借地権の譲渡許可申立書 買主と契約資料の書き方

相続した借地上の建物を特定の買主へ売りたいのに、地主の譲渡承諾を得られない。そのときに検討する申立書には、売る理由だけでなく、契約の履歴と買主の具体的な事情を書く欄があります。
ここでは東京地裁の現行「土地賃借権譲渡・土地転貸許可申立書」を使い、どの事実をどの資料から書くかを整理します。申立書の完成例や許可の保証ではなく、手元の資料を欄へ対応させる読み方です。
- 任意売却の19条の申立てと競売後の手続きを分ける
- 契約履歴と買主の資力を実際の記載欄へ対応させる
- 附属書類と証拠書類の原本や取得期限を点検する
19条の用紙と現在の当事者を確認する

任意の売却に伴う賃借権譲渡の許可は、借地借家法19条1項の手続きです。競売等の買受人が取得後に申し立てる20条とは別で、後者の2か月という期限を、今回の売主の任意譲渡へそのまま当てはめません。
用紙の冒頭で「土地賃借権譲渡」と「土地転貸」を選び、申立ての趣旨では譲受予定者目録と土地目録の人・土地を特定します。これから誰へ何を譲るかが定まらないまま、どの買主にも使える包括的な許可を求める用紙ではありません。
管轄は原則として土地所在地の地方裁判所で、当事者の合意がある場合の簡易裁判所という枝があります。東京の区部等と多摩地区では取扱庁も分かれるため、借地の場所から提出先を確かめます。
父が亡くなっている場合は、元契約の氏名を申立人へそのまま写しません。誰が現在の賃借人として権利を承継したかを、相続関係と分割等の資料から整理します。複数の賃借人・賃貸人がいる場合の当事者についても、裁判所の記載案内へ照合します。
第3の契約履歴を原契約と更新書面から書く

「第3 賃貸借契約の内容等」は、現在の当事者と契約当初の当事者を分けています。「最初に契約を締結した日」も、子が相続した日や最新の更新日を記載する欄ではありません。原契約がないときは、その事実を残して過去の資料を探します。
| 用紙の欄 | 照合する実書類 | 気を付ける点 |
|---|---|---|
| 契約当事者と最初の締結日 | 原契約・相続資料・過去の譲渡資料 | 現在と当初を同じ人にしない |
| 契約の種類と借地条件 | 原契約と変更覚書 | 普通/定期、構造制限等を推測しない |
| 存続期間と各更新 | 更新契約、通知、従前の経緯 | 各回の合意更新/法定更新を読み分ける |
| 土地・現存建物・地代等 | 登記事項、契約図面、地代の支払記録 | 住居表示と地番、契約面積と実測の差を区分 |
更新料を払った領収書だけで、その回が必ず合意更新だったとは決めません。分かっている事実と不明な点を分け、更新契約書があるなら証拠へ対応させます。地代や金銭の支払状況も、確認できる範囲を正確に書きます。
借りているのが一筆の一部なら、用紙の土地目録で全部か一部かを分け、範囲を特定する図面も確認します。土地の住所だけでは、申立ての対象が特定できない場合があります。
第4の買主の事情と第5の交渉を具体資料で示す

「第4 申立ての理由」では、譲受予定者を氏名・住所等で特定し、売買等の契約の種類、所有権移転の時期、譲渡が必要な事情、買主の職業や資力等を書きます。許可の確定を条件とする契約なら、その条件を売買契約と一致させます。
買主が個人の案と法人の案を比較している仮定なら、申立て前の準備は次のように分かれます。この二候補を、裁判所がどちらも許可したと扱う表ではありません。実際の譲受予定者を特定してから用紙へ対応させます。
| 譲受予定者の形 | 特定の資料 | 資力等を説明する資料の例 |
|---|---|---|
| 個人 | 住民票等と本人の確認情報 | 源泉徴収票、確定申告書等 |
| 法人 | 法人の資格証明、代表者の情報 | 貸借対照表、損益計算書等の決算資料 |
資力があるという結論だけでなく、契約を守り地代を支払える事情を具体的に示します。資料にない勤務先や収入、用途を、売買を進めたいからと補って書くことはできません。
地主へ何を提案し、どう返答されたかは「第5 当事者間の協議の概要」です。提案書、メール、回答書等へ日付と内容を対応させ、承諾拒否の理由が分かればそのまま示します。
附属書類と甲号証と費用を現在の案内で点検する

用紙末尾は、申立書正本・相手方人数分の副本、委任状、法人の資格証明、土地建物の固定資産評価証明、現場地図等と、証拠書類の案内を区分しています。本人申立てに弁護士委任状を機械的に付けるなど、条件付きの資料を全件必須にしません。
証拠の土地建物の登記事項、公図、買主が個人の場合の住民票等には、原本や3か月以内といった用紙の指定を確認します。登記上の所有者が死亡していれば、相続人を示す戸籍や住所の資料を追加する案内もあります。裁判所の「甲号証」は証拠を整理する所定の表示であり、原資料をその番号へ対応させます。
今回確認した東京の現行用紙と費用案内は、相手方1人の予納郵券を6,000円、当事者が1人増すごとの追加を1,000円としています。申立手数料は土地の価額等に基づく別計算で、印紙を貼らず受付で点検する案内です。古い用紙の金額を使わず提出時にも再確認します。
第6の財産上の給付や地代は、自分の意見・希望を書く欄です。希望額を裁判所の決定額と扱いません。買主変更、地主の介入権、条件の調整が生じた場合の契約への影響も、弁護士へ確認しながら補正資料と記録を残してください。
関連する基本事項は、親の財産の調べ方 預貯金や不動産の照会先と必要書類も参考にしてください。
契約や手元の資料をもとに相談する場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

買主がまだ決まらなくても包括的に許可を取れますか
現行用紙は譲受予定者を特定し、その人の事情と資力等を示す構成です。将来どの買主にも使える許可として準備しません。
父の名前を現在の賃借人として写しますか
現在と契約当初の当事者は別欄です。父が亡くなった場合は、誰が権利を承継したかを相続資料で確認します。
古い申立書の郵便切手額を使ってよいですか
提出先の現行案内を確認します。今回確認した東京の現行用紙は相手方1人6,000円ですが、費用や追加資料は提出時にも点検します。