遺言執行者を複数にするとき 多数決と役割分担の注意点

遺言執行者が二人以上いる場合、遺言に別の定めがなければ、任務の執行は過半数で決めます。兄弟二人なら一人の賛成では足りず、二人の意見が一致する必要があります。ただし、保存行為は各執行者が行えます。
複数指定は負担を分ける方法になりますが、分担が曖昧なままでは手続きが止まることもあります。指定された人同士で、遺言の全文、未処理の財産、窓口が求める書類を確かめるところから始めましょう。
- 人数に応じた過半数と遺言の分担指定を読む
- 保存行為と財産の分配を分けて考える
- 意見が割れたときの保留事項と相談資料を整理する
複数の執行者は原則として過半数で決める

二人なら一人の賛成だけでは足りない
過半数とは半分を超える数です。二人のうち一人、四人のうち二人では過半数に届きません。「自分が受け取る財産だから」「年上だから」という理由で、一方に決定権が集中するわけでもありません。
| 執行者の人数 | 必要な賛成 | 止まりやすい場面 |
|---|---|---|
| 2人 | 2人 | 1対1で意見が割れる |
| 3人 | 2人以上 | 連絡が取れず決定に必要な人数がそろわない |
| 4人 | 3人以上 | 2対2で意見が割れる |
遺言に別の定めがあれば先に読む
民法1017条は、遺言者が別の意思を表示している場合はその意思に従うとしています。不動産は長女、その他の財産は長男という職務分担などがあれば、対象と権限を具体的に読みます。名簿に二人の名前があるというだけで、各自が全部を単独処理できるとは判断しません。
決定と窓口の手続きは分けて確認する

保存行為は各執行者が行える
保存行為は、財産の価値や権利を保つための行為です。たとえば建物の傷みを広げない応急的な補修と、建物全体の大規模な改修では性質が異なります。実行したいことが保存に当たるかを、費用や内容から確認します。
「急いでいる」という事情だけで、売却や預金の分配まで保存行為になるわけではありません。判断に迷う処分は、遺言と財産の資料を弁護士へ示してから進めてください。
銀行には遺言の全文と代表窓口を示す
執行者同士で方針を決めることと、銀行所定の届出や本人確認を満たすことは別です。誰が連絡窓口となり、誰の署名や印鑑証明が必要かを、遺言の写しを示して銀行へ尋ねます。代表の連絡担当を決めても、法律上の権限がその人だけに移るわけではありません。
意見が割れたら権限と未処理事項を整理する

報酬や利益の対立も一緒に記録する
意見が割れたら、何について合意できていないのかを分けます。遺言の意味、売却価格、支出の必要性、報酬の額が混ざっていると、一つずつ判断できません。期限がある手続きと保留中の財産を一覧にします。
もう一人の連絡を無視して処理を進めたり、相続人の多数決で執行者を外したりしないでください。就任後の辞任や解任には家庭裁判所が関わる別の要件があります。単に意見が違うというだけで解任が認められるとは限りません。
相手を無視して執行者を外すことはできない
相談時には、遺言、連絡の履歴、提案内容、返答、未処理の財産と迫っている期限を持参します。どちらが悪いかという評価だけでなく、どの任務が実行できないのかを示すと、必要な対応を検討しやすくなります。
遺言を作る段階で分担と欠員への備えを考える

分掌と後継候補を具体的にする
これから遺言を作るなら、複数指定により何を分担したいのかを先に決めます。不動産と預金だけを分けると、後から判明した株式を誰が扱うかが残るため、残余の財産も含めて設計します。
一人が先に死亡した場合や長く動けない場合も考えます。互いに確認する仕組みと、止まらず処理できる仕組みは別です。一般的な条項をそのまま写さず、財産の種類、指定する人の事情、金融機関の対応に合わせて専門家へ作成を相談してください。
関連する手順は、遺言執行者の役割と手続き 就任通知から財産の引き渡しまでで確認できます。
よくある質問

執行者が二人なら一人で預金を分けられますか
遺言に別の定めがなければ、原則として過半数の決定が必要です。二人なら二人の賛成が要るため、一人の判断で分配しないでください。
連絡担当を決めるとその人だけで決められますか
連絡窓口を一本にすることと、執行の権限は別です。遺言の定めと必要な意思決定を確認します。
意見が合わなければ相続人が執行者を交代させられますか
家族の判断だけで就任済みの執行者を外せるわけではありません。辞任や解任の要件と家庭裁判所の手続きを確認します。
遺言の分担条項を二人で読み、未処理の財産ごとに「決める人・窓口へ連絡する人・保留の理由」を書き出すことから始めてください。