相続した株式が未分割のときの議決権 権利行使者の決め方と会社への通知

相続した株式が未分割の場合、各相続人が自分の法定相続分だけを自由に投票できるわけではありません。原則として権利行使者を定め、会社への通知を行います。
会社が認めれば家族間の決定を省ける、というものでもありません。会社法の手続き、共有者の間の決定、相続税評価で使う割合を分けて整理します。
- 未分割では株式が相続人間の準共有となり各自の株数に分かれない
- 権利行使者の決定は人数ではなく持分の価格の過半数が基本
- 会社への通知と税務上の株主判定は別々に確認する
未分割の株式は各自が法定相続分だけ投票できるわけではない

株主名簿だけで相続後の権限を決めない
父が持っていた株式を二人の子が相続し、分割が済んでいないとします。原則として各株式が二人の準共有となり、株数が半分ずつに分かれる状態ではありません。
株主名簿が父のままであっても、死亡により権利関係は変わっています。
親の名義で議決権を行使したり、後継者だから当然に全部行使できると判断したりしないでください。
遺言と取得経緯を先に確認する
誰が取得するかを指定した遺言等がある場合は、その内容と効力を先に確認します。
すべての相続株式が未分割の準共有になると決めつけることも適切ではありません。
株主名簿、定款、株式の種類、遺言や相続関係資料を用意します。譲渡制限株式に関する定款の定めなど、相続後に必要な会社手続きも確認します。
権利行使者を定めて会社へ氏名を通知する

原則として持分の価格の過半数が基準
会社法106条は、共有株式の権利行使者を一人定め、会社へ氏名等を通知する手続きを定めています。
権利行使者の指定は、原則として共有持分の価格の過半数で決めます。相続人が何人賛成したかだけでなく、各人の持分を確認する必要があります。
人数の多数決と持分の過半数は違う
例として、妻が2分の1、子二人が各4分の1の持分を持つ場合を考えます。子二人が同じ候補を支持しても合計は2分の1で、過半数には達しません。
妻一人でも2分の1にとどまります。誰が権利行使者になるかは、人数の多い側が自動的に決めるのではなく、共有持分を基準に協議します。
会社が同意しても共有者間の決定を省けるとは限らない

持分が2分の1ずつで意見が割れた例
会社法106条ただし書には、会社が権利行使に同意した場合の規定があります。しかし、共有者間の決定に反する行使まで、必ず有効になるわけではありません。
最高裁平成27年2月19日判決は、共有の規定に従わない行使は、会社が同意しても適法にならないとしています。
持分が2分の1ずつの二人が対立する場合、一方だけでは持分の過半数を満たしません。会社の同意を得ればその一人が自由に行使できる、と考えないでください。
総会前に会社と弁護士へ確認する
代表取締役や役員の選任などが迫る場合、誤った議決権行使は総会決議の争いにつながります。
権利行使者の指定と通知だけでなく、予定する議決の決め方も確認します。
相続人間の対立があるなら、総会の日程と議案、定款、持分関係を弁護士へ示します。会社側の担当者だけの了解で解決したと判断しないことが必要です。
議決権の行使と相続税の評価上の割合を分ける

株主名簿と遺産資料と評価明細を別々に準備する
未分割の非上場株式を評価する際、評価方式の判定では各相続人の従来の保有株式に未分割株式全部を加えて確認する取扱いがあります。
これは税務上の株主判定です。各相続人が未分割株式全部を単独で投票できる、という意味ではありません。
| 確認する問題 | 主な基準 |
|---|---|
| 誰が総会で権利を行使するか | 会社法106条と共有者間の決定 |
| 株式を最終的に誰が取得するか | 遺言や遺産分割等 |
| 未分割株式をどの方式で評価するか | 相続税の財産評価の取扱い |
会社の意思決定を止めない承継準備
分割が長引いても、相続税の申告期限は自動では延長されません。申告期限と未分割時の対応も並行して確認します。
生前の段階なら、親との相続の話し合いで、株式を誰へ集中させるか、ほかの財産をどう配分するかを考えます。
まず会社へ未分割であることを伝え、持分と予定議案を示してください。権利行使者の決定、通知、税務資料の準備を別の作業として進めます。
よくある質問

株式を半分ずつ相続したら各自が半分の議決権を使えますか
未分割の準共有であれば当然には使えません。権利行使者の決定と会社への通知等を確認します。
会社が認めれば相続人一人で全部投票できますか
会社の同意だけで常に適法になるわけではありません。共有者間の決定が民法の共有規定に従っているかも確認します。
相続税評価で全株式を加えて判定するなら全株式を行使できますか
できるという意味ではありません。税務上の評価方式の判定と、会社法上の権利行使は別です。