相続税の物納の条件と申請方法 土地の要件と財産の順位

相続税の物納は、延納によっても金銭で納めることが困難な場合に、一定の相続財産で納付する方法です。不要な土地を国へ引き取ってもらう制度ではなく、納税者の資金状況と財産の要件について許可を受ける必要があります。
土地があれば必ず使えるわけではありません。国内の相続財産か、物納する順位は適切か、境界や権利に問題がないかを確認し、売却した場合の手取りとも比べて判断します。
- 物納できる相続財産と延納でも納税できない条件
- 財産の順位と境界や権利の不適格要件
- 売却と比較する費用や申請後の利子税の確認点
物納は延納でも金銭納付が困難な場合の方法

相続税は金銭一括での納付が原則です。一括が難しければ延納、延納でも金銭で納めることが難しい場合に物納を検討する、という制度の関係になります。
物納できるのは相続税で贈与税には使えない
延納は贈与税にも制度がありますが、物納は相続税に限った制度です。贈与で土地を受け取り、贈与税の支払いが足りないからその土地で納める、という利用はできません。
相続税でも、現預金を持っているのに将来のために残したい、という希望だけでは認められません。本人の資金や収入等を所定の方法で整理し、金銭で納付できない額を求めます。
物納できる額は納付が困難な範囲に限られる
物納を申請する額には、延納によっても納めることが困難な額という上限があります。相続財産に土地が占める割合だけで判定せず、生活費や収入等を含む理由書の現行の計算に沿って確認します。
2025年4月1日以後に開始した相続では、将来の収入減少、延納年数と平均余命の短い方の年数、延納終了後に残す所定の生活費や事業経費を考慮する計算へ変わっています。過去の年収を最長20年分掛けるだけで、物納できないと結論づけないでください。
親が土地しか持っていなかった場合でも、子自身に納付可能な資金があるなら結論が変わり得ます。物納を前提に遺産を分ける前に、納税者ごとの見込みを確かめてください。
相続した国内財産が物納の対象になるか確かめる

物納に使えるのは、納める相続税の課税価格計算の基礎になった相続財産のうち、国内にある所定の財産です。子が元々所有していた別の土地を、自由に代わりとして差し出す制度ではありません。
不動産と上場株式などには申請順位がある
| 順位 | 財産の種類 | 同じ順位内での確認 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 不動産、船舶、国債・地方債、上場株式等 | 物納劣後財産は適当な他財産がないか確認 |
| 第2順位 | 非上場株式等 | その中の劣後財産はさらに後になる |
| 第3順位 | 動産 | 先順位の適当な財産がない等の条件 |
後順位の財産は、先順位に適当な価額の財産がない場合等に限って使える扱いです。土地を残したいから後順位の財産を先に選ぶ、といった自由な順番ではありません。
特定登録美術品などには所定の例外があります。古い解説では上場株式の順位が異なることがあるため、現行の一覧で確認してください。
相続時精算課税で取得した財産等は対象外
相続時精算課税を適用して贈与を受けた財産は、相続税の課税価格へ算入される場合でも物納の対象にはできません。「相続税を計算するときに加えた財産」と「相続して物納できる財産」は同じ範囲ではありません。
非上場株式等や個人の事業用資産について、贈与税の納税猶予の特例を受けた財産等にも対象外となるものがあります。取得原因と適用した制度を、契約書や過去の申告書で確かめます。
土地の権利と境界や管理の問題を調べる

物納では国が受け取った後に管理・処分できる財産かが審査されます。売却しにくい土地を無条件で納められる、と考えないでください。
境界未確定や抵当権などは不適格の問題になる
担保権が設定されている不動産、権利の帰属に争いがある不動産、境界が明らかでない土地などは、管理処分不適格財産に該当し得ます。共有の財産や、公道に通じる権利が明確でない土地にも注意が必要です。
例えば、隣家との境界が決まらないままでは、測量図があることだけで問題が解消したとはいえません。登記、現地、境界確認、通行等の権利を照合し、必要な整備を確認します。
劣後財産と不適格財産を区別する
物納劣後財産は、原則として他に適当な財産がない場合等に検討する、優先順位が下がる財産です。そもそも管理・処分上の問題で使えない不適格財産と同じではありません。
どちらに当たるかで対応も変わります。別の財産を選ぶのか、権利や境界を整備するのか、単に順番の説明を補えばよいのかを専門家や税務署へ確かめます。
物納と売却で手元に残る財産を比べる

物納で納税できる価額と、不動産市場で売れる価格は一致しません。制度を使えるかが分かったら、売却して金銭で納めた場合の手取りと比べます。
収納価額と売却見込額は別に確認する
物納財産の収納価額は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となった価額です。申請した土地の売却査定額や希望額を、そのまま税金に充当できるわけではありません。
小規模宅地等の特例を受けた土地や、延納から変更する特定物納などでは、収納価額に特別な取扱いがあります。相続税評価額の数字だけを見て比較を終えないようにします。
測量や整備費用を含めて検討する
仕組みを比べる仮定として、ある土地の物納で充当できる価額が1000万円、売却で得られる額が1300万円とします。売却に必要な費用と税金が150万円なら、納税に充てられる資金は1150万円です。
この場合でも、売却に必要な期間、物納のための測量や権利整備の費用、納期限までの資金繰りを確認しなければ優劣は決まりません。仮定の金額を実際の査定や許可額と混同せず、同じ土地の資料で比較します。
納税資金を確保する方法を広く比べるときは、土地の相続税が払えないときの選択肢も確認できます。売却価格だけ、利子税だけと、一つの負担で決めないことが大切です。
期限までに申請し必要書類と整備を進める

物納は、納期限または納付すべき日までに、物納申請書と物納手続関係書類を税務署長へ提出して申請します。期限内申告の場合は、原則として相続税の申告期限が申請の期限です。
申請書と土地の権利・管理資料を用意する
土地なら登記事項、位置・境界を示す図面、賃貸していれば契約書等、財産に応じた関係資料を準備します。金銭納付が困難な事情も、預金や収支などの根拠で説明します。
相続人間の分割、抵当権、借地人との関係に未整理の点があれば、申告書ができるまで待たずに相談してください。測量や関係者との調整には、申請書を書く以上の時間がかかることがあります。
補完や措置の期限を放置しない
書類がそろわない場合の提出期限の延長や、補完・措置の手続きにはそれぞれ要件と期限があります。申請すれば無期限に資料を待ってもらえるわけではありません。
通知を受けたら、必要な訂正や整備、期限、担当する専門家を一つの表へ記録します。所定の対応をしないと取り下げたものとみなされること等があるため、郵便物や税務署からの連絡を家族で共有します。
審査中の負担と延納からの変更にも備える

申請した日から納税が全て終わったと扱われるわけではありません。許可、財産の収納、利子税等の確認までを追う必要があります。
訂正等の期間や却下時の利子税を確認する
物納の許可までのうち、申請者が書類の訂正や収納のための措置を行う期間等には利子税がかかります。税務署による審査期間を含め、全期間が一律無利息という制度ではありません。
申請が却下された場合等にも利子税が関わります。一方、自分から申請を取り下げた場合は延滞税がかかる取扱いがあるため、結論が出ないからと手続きを変更する前に、納付額と起算日を確認します。
特定物納は原則申告期限から10年以内
延納の許可を受けた後、その条件を履行することが困難になった場合には、申告期限から10年以内に限り、分納期限が未到来の税額について物納へ変更する特定物納を検討できます。
特定物納でも財産の要件を満たす必要があり、収納価額は特定物納申請時の価額となります。最初から物納を申請する場合と、同じ評価額で比較できるとは限りません。
まず行うのは、土地の登記・境界資料と本人の資金一覧を用意することです。売却見込額、延納した場合の年間支払い、物納するための整備を並べて、期限までに実行できる方法を選びましょう。
よくある質問

現金がない場合は土地で相続税を納められますか
延納でも金銭納付が困難で、土地が物納の順位や管理処分の要件を満たす場合等に申請できます。現金がないことだけで物納が認められるわけではありません。
生前贈与で取得した土地も物納できますか
相続時精算課税を適用して贈与を受けた財産は物納の対象外です。相続税の課税価格へ算入されることと、物納できることは区別します。
物納申請をすれば利子税はかかりませんか
申請者が書類の訂正や収納のための措置を行う期間等には利子税がかかります。却下や取下げの場合も扱いが異なるため、変更前に負担を確認します。