賃貸不動産を相続したら行う手続き 家賃と契約や税金の引継ぎ

親が貸していたアパートやマンションを相続すると、建物と土地に加え、入居者との契約や敷金返還の義務も引き継ぐことになります。名義変更が終わるまで、家賃や修繕への対応を止めてよいわけではありません。
まず管理会社へ連絡し、家賃の受取方法と緊急修繕の窓口を確保します。その後、誰が物件を取得するか、相続前後の収入をどう申告するか、税金と借入をどう支払うかを整理します。
収入がある財産でも、家賃がそのまま自由に使える利益になるとは限りません。契約と預り金、毎年の収支を一緒に確かめることが、無理なく引き継ぐための出発点です。
- 家賃と敷金や管理契約を引き継ぐときの確認事項
- 未分割の家賃と親や相続人の所得税を分ける方法
- 2027年適用を示す通達案と現行評価の違い
建物だけでなく賃貸借契約と敷金も引き継ぐ

オーナーが亡くなっても、それだけで入居者との賃貸借契約が終了するわけではありません。相続人は貸主の地位を引き継ぎ、賃料を受け取る権利とともに、契約に基づく義務にも対応します。
入居者の契約条件を一方的に変更しない
賃貸借契約書、更新の覚書、保証会社の契約、入居者一覧を集めます。相続したからという理由だけで直ちに退去を求めたり、家賃を自由に上げたりできるものではありません。
管理会社があれば、死亡の事実と相続人側の当面の窓口を伝え、緊急修繕や入退去の連絡をどこへ送るか確認します。管理契約の継続は、契約の性質と死亡時の特約等を読む必要があるため、賃貸借と全く同じに扱わないようにします。
敷金を預かる義務と現金の所在を照合する
敷金や保証金のうち返還すべき部分は、貸主が自由に使える売上ではありません。部屋ごとに預り額、返還条件、滞納や控除の状況を台帳と契約書で確かめます。
敷金相当のお金が親の預金へ混在していた場合は、物件を取得する人が返還義務だけを負い、別の人がその預金を全て取得する案になっていないかを確認します。分け方には、物件と預り金、返還義務の三つを並べて記録してください。
出典:行政書士法人トゥモローズ 賃貸オーナー死亡後の契約と敷金
家賃の受取先を変更して入金を管理する

親の口座への振込が続くと、凍結後の受領や返金などで混乱することがあります。管理会社と金融機関へ連絡し、相続人間の合意が分かる形で、新しい受取口座や当面の管理方法を決めます。
管理用の口座へ入った家賃を担当者の所得と決めない
入金を一人がまとめて受けても、未分割期間の家賃を全てその人が取得したことになるとは限りません。通常、未分割遺産から生じる不動産所得は、分割が決まるまで、相続人の法定相続分に応じて帰属します。
たとえば遺言による別の定め等がなく、相続人が母と子2人なら、母2分の1、子は各4分の1が基本です。受取窓口と権利の帰属、税務の申告者を分けて確認します。
後で物件を取得する人が決まっても家賃は当然にさかのぼらない
分割協議で子一人がアパートを取得しても、分割前に発生した家賃が全てその子のものへ変わるわけではありません。後の分割は、それまでの所得の帰属に影響しないのが原則です。
家賃から管理料や修繕費を支払っている場合は、総入金と支出を分けて記録します。家族が任意に現金を配分したことと、各人の所得税上の帰属を同じと考えず、精算方法を税理士等へ確認します。
死亡前の未収家賃と死亡後に生じる家賃も分ける
死亡時に既に支払期日が来ていた未収家賃は、相続財産の確認対象になります。一方、死亡後に生じる家賃は、相続人の所得として整理するものです。入金日だけでは判断できないため、契約上の支払期日も確かめます。
登記と管理契約や公共契約を変更する

取得者が決まったら、土地と建物の相続登記を進めます。それと並行し、管理、保険、借入、設備等の契約が途切れないよう引継ぎを行います。
管理会社へ届ける情報と報告の受け手を決める
貸主の変更通知、家賃口座、修繕の承認者、月次報告や請求の送付先を整理します。管理委託、家賃保証やサブリースでは、契約相手と支払条件も異なるため、それぞれの書面を確認してください。
電気、水道、清掃、消防設備やエレベーター等の点検契約も一覧にします。親の携帯電話にしか業者の連絡先がない場合は、家族の記憶に頼らず請求書や振込履歴から調べます。
ローンを一人が引き継ぐ合意は金融機関にも確認する
家族が「物件を取る人がローンも全て返す」と決めても、それだけで他の相続人の債権者に対する返済義務がなくなるとは限りません。金融機関へ死亡を連絡し、債務の承継や契約変更、団体信用生命保険等の有無を確認します。
残高証明、返済予定表、担保、保証、修繕履歴を一緒に保管します。家賃収入だけを見て相続の利益を判断せず、今後の返済と大規模修繕に使える資金を把握してください。
亡くなった親と相続人の所得税を分けて申告する

相続税は遺産の取得に関する税金で、家賃等への所得税とは別です。親の死亡までの申告と、その後の相続人の申告を、それぞれ確認します。
親の準確定申告は原則4か月以内
親に確定申告が必要な場合、通常はその年の1月1日から死亡日までの所得等について、相続開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をします。家賃の入金一覧だけでなく、未収金や経費、固定資産台帳も引き継ぎます。
建物の取得費や減価償却は、相続したときに買い直した扱いで全てリセットするものではありません。過去の申告書、取得資料、償却の明細を保管し、引継ぐ計算を確認してください。
青色申告の承認は親から自動では引き継がれない
新たに青色申告の承認を受ける場合、親が青色申告者だったか、相続人が既に承認を受けているか等を確認します。親が青色だったという事実だけで、子も手続き不要と判断しないようにします。
| 親が青色申告者だった場合の死亡日 | 新たな承認申請の基本期限 |
|---|---|
| 1月1日から8月31日 | 死亡の日から4か月以内 |
| 9月1日から10月31日 | その年12月31日まで |
| 11月1日から12月31日 | 翌年2月15日まで |
この表は親が青色申告者だった場合です。白色申告者の業務を承継する場合等は原則の期限が異なります。期限が休日に当たる場合の取扱いも確認し、分割が決まらないままでも申請の準備を進めます。
出典:国税庁 相続人の確定申告
出典:国税庁 青色申告制度
貸付不動産の評価と特例を確認する

相続税の評価では、建物と敷地、預金、未収金、敷金返還債務、借入金等を分けます。家賃が入っている物件の売買価格を、そのまま申告書に記すわけではありません。
現行の貸家建付地と特例は適用条件を確認する
現行の一般的な貸家の評価は、固定資産税評価額に借家権割合と賃貸割合等を反映します。貸家建付地は、自用地価額から、借地権割合、借家権割合、賃貸割合による額を控除する仕組みです。空室の状況等で判断が変わります。
貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例を使える場合は、原則200平方メートルまで50%減額の対象になり得ます。ただし、取得者の継続・保有や貸付開始からの期間等の条件があり、相続前3年以内の新規貸付等には制限や例外があります。賃貸物件なら必ず使えると見込まないでください。
出典:国税庁 貸家建付地の評価
2027年以後の評価見直しは現行と案を分ける
2026年10月15日確認時点で、国税庁は貸付用不動産の評価に関する通達案を公表し、10月18日まで意見を募集しています。案では、2027年1月1日以後の相続等について、課税時期前5年以内に有償取得や新築等をした一定の物件を通常の取引価額で評価する取扱い等が示されています。
一定条件では取得価額に地価変動や建物の減価等を反映した額の80%で評価する方法も案にありますが、全ての賃貸物件が購入価格の8割になるという意味ではありません。経過措置や対象外、最終通達の公表を確認して適用時点を判断します。
親が最近取得した物件は、取得日、引渡日、建築時期、土地を持ち始めた時期の資料を残してください。従来の評価だけを前提に、将来も必ず同じ節税効果が出るとは判断しないことが必要です。
収支と家族の分け方から保有か売却を決める

引き継ぐか売るかは、満室時の家賃だけでなく、通常の支払いと将来の工事を含む収支で考えます。築年数や空室、家族の管理に使える時間も重要です。
所得と手元に残る現金は同じではない
所得税の計算で経費となる減価償却と、現金が出ていくローン元金の返済では扱いが違います。税務上利益があるから十分な現金が残る、現金が減ったから同額が経費になる、とは限りません。
家賃から管理費、税金、保険、修繕、借入返済と納税資金を分け、年間の資金繰りを確認します。土地に税金がかかる一方で現金が少ない場合は、土地の相続税が払えないときの方法も合わせて検討します。
家族の分け方に運営の担当と責任を含める
一人が取得して他の相続人へ金銭を渡す案、売却して分ける案、共有する案には、それぞれ必要資金と意思決定の違いがあります。共有なら、修繕や募集条件、売却をどのように決めるかも考えてください。
最初の相談には、契約書、家賃一覧、敷金台帳、直近の確定申告書、ローン残高、修繕記録を持参します。物件の価値だけでなく、入居者との約束と毎年の仕事まで把握すれば、引き継いだ後の生活に合う選択がしやすくなります。
よくある質問

親が亡くなると入居者との契約は終了しますか
オーナーの死亡だけで賃貸借契約が終了するわけではありません。相続人が貸主の地位を引き継ぐため、契約内容と家賃や敷金の記録を確認します。
分割前の家賃は後で物件を相続する人の所得ですか
通常、未分割期間の不動産所得は法定相続分に応じて各相続人へ帰属し、後の分割だけでさかのぼって変わりません。遺言等による扱いは別に確認します。
親が青色申告なら子は申請せずに続けられますか
親の青色申告の承認は自動で引き継がれません。相続人自身の承認状況と親の申告区分や死亡時期を確認し、必要なら期限内に承認申請します。