後見制度支援預貯金の払戻し 臨時支出と指示書の準備

本人の施設入居や入院でまとまったお金が必要になっても、後見制度支援預貯金の残高を後見人の判断だけで自由に引き出せるわけではありません。日常の管理口座とは異なり、払戻しには家庭裁判所の指示書に基づく手続きが必要です。
まず支払額と期限、日常口座に残す生活費を整理し、本人のために必要な額を家裁へ報告します。契約をすでに利用している成年後見人に向け、臨時払戻しの準備と支出後の管理を説明します。
- 日常口座の不足と臨時に必要な支出を分ける
- 報告書に見積書と直近の取引資料を対応させる
- 指示書の条件を銀行手続きと支出後の記録につなぐ
日常口座の不足と支援預貯金の残高を分ける

後見制度支援預貯金は、本人の財産のうち通常使用しない金銭を、銀行や信用金庫、信用組合等の口座で別管理する仕組みです。日々の生活費などは別の日常口座で管理し、必要に応じて定期的に送金する設定を利用できる場合もあります。
支援口座に十分な残高があることと、今日払戻しできることは別です。本人に多額の支出が必要になり、手元の管理資金では足りなくなったときは、必要額と理由を家裁へ報告し、指示書を受けて金融機関で手続きします。
例えば、入居一時金80万円に対し、日常口座には45万円があると仮定します。単に80−45=35万円とする前に、入居までの医療費や生活費、近く入る年金等も見て、日常の支払いを止めないためにいくら必要かを整理します。
| 仮定の支出と残高 | 読み取る内容 |
|---|---|
| 入居一時金80万円 | 本人の契約と請求に基づく臨時支出 |
| 日常口座45万円 | 全額を使えるとは限らず直近の生活費も必要 |
| 近く支払う生活費20万円 | 一時金の不足額とは別に残す資金を検討 |
| 支援口座の残高 | 必要額を家裁へ説明する財産資料。自動的な払戻額ではない |
この表から家裁の指示額が決まるわけではありません。支払日と入金日を含めた資料で、なぜその額を必要とするかを説明します。後見人自身の生活費や子への資金援助を、本人の施設費と混ぜないでください。
本人の支出を見積書と収支で裏付ける

使うのは、担当家裁が案内する報告書です。東京家裁の払戻し様式には、預貯金契約、払戻額、理由、払戻申出日の欄があり、その下に裁判所の指示書部分が設けられています。自分が書く報告と裁判官の指示を区別します。
口座欄は、本人名義、金融機関と支店、口座種別、口座番号を通帳等と照合します。残高が近い別の口座を書かないよう、支援預貯金の契約書類も手元に置きます。
支払額の根拠と現在の資金を同じ報告へ結び付ける
東京の様式は、理由の相当性を裏付ける資料と、前回報告以降から直近までの取引が記帳された通帳の写し、又は残高・取引履歴が確認できる書類等を案内しています。施設の見積書や請求書には、対象者、費目、金額、支払期日を対応させましょう。
入居一時金以外にも引越し代、月額費用、返還される敷金等があれば、支出と戻る資金を別々に示します。施設の総見積額だけを書き写すより、今回払う分と後日発生する分が分かる説明にします。
本人が望む生活や必要性も、把握できた範囲で伝えます。払戻しの指示書を求める手続きと、別途家裁の許可が必要な契約や財産処分は、同じものではありません。家の売却なども予定する場合は、その内容を別の相談事項として伝えてください。
指示書の期限と銀行の必要書類を確認する

家裁へ報告書を出しただけで、支援口座から自動的に振り込まれるとは限りません。指示書が交付されたら、契約している金融機関で必要な手続きを行います。申出の期限や受付店、払戻し先は、指示書と商品案内の両方で確認してください。
東京家裁の掲載様式では、払戻申出日を指示の日から3週間以内とし、初日は数えず、最終日が休日なら翌営業日としています。これは同様式の条件であり、全国の全家裁や全金融機関の共通期限として使うものではありません。
指示書と金融機関の本人確認資料をそろえる
指示書の原本、後見の登記事項証明書、後見人の本人確認資料、通帳や届出印など、何が必要かは金融機関の取扱いを確認します。口座開設時に提出した資料がある場合も、それだけで今回の手続きが足りるとは決めず、払戻しの受付店へ確かめてください。
現金で受け取れるかも一律ではありません。例えば茨城県信用組合は、現金での払戻しはできず振替又は振込と案内しています。支払先へ直接送るのか、本人の日常口座へ移すのか、期限に間に合う受付日も窓口へ確かめます。
審査や銀行手続きの必要日数は、全国一律に保証できません。請求期限が近い場合は、家裁と金融機関へ事情を早めに伝え、施設等にも支払日を調整できるか相談します。
支出後の領収書と定期送金の見直しを残す

払戻し後は、指示書、振替や振込の記録、支払先の領収書を対応させます。口座から出した額と実際に支払った額が違う場合は、その差も本人の財産として説明できるようにします。
例えば80万円の見積りに対し、実際の支払いが76万円になったなら、差額4万円がどの口座に残るかを帳簿と残高へ反映します。後見人への報酬や家族へのお礼だったと後から読み替えず、必要な扱いを家裁の指示に沿って確認してください。
毎月の不足は臨時払戻しとは別に相談する
入居後に毎月の施設費が増え、定期送金だけでは足りなくなる場合もあります。一時金の払戻しと、継続的な送金額の変更を分け、今後の収支見込みを家裁へ示します。臨時収入や黒字が増えた場合の追加預入れも、契約と指示に沿った手続きが必要です。
金融機関ごとに預入れや払戻し、利用できる後見の類型等は異なります。将来の相続人の都合ではなく、本人の生活を続けられる資金計画と、第三者にも説明できる支払記録を残すことが中心になります。
関連する基本事項は、家族信託は必要ないか 向かないケースと遺言や成年後見との違いも参考にしてください。
契約や手元の資料をもとに相談する場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

後見人なら支援預貯金を自由に引き出せますか
自由な払戻しができる通常預金とは異なります。本人に必要な額と理由を家裁へ報告し、指示書に基づいて契約金融機関で手続きを行います。
払戻しの報告には何を添えますか
担当家裁の案内を確認します。東京の様式では、理由を裏付ける資料と直近までの取引が分かる通帳写し又は残高・取引履歴等を案内しています。
指示書は全国どこでも3週間使えますか
全国共通とはいえません。3週間は東京家裁の掲載様式の条件です。担当家裁の指示と契約金融機関の受付方法を確認してください。