自筆証書遺言の訂正方法 誤字の変更と全文の書き直しを比べる

遺言の原本と照合用の資料を重ねて確認するイメージ

自筆証書遺言を直すときは、誤った文字へ線を引いて訂正印を押すだけでは、必要な変更の方式を満たさないことがあります。現在の民法は、場所を示すこと、変更した旨の付記と署名、変更箇所への押印を求めています。

口座番号一字の修正と、受取人や配分を変える修正では、点検する範囲が違います。部分訂正で進めるか、全体を新しい用紙へ書き直すかを、原文の読みやすさと変更内容から考えましょう。

この記事でわかること
  • 一字の誤りと渡し方の変更を分けて点検する
  • 訂正印だけでなく変更場所と付記署名も確認する
  • 保管中の原本と手元の写しを取り違えない
目次

誤記の修正と財産の渡し方の変更を分ける

提出書類を照合するための紙資料と筆記具

まず、何を変えたいのかを原本とは別のメモへ書きます。口座末尾一字の誤記を直す場合と、「長男へ」を「長女へ」に変える場合を分けてください。

前者でも財産の特定に関わりますが、後者では別の条項や残余財産の指定、目録との整合まで確認が必要です。文中の名前だけを変えて、同じ財産が二人へ矛盾して指定されていないかを見ます。

既に家族が書き込んだ箇所があるなら、誰がいつ何をしたかも記録します。本人の変更と家族の書き込みを、後から同じものとして説明しないようにしてください。

場所の特定と変更の付記と署名押印をそろえる

贈与の合意を記録する契約書類

現行の民法968条3項では、自筆証書中の加除その他の変更について、遺言者が場所を指示し、変更した旨を付記して特に署名し、変更の場所に印を押す方式を定めています。非自書の財産目録を直す場合も、この変更方式を確認します。

確認する要素点検する内容
変更する場所どの頁・項・行等の変更かが分かるか
変更した旨の付記何をどう変えたかが元の記載と対応するか
付記への署名遺言者自身が署名したか
変更場所の押印訂正した場所に印があるか

口座番号末尾一字を直す架空例

例えば、本文第2項2行目の口座番号「1234561」の末尾を「7」に直すなら、その場所と変更前後が分かる付記を用意し、本人が署名し、変更の場所へ押印するという要素を点検します。「末尾を直した」という曖昧なメモだけで済ませないようにします。

これは必要な要素を理解するための例です。既に複数の加筆や抹消がある原本では、同じ位置の指示で特定できるとは限らず、実物を専門家に見せて確認するほうが確実です。

読めない修正や変更が多いときは全文を書き直す

取引記録を保管するファイルと資料

修正液や重ね書きで元の文字が判別できない場合や、受取人を何度も直した場合は、変更箇所をさらに増やす前に書き直しを検討します。部分訂正の形を整えても、財産の分け方の矛盾が解消するとは限りません。

新しい用紙へ書き直すなら、本文全体、実際の作成日、本人の氏名、押印、添付目録との対応を改めて点検します。旧稿の日付だけを写して、今回作った日と異なる日付にしないようにします。

訂正方式に不備があった場合、変更部分が効力を生じない問題と遺言全体の効力は、内容に応じて検討されます。線を引いたから全部無効、訂正印があるから全部有効、と家族だけで決めないでください。

文字を書くことが難しくなっているなら、無理に修正を続けず、公正証書など別の方式を公証役場へ相談することもできます。

旧版と法務局保管の遺言を整理する

支払内容を確かめる領収書と計算道具

法務局で保管している遺言を変えたい場合、手元の写しへの訂正は保管原本の変更にはなりません。原本の取扱いと、新たな遺言を保管する場合の手続きを法務局へ確認します。

保管の申請を撤回して原本を受け取ることと、遺言そのものを撤回することも別です。新旧の内容が抵触する部分などには民法の撤回の規定が関わるため、「保管を撤回したから古い意思もすべて消えた」と扱わないようにします。

旧版と新版の作成日、保管先、変更した範囲を一覧にし、専門家に見せる資料には両方を含めます。旧原本を隠したり、家族が処分して矛盾をなくしたりせず、本人の意思と適式な作成を確認してください。

2026年6月公布の改正法には押印任意化等がありますが、公布と施行は別です。本稿は2026年10月の現行方式に基づくため、将来の改正を理由に今必要な押印を省かないようにします。

よくある質問

疑問点を調べるための本とメモ

訂正印だけ押せば遺言を直せますか

訂正印だけでは足りないことがあります。場所の指示、変更の付記と本人の署名、変更箇所の押印を現行968条3項に照らして確認します。

パソコンで作った財産目録の訂正も同じですか

自書によらない財産目録の変更にも、同じ条文の変更方式を確認します。印刷した一枚を自己判断で差し替える方法にはしないでください。

保管中の遺言のコピーを直せばよいですか

写しへの訂正で法務局の保管原本が変わるわけではありません。原本の取扱いと新たな作成・保管の方法を確認します。

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