遺言書の書き方 自筆証書の記載例と無効を防ぐ確認点

遺言書の書き方 自筆証書の記載例と無効を防ぐ確認点のイメージ

自筆証書遺言を書くときは、財産目録を除く本文と、作成した日付、氏名を自分で書き、押印します。そのうえで、誰にどの財産を残すのかを、受け取る人や財産が特定できる形で記載する必要があります。

形式を満たしていても、「家は長男に任せる」のような文言では、どの権利をどう渡すのかがはっきりしません。書き始める前に登記の資料や通帳を用意し、残す相手と財産を対応させます。

ここでは、これから子や配偶者へ財産を残したい人に向けて、自筆証書の記載例と財産目録、保管までを説明します。自書が難しい場合や分け方が複雑な場合は、公正証書を選ぶ方法もあります。

この記事でわかること
  • 自筆証書遺言の自書と日付や署名押印のルールがわかる
  • 預金や不動産と受け取る人を特定する書き方がわかる
  • 財産目録と遺留分を確認して保管方法まで決められる
目次

自筆証書と公正証書は書く負担と保管方法が違う

自筆証書と公正証書は書く負担と保管方法が違うに関する資料のイメージ

遺言の普通の方式には、自筆証書、公正証書、秘密証書があります。自分で書くことを考えているなら、まず自筆証書と公正証書の違いを押さえると、無理のない方法を選べます。

自分で全文を手書きするか公証人へ作成を依頼するかを選ぶ

主な遺言方式の違い
項目自筆証書遺言公正証書遺言
作成本文などを本人が自書する本人の意思を確認して公証人が作成する
証人作成に証人は不要原則2人の適格な証人が必要
保管自宅保管か法務局の保管制度など公証役場または公証人の保管システム
検認法務局保管制度を利用しない場合は原則必要不要
費用書くこと自体と法務局保管の費用は別財産の額や受け取る人などに応じた手数料

手軽に自分で書けることと、望む内容を確実に表現できることは別です。不動産を複数の家族へ分ける、相続人以外へ渡す、条件を付けたいという場合は、内容の確認に専門家を利用できます。

遺言は本人が内容を理解し自分の意思で作成する

遺言ができるのは原則として15歳以上で、作成時に遺言をする能力が必要です。家族が内容を決めて本人に署名だけをしてもらう方法では、自筆証書のルールや本人の意思確認を満たせません。

認知症という診断名だけで一律に有効や無効を決めることもできません。判断能力に不安がある場合は、作成方法と意思の確認について早めに相談してください。

自筆証書遺言は本文と日付と氏名を自書して押印する

自筆証書遺言は本文と日付と氏名を自書して押印するに関する資料のイメージ

自筆証書の形式は、本人が残した意思であることを確かめるために定められています。見やすい書式を使っても、本文を印刷して署名しただけでは、自筆証書の自書の要件を満たしません。

パソコンを使える財産目録と手書きの本文を分ける

「妻へ相続させる」「長女へ遺贈する」といった財産を渡す意思は本文へ自書します。財産目録の例外を使って、本文までパソコンで作ってよいと考えないようにしてください。

2026年には遺言制度の見直しが公布されていますが、新しい制度の創設と、現在使える方式は区別が必要です。この記事は自筆証書遺言の現行の自書のルールを対象としています。

日付は年月日を特定できる形で書き氏名と押印をそろえる

作成日付は、例えば「令和8年10月12日」のように具体的に記載します。「10月吉日」など、いつ作ったかが特定できない日付は避けてください。

氏名も本人が自書し、押印します。実印でなければ無効になるというルールではありませんが、本人の意思をめぐる争いを避けるために、印鑑の選び方も含めて確認できます。

訂正の方式が不安なら新しい用紙へ書き直す

文字を消したり追加したりするには、場所を示すこと、変更した旨の付記と署名、変更箇所への押印などの方式があります。二重線を引いただけで、すべての訂正が有効になるわけではありません。

重要な財産の指定を直す場合や、訂正箇所が増えた場合は、書き直す方が読み違いを防げます。旧版をどう扱い、後の遺言と矛盾していないかも確認してください。

誰にどの財産を残すか資料に沿って具体的に書く

誰にどの財産を残すか資料に沿って具体的に書くに関する資料のイメージ

文例を写す前に、受け取る人の氏名や続柄、財産を特定する情報を用意します。ここで示すのは書き方を考えるための独自の仮定例で、どの家庭にもそのまま使える完成書式ではありません。

預金は金融機関と支店や口座を特定する

父が、自分の普通預金を長女へ相続させたい場合を考えます。口座の特定と受け取る人の指定を分けず、同じ文の中で対応させる書き方の例です。

預金の指定を考えるための記載例

遺言者は、次の預金を、遺言者の長女【氏名】【生年月日】に相続させる。

【金融機関名】【支店名】 普通預金 口座番号【番号】

角括弧の部分は、実際の戸籍や通帳などで確認した内容に置き換えます。この条項だけでは、日付、氏名、押印や他の財産の扱いなどがそろわず、遺言書全体としての確認が必要です。

相続人へ渡す場合と、内縁の相手や団体など相続人でない人へ渡す場合は、法律上の扱いが違います。「相続させる」と「遺贈する」を、言葉の好みだけで入れ替えないようにしてください。

不動産は住居表示だけでなく登記の情報を使う

不動産は、土地の所在と地番、地目、地積、建物の所在と家屋番号、種類、構造、床面積など、登記の資料に沿って特定します。自宅の郵便の住所と、土地の地番が同じとは限りません。

共有している家なら、親が持っている持分も確認します。親の持分しかないのに、建物全体を自分の所有物として指定しないことが大切です。

書いていない財産と受け取る人の先の死亡にも備える

記載した口座以外にも財産があると、遺言で指定していない部分の扱いが残ります。後から増える預金や、記載を忘れた財産を誰へ渡すかという残余財産の条項も検討します。

受け取る予定の子が、遺言者より先に亡くなった場合も、指定した財産が当然にその子の子へ移るとは限りません。別の相手を予備的に定める条項は、誰へ何を渡すかと家族関係を確認して作成します。

残余財産や予備的な指定は、他の条項と矛盾するおそれもあります。特定の財産だけの文例をつなぎ合わせるより、遺言全体を専門家に読んでもらう方法が適しています。

財産目録は別紙にして各頁へ署名と押印をする

財産目録は別紙にして各頁へ署名と押印をするに関する資料のイメージ

口座や不動産が多い場合、すべての番号を本文に手書きする負担が大きくなります。財産を特定する目録は、別紙としてパソコンで作成したり、通帳や登記資料の写しを添付したりできます。

自書でない目録は記載された各頁の署名押印を確認する

自書によらない財産目録には、各頁への署名と押印が必要です。両面に自書でない記載がある場合は、それぞれの面に署名と押印が必要になることに注意してください。

法務局へ預ける場合は片面記載などの形式上のルールもあります。民法上の要件を満たすことと、法務局で受け付けてもらう用紙の条件は分けて確認します。

目録には財産を特定する情報を整理し、誰へ渡すかは手書きの本文に記載します。目録へ「この口座は長男へ」と印刷するだけでは、本文に必要な意思の記載を済ませたことにはなりません。

本文で別紙を参照する場合は、どの目録のどの財産かが対応するように整理します。土地と建物、預金と証券を混同しないよう、資料の名前と番号をそろえてください。

遺留分と納税資金を考えて財産の分け方を決める

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書式が整っても、残された家族に現金が足りない、家を取得した子へ他の家族から金銭請求がある、といった問題は残り得ます。どの財産を渡すかと、その後に必要な資金を合わせて考えます。

法定相続分と遺留分は同じ割合ではない

法定相続分は、法律が定める相続の割合です。遺言で必ずその割合に分けなければならないわけではありません。一方、配偶者や子など一定の相続人には、遺留分の侵害額に相当する金銭を請求できる制度があります。

遺留分を侵害する内容だから遺言全体が当然に無効になる、とは限りません。ただ、財産を集中させるなら、受け取る人が金銭の請求にどう対応できるかも考えたいところです。

実家だけを渡す場合は納税と他の家族への支払いを確認する

相続税が必要になる家庭では、不動産を受け取っても、それ自体で現金の納税資金が用意できるわけではありません。預金の配分、すでに渡した生前贈与、取得者によって変わる特例を確認します。

母へ全額を残す案なら、母の生活とその後の子への相続まで考えます。母に全部相続させる前の二次相続と分け方も判断材料になります。

生前に渡すか遺言で残すかを比較したい場合は、生前贈与と相続の税負担の比較を確認してください。遺言があることだけで、贈与税や相続税が非課税になるものではありません。

完成後は保管と遺言を実現する人を決める

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遺言書は、完成した後に発見され、実際の手続きで使えることも必要です。内容を秘密にしていても、保管先が誰にもわからなければ、遺言が見つからないまま相続が進むおそれがあります。

自筆証書遺言書保管制度を利用すると、法務局で原本などを保管してもらえます。用紙、余白、署名などの形式確認がありますが、内容が希望どおりの法的効果を持つかを審査する制度ではありません。

同制度で保管された遺言書に関して交付される遺言書情報証明書は、検認が不要です。自宅保管などの自筆証書は原則として検認が必要で、封印したものを家族が勝手に開封しないよう案内しておきます。

公正証書は電子化と現在の手数料を確認する

2025年10月から、指定する公証人による公正証書は、原則として電磁的記録で作成される仕組みとなっています。公正証書の電子化と、自分がパソコンで自筆証書の本文を書くことは別です。

リモートでの作成も、希望すれば必ず認められるものではなく、公証人が相当と認めるなどの条件があります。手数料は受け取る人ごとの財産の価額や加算などで変わるため、現在の案内に沿って見積もりを確認してください。

遺言執行者と書き直す時期を決めておく

遺言の内容を実現するための人として、遺言執行者を指定することができます。誰が適しているか、その人に担ってもらう権限や費用を、作成段階で相談できます。

家族が亡くなった、物件を売った、口座を移したなどの変化があれば、遺言の内容も確認します。新旧の遺言で指定が矛盾しないよう、更新した日と保管先を整理してください。

家族と財産が変わったら保管した遺言も見直す

作成後に不動産を売ったり、指定した口座を解約したりすると、書いた内容と今の財産が合わなくなります。財産の一覧を更新するときは、遺言の対象や残りの財産に関する条項も一緒に確認してください。

受け取る予定の人が先に亡くなった場合や、婚姻、離婚、養子縁組などで家族が変わった場合も、以前の遺言のままで希望が実現するかを確認します。変更部分だけを手元のコピーへ書き足すのではなく、必要な方式を満たす方法で作り直すことが大切です。

書き直したら、以前の原本の扱いと新しい保管先まで整理します。誰へ何を残すか、どの遺言を使うかが同時にわかる状態にしておくと、残された家族が複数の書類を比較する負担を減らせます。

遺言書の書き方に関するよくある質問

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印刷した本文に署名すれば自筆証書遺言になりますか

なりません。自筆証書では財産目録を除く本文と日付や氏名を自書する必要があります。公正証書の電子化とは別のルールです。

自筆証書遺言には必ず実印が必要ですか

実印に限るという要件ではありません。ただし、本人の意思をめぐる争いを避けるため、印鑑や作成記録も含めて確認できます。

夫婦で一枚の遺言書を共同作成してもよいですか

共同の遺言は禁止されています。夫と妻が、それぞれ自分の遺言を別に作成してください。

まず、残す相手と財産を一枚のメモで対応させ、通帳や登記の資料をそろえてください。文章を完成させる前に内容を整理すると、自分で書ける部分と、専門家に確認したい部分を分けられます。

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