遺言書の財産目録を作る手順 通帳と登記を本文の番号へ対応させる

自筆証書遺言の財産目録は、通帳や登記の情報から財産を特定するための資料です。パソコンで作れる部分があっても、「誰に何を渡すか」という遺言の本文まで印刷してよいわけではありません。
口座二つと土地・建物を持つ架空の家族を例に、資料へ番号を付け、本文の指定と照合する手順を示します。目録を作った後には、各ページの署名押印と保管方法も確認しましょう。
- 財産の特定情報と渡し方の意思を分ける
- 口座と土地や私道持分を本文の番号へ対応させる
- 非自書目録のページごとの署名押印を点検する
目録は財産を特定し渡す意思は本文へ書く

自筆証書遺言では、原則として本文、日付、氏名を本人が自書して押印します。本文と一体のものとして添付する財産目録には、自書を要しない特例があります。通帳や登記事項証明書のコピーを使う方法もあります。
特例は財産を示す目録の部分です。目録へ「この家は長男へ」と印刷するだけで財産を渡す意思まで記載できると考えず、その指定は本文に自書します。
以下の表は準備用の架空例で、完成した遺言書のひな形ではありません。実際の本文では人と財産、権利の範囲が対応するかを、家族構成と資料に合わせて確かめます。
架空の口座と不動産を番号付きで一覧にする

金融機関の名称だけでなく、支店、預金種別、口座番号等を通帳の記載と照合します。不動産は家の住所だけでまとめず、土地の筆、建物、私道の持分を分けます。
| 準備用の番号 | 架空の財産 | 照合元と拾う情報 |
|---|---|---|
| 第1の1 | 甲銀行の普通預金 | 通帳の銀行・支店・種別・口座番号 |
| 第1の2 | 乙銀行の定期預金 | 証書等の取引店と口座・契約の表示 |
| 第2の1 | 宅地の一筆目 | 登記の所在・地番・地目・地積 |
| 第2の2 | 宅地の二筆目 | 同じ住所でも別筆として登記と照合 |
| 第2の3 | 住宅一棟 | 家屋番号・種類・構造・床面積 |
| 第2の4 | 私道の持分8分の1 | 対象土地の表示と本人の共有持分 |
この例では「実家一式」を一行にせず、宅地二筆、建物、私道持分の四行にしました。納税通知に載る財産だけを転記すると、非課税の私道等を漏らすことがあるため、登記や取得時資料も照合します。
親が持つのが8分の1なら、道全体を所有するような記載にはしません。共有物全体の表示と、本人が渡せる持分を別に記録してください。
本文と目録を相互に照合して重複と漏れを直す

次に、本文で指定する人と目録の番号を対応させます。準備表へ「第1の1は長女」「第2の1から4は長男」など、本人が希望する対象を記し、それを基に本文を確認します。
「別紙目録第2の1から4の財産」と示すなら、その番号が実在し、各行の権利が特定されているかを見ます。目録に第2の2が二つあったり、本文にない第2の5を後から追加したりすれば、読み方が曖昧になります。
| 照合の方向 | 点検すること |
|---|---|
| 本文から目録へ | 指定番号があり、財産と持分が特定できるか |
| 目録から本文へ | 同じ財産を矛盾する複数人へ指定していないか |
| 一覧の外側 | 漏れた財産や新たに取得する財産への備えが必要か |
残りの財産の扱いも検討しますが、本人が渡すつもりのない財産までまとめて指定しないようにします。番号の誤りと財産の分け方の疑問は分けて専門家へ確認してください。
自書でないページの署名押印と保管用紙を整える

自書によらない目録は、毎葉に本人が署名し、印を押します。自書によらない記載が両面にあるときは、その両面に必要です。表紙だけ署名したり、最後の一枚だけに押印したりして済ませないようにします。
目録が三枚なら、三枚を一枚ずつ開いて、署名と押印、本文との番号を確認します。通帳コピーを使う場合も、写しの氏名が印刷されていることを本人の署名の代わりにはできません。
法務局の保管制度を使う場合は、A4片面や余白等の用紙のルールも別にあります。民法上の方式と保管用の形式を混ぜず、最後は保管制度の案内にも照合します。
口座変更や売却後は遺言全体と保管先を見直す

口座を解約した、土地を売った、銀行名や支店が変わったときは、本文と目録の対応を見直します。財産名を直すだけなのか、渡す相手まで変わるのかを分けてください。
手元のコピーの目録だけを交換しても、既に作った原本を適式に変更したことにはなりません。保管中の遺言についても、自分で送った新しい一枚へ自動的に置き換わるものではないため、変更又は新たな作成と保管の手続きを確認します。
旧版と新版の作成日、目録の枚数、保管先を記録し、どの書類が完成版か分かるようにします。2026年に公布された押印任意化等の改正と現在使う方式を区別し、作成時の現行案内に従ってください。
よくある質問

財産目録は家族がパソコンで作れますか
本文と一体の財産目録には自書不要の特例があります。ただし財産の特定と本文の指定を区別し、本人による各ページの署名押印等が必要です。
私道の持分も書いたほうがよいですか
実家と一緒に渡したい持分があれば登記で対象と割合を確認します。家の住所だけで道の持分まで漏れなく特定できると考えないようにします。
通帳コピーなら署名押印は不要ですか
不要ではありません。自書によらない目録は毎葉、両面に非自書記載があれば両面に本人の署名押印が必要です。