自筆証書遺言の保管制度 法務局への申請と費用や通知

自筆証書遺言の保管制度 法務局への申請と費用や通知のイメージ

自筆証書遺言の保管制度は、自分で書いた遺言を法務局へ預け、紛失や隠匿などを防ぐ仕組みです。保管された遺言は、相続開始後の家庭裁判所の検認が不要になります。

一方、法務局が確認するのは主に形式面です。望む財産の渡し方が適法か、本人に遺言をする能力があったかなど、内容の有効性を保証する制度ではありません。

これから配偶者や子へ遺言を残す人に向けて、申請の準備、本人の来庁、費用、家族への通知までを整理します。

この記事でわかること
  • 保管で防げる問題と保証されない有効性
  • 本人申請の必要書類と保管手数料
  • 家族への通知と死亡後の証明書の使い方
目次

法務局保管は遺言の紛失や隠匿を防ぐ仕組み

法務局保管は遺言の紛失や隠匿を防ぐ仕組みに関する資料のイメージ

自宅に置くだけでは、相続後に見つからない、特定の人に隠されるといった問題が起こり得ます。法務局保管はその保管上の問題に対応する選択肢です。

形式確認と原本保管を法務局で行う

保管申請時には、遺言書保管官が自筆証書遺言の形式に適合するかを外形的に確認し、原本と画像情報を保管します。自宅の貸金庫や専門家への預託とは異なる法律上の制度です。

死亡後、相続人等が遺言書情報証明書を取得すれば、それを使って名義変更などを進められます。検認をしなくてよいことは、家族の手続きの負担を減らす利点です。

遺言能力や内容の有効性まで保証しない

形式を整えて保管できた場合でも、遺言の文言があいまいで財産を特定できない、作成時の能力が争われる、遺留分へ影響するなどの問題は残り得ます。窓口で内容の法律相談まで受けられるとは限りません。

不動産が複数ある、事業承継や条件を付けたいなど内容が複雑な場合は、作成前に専門家へ相談できます。自書が難しい場合は、公正証書を検討する方法もあります。

保管申請前に自筆の要件と用紙の形式を整える

保管申請前に自筆の要件と用紙の形式を整えるに関する資料のイメージ

保管制度を利用するには、自筆証書の法律上の要件に加えて、保管しやすい用紙の形式を満たす必要があります。自宅で作った遺言を封筒に入れたまま持参する方法ではありません。

財産目録以外の本文と日付や氏名を自書する

現行の自筆証書では、財産目録の例外を除き、本文、日付、氏名を本人が自書し押印するルールがあります。財産目録はパソコン作成や通帳・登記の写しを使うこともできますが、自書でない各ページへの署名押印などを確認します。

2026年6月には遺言制度の見直しが公布されていますが、押印の任意化等と新しい保管証書遺言の創設は施行時期が分かれています。現行の保管制度と将来の電子データ等の制度を混同せず、申請時の最新案内を使ってください。

A4用紙の余白と片面記載を確認する

保管用の遺言はA4サイズ、片面記載、定められた余白などの形式に合わせます。一般に上5mm、下10mm、左20mm、右5mm以上の余白を確保し、ページ番号を付けて、綴じたり封をしたりせず準備します。

用紙の形式を整えても、本文を印刷して本人が署名しただけでは自筆証書の要件を満たしません。書き損じや訂正の方法に不安があれば、重要な部分を修正液で直すより、新しい紙へ書き直すことも検討できます。

予約した法務局へ本人が申請し保管証を受け取る

予約した法務局へ本人が申請し保管証を受け取るに関する資料のイメージ

遺言の原本ができたら、申請できる法務局を選び、予約して本人が出向きます。家族が代わりに申請書を提出すれば保管が完了する、という手続きではありません。

住所地や本籍地などの保管所を予約する

住所地、本籍地、本人が所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所で申請できます。すべての法務局出張所が保管事務を扱うわけではないため、取扱窓口を確認します。

すでに別の遺言を保管している場合などは、申請先の扱いも確認してください。予約時には保管申請であることと、本人が利用する確認資料などを伝え、窓口の案内に沿って準備します。

申請書と本人確認書類や手数料3900円

保管申請で準備する主なもの
準備物確認する内容
遺言書の原本自筆要件とA4用紙等の形式
保管申請書受遺者や執行者と通知対象者の情報
住民票等本籍等が分かる所定の添付資料
本人確認書類マイナンバーカード等の顔写真付き公的資料
手数料保管申請一件3900円

手数料は現行案内で保管申請一件3900円です。戸籍や住民票等の取得費、文案作成を専門家へ依頼した報酬は別になります。本人確認の例外や必要な添付の詳細は、申請する保管所へ確かめます。

申請後は保管番号等が記載された保管証を保管します。家族に保管先を伝えるときは、その写しなどを渡しておくと、死後の照会の手掛かりになります。

保管後の変更と撤回や住所変更を忘れない

保管後の変更と撤回や住所変更を忘れないに関する資料のイメージ

一度預けた後も、家族や財産が変わったら内容と連絡情報を見直します。保管を続ける手続きと、遺言自体の効力を変える行為を分けることが大切です。

保管の撤回と遺言の撤回は同じではない

法務局から原本を取り戻す保管申請の撤回は、遺言そのものを撤回する意思表示と同じではありません。保管をやめても遺言の効力が当然に消えるとは限らず、その後は検認の要否も変わります。

反対に、自宅で新しい遺言を作っても、古い保管遺言の登録内容が自動で差し替わるわけではありません。新旧が矛盾する部分の効力と、保管手続きをそれぞれ確認します。

新しい遺言を作ったら保管情報も見直す

住所や氏名、受遺者、執行者、通知対象者の情報が変わった場合は、必要な変更の届出を行います。通知先が古いままでは、法務局に預けた事実が確実に家族へ伝わらないおそれがあります。

財産を売却した、受取人が先に亡くなったなどの場合は、連絡先の変更だけでなく遺言本文の見直しが必要です。家族で行う相続準備の資料整理と合わせ、保管証や最新版の作成日を記録しておきます。

相続開始後は家族が証明書と通知を利用する

相続開始後は家族が証明書と通知を利用するに関する資料のイメージ

家族が遺言の存在を知らないままでは、保管しても実行につながりません。通知には二つの種類があり、死亡すれば無条件に全家族へ全文が届く仕組みとは異なります。

死亡時通知は指定者と対象条件を確認する

希望して事前に指定した人への指定者通知は、法務局が死亡を確認したときに保管の事実を知らせるものです。現在は3人まで指定できますが、通知対象にしただけで遺言の閲覧権などが生じるわけではありません。

別に、相続人等の誰かが遺言を閲覧したり遺言書情報証明書を取得したりすると、ほかの関係相続人等へ保管を知らせる通知があります。その最初の閲覧等がなければ、この通知が自動で行われるわけではありません。

外国籍の遺言者などは、戸籍との連携による死亡把握ができない場合の条件もあるため、指定者通知が行われる場面を窓口へ確認します。

遺言書情報証明書なら検認なしで手続きできる

死亡後、相続人や受遺者、執行者などの請求できる人が必要書類をそろえ、遺言書情報証明書の交付を請求します。通知だけで遺言全文や取得する財産が確定して分かるわけではありません。

遺言書情報証明書を取得したら、金融機関や法務局へ提出書類を確認し、遺言に従った払い戻しや名義変更へ進めます。相続税の期限も別に管理し、税額がなくても申告が必要なケースを確かめてください。

遺言書保管制度に関するよくある質問

遺言書保管制度に関するよくある質問に関する資料のイメージ

家族が代理で遺言を預けられますか

保管申請は原則として遺言者本人が出向いて行います。家族による代理提出や郵送で保管申請できる制度ではありません。

保管されれば遺言は必ず有効ですか

有効性は保証されません。法務局の確認は主に形式面であり、作成時の能力や内容の解釈などの問題は別に残り得ます。

保管を撤回すれば遺言自体も無効になりますか

保管の撤回と遺言の撤回は別です。原本を取り戻しただけで遺言の効力が当然に消えるわけではないため、撤回の意思と方法を確認します。

遺言本文と財産一覧を作ったら、書式と本人の希望を確認し、申請できる保管所を予約してください。保管後は保管証と通知先を管理し、家族が制度を使える手掛かりを残します。

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