | 就任が必要な時期の年齢と健康状態 |
| 家裁で免ぜられた法定代理人等に当たらないか | これまでの後見等の事情 |
| 破産者、本人との訴訟関係等に該当しないか | 金銭管理と利害関係 |
| 行方不明等の支障がないか | 居住地、連絡方法、子と会う頻度 |
法律は、家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人・補助人、破産者、子に対して訴訟をし又はした人とその配偶者・直系血族、行方の知れない人などを除いています。資格制限の該当性に疑問があれば、事情を省略せず相談します。
そのうえで、候補者には子の年齢、学校、住まい、必要な生活費や医療、財産管理の負担を伝えます。遺言の方式に加えて必ず事前の同意書を添付するという一律の要件ではありませんが、本人に知らされていない指定では、死亡後の支援を実現しにくくなります。
就任後に辞める場合は、正当な事由と家庭裁判所の許可を要する規定もあります。名前だけを借りる依頼ではなく、現実に引き受けられるかを話し合ってください。
子の身上監護と財産の取得先を遺言で分けて示す

未成年後見人は、子の監護・教育等と財産管理を担います。後見人として管理することと、親の遺産をその人自身の財産として受け取ることは別です。「子のためのお金だから候補者に全て遺贈する」と、両方を混ぜないようにします。
遺言案では、対象となる子と指定する人を特定し、遺産を誰に取得させるかの条項とは分けます。たとえば子の預金を管理して教育費に充てることと、候補者へ財産を贈ることでは、権利と税務の扱いが変わります。
未成年後見監督人を遺言で指定する制度もあります。候補者の監督が必要か、管理する財産と生活支援の負担に照らして検討します。後見人を指定すれば、候補者と子との利益相反も全て解消するわけではありません。
遺言の方式には要件があります。子と候補者の識別だけでなく、遺言自体の有効性と発見される方法も整えます。公証人や法律専門家へ相談し、学校や医療等の情報は更新しやすい生活の引継ぎ資料として別に残すと、実務につなぎやすくなります。
指定で就任する場合の届出と家裁の監督を忘れない

遺言で指定された人が未成年後見人となる場合は、家庭裁判所に選任してもらう手続きと、戸籍の後見開始の届出を区別します。大阪市や札幌市の案内は、指定後見人の就職の日から10日以内の届出と、遺言の謄本等を示しています。
ここでの起点は「就職の日」です。遺言を書いた日から10日という意味ではありません。届出場所や遺言の種類に応じた必要資料は市区町村へ確認します。他方、家裁が選任した後見人については裁判所からの嘱託で戸籍に記載される取扱いがあり、全員が同じ届を出すわけではありません。
遺言による指定でも、未成年後見人は裁判所の監督を受けます。家裁の選任審理を経ないことを、収支や財産管理の報告が一切不要という意味に読み替えないでください。大阪家裁のFAQも、指定された後見人は裁判所が選任した人と同様に監督を受けると説明しています。
遺言の保管場所、就任時に連絡する人、子の生活情報、財産資料の所在を、候補者が把握できる形にします。作成後に親権や家族関係が変わったら、昔の前提のまま残さず、指定の内容と必要性を見直してください。
関連する基本事項は、親の相続準備 元気なうちに確認する書類と進め方も参考にしてください。
契約や手元の資料をもとに相談する場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

親なら誰でも遺言で未成年後見人を指定できますか
839条では、最後に親権を行う者と管理権等の条件を確認します。もう一方の親が親権を行える場合に、その地位を遺言だけで置き換えるものではありません。
指定された後見人は裁判所への報告が不要ですか
不要とはいえません。遺言による指定でも、家裁が選任した後見人と同様に裁判所の監督を受けます。必要な報告や資料の案内を確認します。
遺言で指定した場合にも戸籍の届出が必要ですか
指定で未成年後見人となる場合は、就職の日から10日以内の後見開始の届出を確認します。家裁による選任の嘱託とは分け、遺言謄本等の必要資料を市区町村へ尋ねてください。