遺贈寄付の始め方 遺言の作成と税金の注意点

自分が亡くなった後、財産の一部を社会貢献に役立てたいなら、寄付先と財産を定めた遺言を準備する方法があります。金額の大小よりも、団体が受け取れる内容か、実行する人と費用を決めてあるかが大切です。
家族に希望を伝えるだけの場合と、遺言によって団体へ直接渡す場合では、手続きも税金も異なります。自分と家族の生活資金を確保したうえで、寄付先への確認から始めてください。
- 遺言で直接寄付する方法と相続人が後から寄付する方法の違い
- 寄付先の受入条件と家族の遺留分を確認する順序
- 不動産の遺贈で検討する税負担と遺言執行者の役割
遺言による寄付と相続した後の寄付は手続きが違う

遺言がなければ家族への希望だけでは実現を保証できない
遺贈は遺言によって財産を与えることです。自分の死後に団体へ渡す意思を法的に残すには、民法の方式に沿った遺言を作成します。エンディングノートは希望を伝える資料になりますが、それだけで遺言と同じ効力が生まれるわけではありません。
相続人が財産を取得してから自分の判断で寄付すれば、寄付をするのは相続人です。亡くなった人の希望に沿った行動であっても、直接の遺贈寄付とは税務や必要書類を分けて検討します。
特定遺贈と包括遺贈で引き継ぐ範囲が異なる
「預金のうち300万円を団体へ渡す」など財産を特定する方法と、「遺産の3分の1を渡す」など割合で指定する方法では、受け取る団体の立場が異なります。後者の包括遺贈では、相続人と同一の権利義務を負い、債務も関わります。
包括遺贈を受けない団体もあるため、希望する書き方を先に決めるのではなく、寄付先と専門家へ確認します。遺言の文言によって解釈が変わる場合があり、金額か割合かだけで形式的に判断しないことも必要です。
寄付先の正式名称と受入条件を先に確認する

団体の活動と財務や将来の受皿を調べる
寄付先は、普段使われる活動名ではなく、遺言に書く法人の正式名称や所在地まで確認します。活動内容、財務情報、寄付金の使途、将来団体がなくなった場合の扱いも調べると、自分の希望と受入条件の差を把握できます。
使途を細かく限定すると、団体が実行できず受け取れない場合もあります。希望する活動分野を伝えたうえで、受け入れられる表現と条件を相談してください。
不動産は現物と換価後の寄付を分ける
不動産は、そのまま団体へ渡す方法と、遺言執行者などが売却し費用を差し引いた現金を渡す方法があります。山林や共有持分など、活用や売却が難しい財産は受け入れない団体もあります。
登記事項証明書、利用状況、借入れや担保の情報を用意すると、団体が受入可否を検討しやすくなります。売れることや無税になることを前提にせず、税金と換価費用を含めた手取りで考えます。
家族へ残す財産と遺留分を見込んで金額を決める

自分の生活費と介護費を先に確保する
遺言は亡くなった時点で残る財産を対象にします。将来の医療費や介護費、住み替えに必要な資金を見込み、残高が変わっても家族への取得や寄付が実行できる内容に整えます。
特定の口座だけを指定すると、解約や金融機関の統合で内容が分かりにくくなる場合があります。財産の変化に応じて見直せるよう、定期的に遺言と財産一覧を照合しておきます。
遺留分の請求が寄付の実行に影響する
配偶者や子、一定の直系尊属には、遺言でも奪えない最低限の取得利益である遺留分があります。全財産を団体へ寄付すると、受け取った団体に遺留分侵害額の請求が向けられる可能性があります。
家族への説明だけで遺留分の権利が消えるわけではありません。誰が相続人になるかを整理し、寄付額と納税・費用を合わせて試算します。兄弟姉妹や甥姪には遺留分がない点も、家族関係によって判断が変わる理由です。
遺贈寄付の税金は財産と寄付先で変わる

法人への不動産遺贈はみなし譲渡課税を確認する
個人が含み益のある不動産や株式などを法人へ遺贈すると、時価で譲渡したものとして所得税が問題になる場合があります。寄付で売却代金を得ていなくても、申告と納税のための資金が必要になることがあります。
国や地方公共団体への寄付、一定の公益法人等への寄付についての非課税承認など、別の取扱いもあります。公益目的の団体ならすべて自動で非課税になるとは考えず、財産、相手方、承認手続き、納税義務を承継する人を税理士へ確認します。
相続財産を後から寄付する特例は期限と対象に条件がある
相続や遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限までに国、地方公共団体、一定の公益法人や認定NPO法人などへ寄付すると、相続税の対象にしない特例があります。相続人による寄付について、対象法人、取得した財産との対応、申告書への明細・証明書類の添付などを確認します。
相続した土地を売却して得た代金を寄付する場合などは、相続で取得した財産そのものの寄付と同じ扱いになるとは限りません。所得税の寄附金控除とも別制度なので、「寄付すれば税金が全てなくなる」とまとめないでください。
遺言執行者と費用の支払元まで決めておく

遺言があっても、金融機関への連絡や財産の引渡しが自動で終わるわけではありません。遺言執行者を定め、就任の意向、必要な権限、報酬、税金や換価費用をどこから支払うかを検討します。
公正証書遺言を利用する場合も、自筆証書遺言を使う場合も、団体への事前確認を先に行うと書き直しを減らせます。受入条件を確認した記録と財産一覧を基に、家族へ残す額と寄付する額の両方を整えてください。
最初の行動は、候補の団体へ「この財産をこの方法で寄付できるか」と尋ねることです。正式名称、受入方法、実行に必要な費用が分かった段階で、遺言の具体的な文章を専門家と詰められます。
寄付する財産と家族へ残す財産を整理する段階では、元気なうちに進める相続準備も確認します。遺言の内容と、実際の財産や契約の一覧を対応させておくことが大切です。
よくある質問

少額でも遺贈寄付はできますか
法律上一律の最低金額はありません。ただし、団体の受入条件や実行にかかる費用を先に確認してください。
家族に寄付してほしいと伝えるだけでよいですか
希望を伝えることはできますが、遺言と同じ効力はありません。死後に団体へ直接財産を渡す方法として、方式を満たす遺言と実行体制を準備します。
不動産を寄付すれば税金はかかりませんか
一律に非課税とは限りません。法人への遺贈ではみなし譲渡課税が問題になる場合があり、相手方や非課税承認などの条件を確認する必要があります。