相続した在庫の評価 商品と原材料や仕掛品を分ける

提出書類を照合するための紙資料と筆記具

店や工場の在庫を相続したら、決算書の金額をそのまま遺産一覧へ写す前に、誰の物で、どの段階にある在庫かを調べます。完成商品、原材料、加工途中の仕掛品では、相続税の評価の出発点が違います。

父の事業に残る三種類の在庫を例に、数量の確認から評価額の根拠へつなげます。廃業するかどうかと、死亡日に持っていた在庫をいくらとするかは、別の判断として進めましょう。

この記事でわかること
  • 本人所有の現物を商品と原材料と仕掛品に分ける
  • 商品は売価から根拠のある利潤や予定経費等を控える
  • 個別評価が難しい場合と所得税の方法を確認する
目次

所有する在庫を商品と原材料と仕掛品に分ける

取引記録を保管するファイルと資料

最初に、倉庫や店頭の品物と在庫表を照合します。父が買い入れた商品と、客から預かった品、他社から販売を委託された品を分け、父自身が所有する財産の範囲を確かめます。場所が同じというだけで、全てを父の相続財産へ含めません。

品物の状態評価へ進む前の確認主な資料
販売できる完成商品品名、数量、型番、状態と通常の販売条件在庫表、販売記録、現物写真
まだ加工していない材料所有数量と死亡時点での調達条件仕入先見積、請求・入庫記録
加工途中の製品加工の進捗と既にかかった費用製造記録、材料払出し、作業明細
客や他社の預かり品所有者と返却又は精算の義務預り証、委託契約、精算明細

死亡日と数えた日が違うなら、その間の販売、入荷、返品を調べて死亡時の数量へ戻します。後日の実地棚卸しを、何の調整もなく死亡日の数量としないようにします。

会社が所有する商品と、父が個人事業で所有する在庫も別です。父が会社の株主だった場合、会社の在庫を父個人の遺産としてもう一度足すものではありません。

商品の売価から利潤と今後の経費などを控える

合意の内容を確認する契約書類

財産評価基本通達133は、商品・製品等を、販売したときに実現すると認められる通常の価額から、適正利潤、販売までに負担すると見込まれる経費、課税されるべき消費税額等を控除して評価するとしています。仕入原価や希望小売価格を無条件で採る方法ではありません。

次は、本人所有の同じ商品群について、死亡時の販売資料等から各入力を確認できたとする説明用の例です。利益率や経費率を業界共通の固定率として示すものではありません。

商品の評価の入力仮定の金額と確認
通常の販売価額300万円。同等商品と実際の販売条件を確認
適正利潤60万円。商品と事業の資料に基づく仮定
販売までに負担する経費20万円。既に済んだ支出や別の債務と分ける
控除対象となる消費税額等この例では0円と仮定。実際は課税関係を確認
評価額300−60−20−0=220万円

税込表示だから常に売価の10%を差し引ける、という意味ではありません。課税されるべき消費税額等と、売価に含めた金額の関係を申告担当へ確認します。同じ経費を売価から控除し、さらに相続債務にも重ねて控除することも避けます。

古い商品を売れないだけでゼロにしない

長期在庫、傷、型落ちなどがあれば、販売可能性と通常の価額を裏付ける資料を残します。希望する価格で売れないからゼロ、古いから一律半額、と自分だけで決めず、現物の状態と同等品の取引、処分等の事実を示してください。

原材料と仕掛品は死亡時の取得加工費を確かめる

手続きの期限を確認するカレンダーと資料

原材料は、その財産を死亡時に取得するとした場合の価額に、引取運賃や荷役費等を加えて評価します。過去に安く仕入れた原価だけでなく、死亡時点の仕入先価格や取得に必要な費用を確かめます。

仕掛品は、原材料を死亡時に取得するとした場合の価額と、その時点までの加工に要した費用を確認します。完成後の販売価額をそのまま使うものでも、今後かかる全加工費を既に発生した費用へ足すものでもありません。

商品の例とは別の在庫死亡時の評価の仮定計算
未加工の材料取得するとした価額80万円、引取運賃等5万円80+5=85万円
加工途中の製品原材料の取得価額50万円、死亡時までの加工費30万円50+30=80万円

これらは別々の品物の例です。同じ材料を原材料の85万円に含めたうえで、仕掛品の材料にも重ねて加えないよう、現物の場所と製造記録へ対応させます。未払仕入代金の有無は、在庫の資産評価とは別に債務資料へ引き継ぎます。

個別評価が難しい場合の方法と所得税の棚卸しを分ける

支払内容を確かめる領収書と計算道具

品数が非常に多いなど、個別に通達133で評価するのが困難な場合には、133の取扱いを確認します。所得計算で選定していたたな卸資産の評価方法によって算定できる規定がありますが、単に帳簿の合計を写せばよいという意味ではありません。

採用していた方法、死亡日の数量、評価の基になる単価を申告担当へ示します。相続税の財産評価と、所得税の準確定申告や事業承継後の棚卸しは、用途と基準日を区別して資料を残してください。

事業をやめる手続きと評価を別に進める

在庫の評価を終えても、廃業届、準確定申告、消費税の確認が全て終わるわけではありません。家族が事業を続ける場合も、取得した在庫をいつから誰が販売し、売上と経費をどう記録するかを別に確認します。

最後に、本人所有の数量、状態、売価の根拠、控除項目、材料と加工費、採用方法を一組にします。数の分からない箱や所有者不明の預かり品は、未確認のまま明示し、安い単価を当てて確定済みにしないようにしましょう。

相続の資料をそろえる際は、相続税申告に必要な書類 財産別の一覧と集め方や不足時の対応も参考に、今回の判断と全体の申告準備をつなげてください。

ご家族の資料や未確認の点を整理して相談する際は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。

よくある質問

疑問点を調べるための本とメモ

相続した商品は帳簿に書かれた原価で評価しますか

原則として課税時の販売価額から適正な利潤や予定経費、課税されるべき消費税額等を控除します。個別計算が困難な場合の取扱いも確認します。

売れ残った商品はすべてゼロでよいですか

売れ残りだけで一律にゼロとはできません。品質や需要、同等品の売価、処分事実など、死亡時の価額を示す資料で検討します。

原材料と作りかけの製品は同じ計算ですか

区分が異なります。原材料は取得価額と引取運賃等、仕掛品は原材料の取得価額に死亡時までの加工費等を含めて確認します。

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