投資信託の相続税評価 基準価額に口数を掛ける前に確認すること

親の口座に投資信託がある場合、残高証明書の金額をそのまま相続税の申告へ写せるとは限りません。一般的な非上場の投資信託は、死亡日に解約等をしたと仮定して受け取れる価額で評価します。ただし、日々決算型や上場商品では計算方法が異なります。
まず商品名と種類を確認し、死亡日の基準価額、保有口数、差し引ける費用等をそろえましょう。含み益の税金をすべて一律に引く方法や、1万口当たりの価格へ口数をそのまま掛ける方法は、評価誤りにつながります。
投資信託の種類によって相続税の評価方法が変わる

「投資信託」と書かれた財産でも、すべてに同じ評価式を使うわけではありません。保有する商品を、日々決算型、上場商品、それ以外に分けるところから始めます。
| 種類 | 評価の基本 |
|---|---|
| 一般的な非上場の投資信託 | 死亡日の基準価額と口数から、所定の解約費用等を調整 |
| MRF・MMF等の日々決算型 | 未収分配金とその源泉税相当額等も確認 |
| 取引所に上場するETF等 | 上場株式の評価の定めに準じる |
口座の名前よりファンドの正式名称を確かめる
同じ証券口座の中に、複数の種類の商品が入っていることがあります。運用報告書、取引残高報告書、目論見書などで正式名称と商品コードを確認し、分からない場合は金融機関へ問い合わせます。
「毎月分配型」という名前だけで、日々決算型と判断することも避けてください。分配の頻度と、財産評価基本通達の分類は同じ意味ではありません。私募商品や特殊な商品も、商品名から個別に確かめます。
一般的な投資信託は死亡日に解約した場合の価額を調べる

日々決算型でも上場商品でもない証券投資信託は、死亡時の基準価額に口数を掛け、解約請求等をした場合の所定の源泉徴収税相当額、信託財産留保額、解約手数料を調整します。税や費用は、該当するものがある場合に限って差し引きます。
基準価額が1万口当たりなら口数も1万で割る
例えば1万口当たりの基準価額が1万2,000円、保有口数が80万口とします。この場合は1万2,000円×(80万口÷1万口)=96万円です。1万2,000円へ80万をそのまま掛けると、単位が合いません。
さらに、この商品について控除対象の信託財産留保額が1,000円、解約手数料と源泉税相当額がないと仮定すれば、評価額は96万円-1,000円=95万9,000円です。実際には金融機関の資料で、その日の基準価額と控除項目を確認します。
公募株式投資信託の含み益から一律に税金を引かない
「売れば利益に税金がかかるから、その税率を含み益に掛けて引く」とは限りません。評価通達の源泉税相当額は、解約等により源泉徴収されるべき所得税等に対応するもので、将来の税負担をすべて見積もって引く枠ではありません。
SMBC日興証券の案内では、公募株式投資信託の解約については、2009年1月以降の相続・贈与でこの源泉徴収税相当額はないと説明しています。特定口座の売却益に対する徴収と混同せず、私募か公募か、所得の区分、控除の対象となる税額を確認してください。
死亡日の基準価額がない場合は直前のものを確認する
この一般的な投資信託の計算で死亡日の基準価額がない場合は、死亡日前の基準価額のうち最も近い日のものを使います。上場株式の休日評価と同じように、前後の近い日を自由に選ぶ方法ではありません。
また、上場株式のような3か月の月平均額との比較も、一般の非上場投資信託へ当然には使いません。値動きが似ていても、商品の分類に合うルールで計算します。
日々決算型と上場商品は別の計算を確認する

日々決算型では、基準価額に口数を掛けた金額だけでは未収分配金が反映されないことがあります。一方、上場商品は市場価格を基に評価します。この二つを一般の投資信託と分けて確認しましょう。
日々決算型は再投資されていない未収分配金を加える
MRFやMMF等は、基準価額×口数に再投資されていない未収分配金を加え、その分配金に対応する源泉徴収税相当額と、該当する信託財産留保額・解約手数料を差し引きます。
既に再投資されて保有口数へ組み込まれた部分と、まだ再投資されていない部分を区別してください。分配金を加えるときに口数側でも数えてしまうと、二重計上になります。
ETF等は上場株式の評価に準じる
取引所に上場する証券投資信託の受益証券は、死亡日に解約する仮定で評価せず、上場株式の定めに準じます。通常は死亡日の最終価格と死亡月・前月・前々月の月平均額を比較し、休場日や権利落ち等があれば修正を確認します。
金銭分配期待権についても別の評価が必要になる場合があります。上場・非上場の違いや、分配の基準日と死亡日の関係を伝え、証券会社と税理士に確認してください。
証券会社に残高と相続税評価の資料を依頼する

資料を依頼するときは、「残高が分かればよい」だけでなく、相続税評価に使うことを伝えます。金融機関によって発行する証明書や記載項目が異なるため、手元の資料でどこまで確認できるかを見ていきます。
基準価額・口数・控除の内訳をそろえる
確認したいのは、死亡日時点の保有口数、適用する基準価額とその日付、未収分配金、留保額や手数料、控除対象の税相当額の有無です。外貨建てなら、評価通貨と円換算の資料も必要になります。
証明書に「参考評価額」とだけある場合は、解約費用等を調整済みかを確かめます。金融機関の担当者へ聞いた内容は、回答日とともに残しておくと計算の根拠を説明できます。
分配金の入金や郵便物から口座の漏れを探す
親がどの金融機関を使っていたか分からない場合、分配金の入金、定期的な積立の出金、運用報告書などが手がかりになります。親の財産を調べる手順と合わせて確認し、見つけた商品を一覧へ加えましょう。
分配金や売却益の税金を相続税評価と混同しない

相続税評価は死亡時点の財産価値を計算するものです。その後の分配金や売却益に関する所得税等は、別の時点・別の計算として確認します。相続税を納めたから、後の売却がすべて非課税になるわけではありません。
購入時の資料も相続人へ引き継ぐ
通常の課税口座で保有していた投資信託では、売却時の取得費は原則として親の取得費を引き継ぎます。相続税評価額へ自動的に更新されると考えず、取引履歴や口座の取得価額を確認してください。口座の種類等による別の取扱いにも注意が必要です。
相続税の評価のために、必ず解約しなければならないわけではありません。移管して保有を続けるか、売却して分けるかは、家族の合意や資金の必要額から検討します。
申告期限までの値動きと納税資金も見ておく
死亡後に基準価額が下がっても、その下落だけで死亡日時点の相続税評価を下げることはできません。申告・納付までの資金を確認し、納税のために売る場合は、売却に伴う税や手数料も分けて見積もりましょう。
よくある質問

1万口当たりの基準価額に保有口数をそのまま掛けますか
そのままでは単位が合いません。1万口当たりの基準価額を使う場合、保有口数を1万で割った数を掛けます。
投資信託なら3か月の月平均額から選べますか
一般の非上場投資信託へは、その比較方法を使いません。ETF等の上場商品は上場株式に準じるため、まず商品の分類を確認します。
評価額を調べるために実際に解約する必要がありますか
必ず解約する必要はありません。死亡日に解約等をしたという仮定で価額を調べ、相続後の売却や継続保有とは分けて判断します。