遺留分侵害額請求の方法 期限内の通知と交渉に必要な資料

遺留分侵害額請求の方法 期限内の通知と交渉に必要な資料のイメージ

遺言や生前贈与で最低限の取り分を受け取れなかった場合、一定の相続人は、財産を受け取った人へ遺留分侵害額に相当する金銭を請求できます。

先に気を付けたいのは期限です。相続の開始と侵害する贈与・遺贈を知ってから1年という期間があるため、財産評価が全部終わるまで通知を待つのは危険です。

誰へ請求するかを確認し、権利を行使する意思を到達の分かる方法で伝え、その後に金額の交渉を進める順番を整理します。

この記事でわかること
  • 遺留分を請求できる相続人と対象となる相手
  • 金額が未確定でも期限内に意思表示する方法
  • 内容証明と調停を使い分ける手順
目次

遺留分侵害額請求は不足分の金銭を求める権利

遺留分侵害額請求は不足分の金銭を求める権利に関する資料のイメージ

遺留分は一定の相続人に保障される最低限の取り分で、法定相続分と同じ割合を必ず受け取れるという制度ではありません。請求できる人と相続開始日を最初に確認します。

兄弟姉妹以外の相続人の最低限の取り分

配偶者、子やその代襲相続人、直系尊属などは、相続人に当たり遺留分があるかを確認します。兄弟姉妹やその代襲者である甥姪には遺留分はありません。

一般に遺留分全体は財産計算の基礎額の2分の1、直系尊属だけが相続人の場合は3分の1です。これに個々の法定相続分を掛け、自分の取得財産や特別受益なども考慮して侵害額を算出します。

2019年7月以降の相続は金銭請求が基本

2019年7月1日以降に開始した相続では、侵害額に相当する金銭を求める制度です。「自宅の4分の1の名義を当然に返してもらえる」という請求とは異なります。

それより前に開始した相続には旧制度の遺留分減殺請求などが問題になります。遺言の作成日ではなく、亡くなった日による適用の違いを確認してください。

請求できる人と相手と金額の資料を確認する

請求できる人と相手と金額の資料を確認するに関する資料のイメージ

相続人全員へ同額を請求するわけではありません。遺言や贈与で財産を取得した人を特定し、誰がどの順序で負担するかを調べます。

遺言と過去の贈与から取得者を特定する

遺贈や贈与の相手、取得財産、時期、価額を一覧にします。遺言執行者へ連絡するだけで、実際に金銭を負担する受遺者等への権利行使がすべて済むとは限りません。

負担の順序は原則として受遺者が受贈者に先立ち、複数の贈与では時期も関係します。相手が複数いる場合や遺言の指定が複雑な場合は、通知先を弁護士へ確認します。

財産の評価や自分の取得額をそろえる

死亡時の財産、一定の生前贈与、債務などを確認します。相続人への贈与と相続人以外への贈与では、算入する期間や要件が異なります。相続人への婚姻・養子縁組や生計の資本の贈与には、原則として相続開始前10年のルールがあります。

自分がすでに受け取った遺産や特別受益、承継した債務も侵害額へ影響します。遺産総額へ遺留分割合を掛けただけの額を、そのまま請求額にしないようにします。

不動産や預金が分からないときは、財産の調査先と必要資料を利用し、判明額と照会中のものを分けて進めます。

1年の期限を意識して到達を示せる通知を送る

1年の期限を意識して到達を示せる通知を送るに関する資料のイメージ

金額を確定するための調査と、期限内に権利を行使する行動は並行できます。資料が出そろうまで相手へ何も伝えないままにしないことが大切です。

相続と侵害を知って1年と開始から10年

遺留分侵害額請求権は、相続の開始と、遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年で時効消滅するルールがあります。相続開始から10年が経過したときも行使できなくなるため、両方を確認します。

遺言をいつ見たか、贈与と取得者をいつ知ったかなどを記録します。単に親が亡くなった日から全員一律に1年と置き換えることも、詳しい金額を知らなければ永遠に期限が始まらないと考えることも適切ではありません。

内容証明と配達証明で意思表示と到達を残す

通知では、誰の相続について、相手に遺留分侵害額請求権を行使するのかを明確にします。具体額が未確定なら、その点を示し、権利行使自体が曖昧にならない文面を検討します。

内容証明郵便は送った文書の内容などを証明する方法で、配達証明は到達の確認に役立ちます。内容証明を作ったことと相手に到達したことを同じ記録にせず、返送された場合なども専門家へ相談してください。

「財産を調べてください」という依頼だけでは、権利行使の意思が伝わらないおそれがあります。期限が近いなら、通知先と文面を先に弁護士へ示す方が確実です。

交渉から調停と訴訟へ進む手順を把握する

交渉から調停と訴訟へ進む手順を把握するに関する資料のイメージ

通知した後は、取得した財産と評価の資料を交換し、金額と支払方法を話し合います。通知を一度送ったから、以後すべての期限を考えなくてよいというわけではありません。

調停申立てだけで意思表示に代えない

裁判所は、遺留分侵害額の請求調停を申し立てただけでは、相手方への権利行使の意思表示にはならないと案内しています。申立てと別に、内容証明郵便等による意思表示が必要です。

請求相手の住所地の家庭裁判所、または合意で定めた家庭裁判所へ調停を申し立てます。申立書、戸籍、遺言、財産や債務の資料を準備し、裁判所の現行案内で印紙や郵便料を確認します。

調停不成立後は自動審判ではなく訴訟を検討する

遺産分割調停と異なり、遺留分侵害額請求の調停が不成立になっても、裁判官が自動的に金額を決める審判へ移るわけではありません。金銭の支払いを求める民事訴訟などを検討することになります。

権利行使によって生じた金銭債権の時効管理も必要です。交渉が長引くときは、催告、承認、裁判手続きなどが期限へ及ぼす効果を弁護士へ確認し、送付記録と返答を保管します。

合意書と入金や税務手続きまで確認する

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話し合いがまとまったら、金額だけでなく支払時期と方法、何を解決する合意なのかを記録します。受け取るまでの実行と、税務の確認を残しておきます。

支払期限と遅れたときの扱いを合意書へ

総額、一括か分割か、振込先と期限、遅れたときの扱いなどを明確にします。請求対象以外の権利まで放棄する条項になっていないかも確認してください。

不動産ばかりで相手に現金がない場合でも、請求額が当然にゼロになるわけではありません。支払猶予などの制度や資力を踏まえ、履行可能な合意を弁護士と検討します。

相続税の修正や更正請求を税理士へ確認する

遺留分侵害額の支払いにより、相続税の計算に影響する場合があります。支払う人と受け取る人で必要な修正申告や更正の請求が異なり、確定した事実や期限の確認も必要です。

金銭の代わりに不動産を渡すなどの合意では、譲渡所得税等が問題になることもあります。家族間の解決だから税金は関係ないとせず、合意前に渡し方を税理士へ確認します。

申告の入口は相続税の手続きと期限を参照し、合意書と入金資料を一緒に保管してください。

遺留分侵害額請求に関するよくある質問

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請求額が決まらないと通知できませんか

金額の確定を待つ必要がない場合があります。まず対象相続と相手への権利行使の意思を明確にし、文面と期限を弁護士へ確認してください。

調停を申し立てれば1年の権利行使は済みますか

申立てだけでは相手への意思表示になりません。調停とは別に、内容証明郵便等で請求権を行使する意思を伝える必要があります。

兄弟姉妹にも遺留分がありますか

ありません。兄弟姉妹の代襲相続人である甥姪にも遺留分はないため、法定相続人であることと区別します。

遺言や贈与を知った日と資料の所在、財産を取得した相手を一覧にしてください。期限が近い場合は金額計算の完了を待たず、その一覧を基に通知の準備へ進みます。

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