危急時遺言を使える場面 証人・作成後の確認と通常の遺言の違い

病状の急変等で死亡の危急が迫ったときには、一般危急時遺言という特別な方式を検討できます。証人3人以上の前で本人が遺言の趣旨を口授し、証人が筆記・確認するなど、法律に沿った作成が必要です。
作成しただけで終わりではなく、遺言の日から20日以内に家庭裁判所へ確認を申し立てる条件等があります。本人が意思を示せない状態を家族の推測で補ったり、確認と検認を同じ手続きと考えたりしないことが大切です。
本人が口頭で意思を伝えられるかを最初に確認する

緊急時でも、本人が財産をどう残すかを理解し、自分の意思を示せることが必要です。危篤という事情だけで、家族が内容を決めて書面を作れるわけではありません。
入院や高齢だけで危急時遺言を選ばない
病気や負傷等で死亡の危急に迫っているかを、本人の状態とともに確認します。高齢である、入院している、手が動かず書けないというだけで、直ちにこの方式を使うとは考えないでください。
口がきけない人が通訳人の通訳を通じて申述する等の特則もあります。発声できないことと意思を示せないことを分け、具体的に使える方法を専門家へ確認します。
公証人の出張で通常方式にできるかも検討する
自筆が難しくても、公証人の出張により公正証書遺言を作成できる可能性があります。時間と本人の状態を踏まえ、通常の方式が使えるかも早急に相談します。
一般危急時遺言は、簡単に作れる口約束の遺言ではありません。証人や後の家庭裁判所手続きも必要になるため、医療者の説明とともに、公証人や弁護士等へ状況を伝えます。
適格な証人3人以上で本人の趣旨を記録する

一般危急時遺言では、証人3人以上が立ち会い、そのうちの一人に本人が遺言の趣旨を口授します。証人は誰でもよいわけではありません。
証人の一人が口授を筆記する
本人の子が推定相続人である、遺贈を受ける予定があるなどの場合は、証人の欠格事由に当たります。本人の希望を聞いた家族だけで人数をそろえればよいとは考えないでください。
口授を受けた証人は、その内容を筆記します。本人が何を述べたかと、証人や家族が追加して考えた内容を混ぜず、本人の趣旨を記録します。
読み聞かせと承認と署名等の方式を守る
筆記した内容を本人とほかの証人へ読み聞かせ、または閲覧させ、各証人が正確さを承認した後に署名・押印する等の方式を守ります。通訳等の特則が必要な場合も事前に確認します。
家族が作った原稿に本人がうなずいたという事実だけで、常に有効な口授になると保証はできません。聞き取りから確認までの経過を、その場の記録として残すことが重要です。
作成日から20日以内に家庭裁判所へ確認を申し立てる

一般危急時遺言は、作成日から20日以内に、証人の一人または利害関係人が家庭裁判所へ確認を請求する必要があります。作成後の短い期間も含めて準備します。
証人または利害関係人が申立てを行う
20日以内という条件は、その期間内に確認の申立てを行うことです。家庭裁判所の審判が必ず20日以内に出るという意味ではありません。作成日と申立日を記録します。
船舶遭難者の遺言など、ほかの特別方式には異なる規定があります。一般危急時遺言の20日と、別方式の『遅滞なく』という条件を取り違えないでください。
医療状況と作成経過を資料に残す
死亡の危急にあった事情、本人の意思表示、証人の資格、筆記と確認の経過を資料にまとめます。医療状況の資料や作成時の記録は、本人の真意に出た遺言かを確認する材料になります。
申立人、管轄、戸籍等の添付資料は家庭裁判所へ確認します。本人の真意と方式に争いがある場合も、書面だけを整えて事実を補わないようにしてください。
確認と検認と最終的な有効性を混同しない

家庭裁判所の確認と、死亡後に行う遺言書の検認は別の手続きです。どちらか一つを済ませれば、全ての確認が終わるわけではありません。
相続開始後の検認は別に確認する
確認は、一般危急時遺言の効力に関わる手続きです。一方、検認は相続人等に遺言書の存在や状態を知らせ、偽造や変造を防ぐために行う手続きとして、別に確認します。
確認を受けたことだけで検認も済んだとは扱わず、相続開始後に必要な手続きを家庭裁判所へ尋ねます。金融機関等へ提出する遺言書の資料も確認してください。
家裁の確認があっても争いがなくなるとは限らない
家庭裁判所の確認や検認があっても、本人の能力や作成方式について民事上の争いが生じる可能性はあります。とくに検認は、遺言が有効であることを最終的に保証する手続きではありません。
遺言で実現したい内容と、実際に記録された文言が食い違わないよう、作成経過と原本を保存します。後から経緯を整え直すのではなく、当時の資料をそのまま残します。
| 確認する段階 | 分けて管理すること |
|---|---|
| 作成時 | 危急の事情、本人の意思、適格な証人3人以上、筆記等の方式 |
| 作成後 | 作成日から20日以内の家庭裁判所への確認申立て |
| 相続開始後 | 確認とは別の検認、財産取得の手続き |
| 本人が回復したとき | 普通方式で作成可能となった時から6か月生存する場合の効力 |
回復した場合は通常方式で作り直すことを考える

本人が危急を脱した場合は、通常の方式で作り直せるかを検討します。特別方式の効力には、回復後の期間に関する規定があります。
普通方式で遺言できるようになってから6か月を確認する
民法は、普通の方式によって遺言できるようになった時から6か月間生存するとき、特別方式の遺言が効力を生じないと定めています。作成日や退院日から一律6か月ではありません。
体調が持ち直したら、本人の希望が変わっていないかを確認し、公正証書等で改めて作成する相談を進めます。複数の遺言があるときの抵触する内容も整理します。
本人の希望と手続記録を専門家へ渡す
本人が希望する配分、財産の資料、危急時の記録、回復の時期を専門家へ伝えます。2026年に成立した遺言制度改正についても、実際の作成時点の施行状況を確認します。
今まさに緊急の場面なら、本人がどのように意思を伝えられるかを医療者と確認し、公証人や弁護士へ方式の選択を相談してください。証人を集めることだけを先に進めないことが大切です。
回復後に資料を整理する場合は、親の相続準備で確認する書類も参考になります。緊急時に作った記録も処分せず、改めて作成する遺言の相談へ引き継ぎます。
よくある質問

入院して字が書けなければ危急時遺言を使えますか
自筆が難しいことだけで決めるものではありません。死亡の危急と本人の意思能力・意思表示を確認し、公証人の出張等で通常方式を使えるかも検討します。
20日以内に家庭裁判所の確認が終わらないと無効ですか
20日以内に必要なのは確認の申立てです。審判が20日以内に出るという条件ではありません。作成日を基準に申立期限を確認してください。
危急時遺言の確認を受ければ検認は不要ですか
確認と検認は別です。相続開始後の検認等を家庭裁判所へ確認してください。また、確認や検認があっても有効性をめぐる民事上の争いがなくなる保証はありません。