遺言執行を専門家に任せたい 復任できる範囲と執行者の責任

遺言執行者が銀行や登記の手続きを一人で進められないときは、第三者に行わせる「復任」を検討できます。ただし、専門家へ依頼しても、自分が遺言執行者でなくなるわけではありません。遺言の制限、作成日、任せる業務を確認し、残る責任と費用を決めてから依頼します。
- 復任は執行者を辞める手続きとは違う
- 2019年7月1日前に作られた遺言は復任の経過措置を確認する
- 依頼した業務の報告と財産の引き渡しまで追う
第三者に任せても執行者の地位はそのまま残る

復任と辞任や交代を分ける
現行の民法1016条は、遺言執行者が自己の責任で第三者に任務を行わせることを認めています。ただし、遺言者が遺言に別段の意思を示しているときは、その内容に従います。
| 方法 | 自分の立場 |
|---|---|
| 一部の手続きを第三者へ依頼 | 遺言執行者の地位は残る。任せた範囲と進捗を把握する |
| 広い範囲を第三者へ行わせる | 依頼範囲が広くても当然に辞任したことにはならない |
| 家庭裁判所の許可を得て辞任 | 復任とは別の手続き。後任や未処理の財産を確認する |
戸籍を集める時間がないことと、利害対立などで執行者を続けられないことでは、選ぶ方法が違います。委任状だけで執行者そのものを別の人へ変更したつもりにならないようにします。
遺言の作成日と委任を制限する条項を読む

2019年7月1日前の遺言は経過措置に注意する
現在の条文だけで判断せず、遺言の作成日も確認します。2019年7月1日の施行前に作られた遺言に係る復任権には、改正前の扱いが残ります。死亡した日が施行後だから、必ず現在の自由な復任のルールになるというわけではありません。
改正前は、遺言者が遺言で許した場合か、やむを得ない事由がある場合に第三者へ行わせる仕組みでした。古い遺言では、作成日、第三者へ任せることに関する条項、任せたい理由を一緒に専門家へ示します。
遺言が複数見つかれば、新しい紙だけの日付で決めず、どの内容が現在の執行対象なのかを先に確かめます。
業務ごとに委任範囲と費用を明記する

登記や税申告は専門職の業務範囲を確かめる
「相続手続き一式」という見積もりでも、依頼先が全てを自ら扱うとは限りません。登記申請、税務申告、紛争を伴う交渉などは、それぞれ対応する資格と受任範囲を確認します。別の専門家へ依頼する費用が含まれているかも尋ねます。
| 確認すること | 具体的な書き方の例 |
|---|---|
| 対象業務 | A銀行の解約、B不動産の登記など対象を特定 |
| 担当と権限 | 誰が書類を作り、誰の名で提出・受領するか |
| 費用 | 報酬、実費、追加業務、遺産から支出する範囲 |
| 財産の引き渡し | 解約金の入金先、原本の返却先、残金の報告 |
財産引渡しと報告の担当を残す
銀行の解約が終わっても、受取人へ渡す金額や、費用を引いた残額が不明では執行は完了しません。処理した資料と入出金の明細を受け取る時期を、依頼時に決めます。
報告を受けて未処理事項を確認する

やむを得ない事由による責任の特則を一般化しない
現行1016条2項は、やむを得ない事由で第三者に任務を行わせる場合、相続人に対しては選任と監督の責任のみを負うと定めています。通常の依頼をすべてこの特則で説明したり、誰かに頼めば責任がなくなると考えたりしないでください。
依頼後は、済んだ手続き、未提出の書類、財産の受領・送金、預けた原本の返却を一覧にします。報告が予定どおり来ない場合は、どの処理が止まっているかを文書で尋ね、支払いだけが先行しないよう確認します。
関連する手順は、遺言執行者の役割と手続き 就任通知から財産の引き渡しまでで確認できます。
よくある質問

専門家に全部頼めば遺言執行者を辞めたことになりますか。
なりません。復任は第三者に任務を行わせる方法で、自分の地位は残ります。辞任には別の要件と家庭裁判所の許可が必要です。
古い遺言でも第三者へ自由に任せられますか。
2019年7月1日前に作られた遺言に係る復任権には経過措置があります。遺言の作成日と委任を認める記載、任せる理由を確認してください。
第三者へ依頼した後は何を確認しますか。
依頼した手続きの完了資料、費用の明細、入出金、原本の返却と残った仕事を確認します。任せる範囲と報告時期は契約時に決めます。
遺言の作成日と第三者への委任に触れた箇所を確認し、自分で進められない仕事を一つずつ書き出してください。その一覧を見せて、依頼先の業務範囲と報告方法を決めます。