父の死亡後に認知を求めるとき 相続への影響と分割後の請求

父に認知されないまま父が亡くなった場合でも、認知の訴えによって法律上の親子関係を確定できる可能性があります。訴えには原則として父の死亡日から3年という期間があるため、財産の交渉より先に死亡日と認知の有無を確認してください。
認知が認められれば相続にも影響します。ただし、遺産分割前なら協議への参加、既に分割等が済んでいるなら原則として価額の支払いというように、求める内容が変わります。
父の死亡後は認知の訴えの期限を先に確認する

死後認知を考える場合、まず自分の戸籍や父の戸籍から、既に認知されていないかを調べます。血縁があると家族から聞いていたことと、法律上の父子関係が成立していることは別です。
死亡を知った日と死亡日を分けて記録する
民法は、父または母の死亡日から3年を経過した場合の認知の訴えを制限しています。原則の起算点を『死亡を知った日』へ置き換えないでください。父の死亡日と、自分がそれを知った日を両方記録します。
最高裁は、父の死亡が3年1か月後に判明し、それまでは戸籍上その父の嫡出子とされ、認知の訴えを起こしても目的を達せなかった事案で、他に特段の事情がなければ死亡が客観的に明らかになった時から数えるとしました。死亡を知らなかっただけで一律に例外となるものではありません。3年が近い、または経過した場合も、戸籍の経過と死亡判明の資料をそろえて早急に弁護士へ相談してください。
相手方は亡くなった父ではなく検察官になる
父が生きていれば本人を相手に認知を求める問題ですが、死亡後は検察官を被告として認知の訴えを提起します。父の配偶者へ認知する旨の書面を頼めば終わる手続きではありません。
父の遺言で認知がされている場合なども別に確認します。戸籍、遺言、父の死亡に関する資料をそろえ、どの手続きが必要かを確かめます。
血縁関係を示す資料を集めて訴訟に備える

裁判では、父との血縁関係を示す資料が必要になります。父が亡くなってからは集めにくくなる記録もあるため、手元の資料を処分せず保管します。
DNAだけでなく手紙や交流の記録も残す
父母の交際や交流を示す手紙、写真、送金、連絡の履歴、生活の経緯が分かる記録などを整理します。何が証拠として役立つかは、その資料だけでなくほかの事実とのつながりから検討します。
DNA鑑定が問題になることもありますが、父の親族が協力してくれるとは限りません。血縁関係の資料を集めれば必ず認知が認められるという保証はなく、裁判でどのように立証するかを考えます。
親族の協力が得られない場合は弁護士へ相談する
親族との関係が悪い場合に、検体や個人情報を自分の判断で取得しようとするのは避けてください。協力が得られない事実も含め、適法に使える資料や手続きを弁護士へ尋ねます。
時系列を作るときは、父母の関係、出生、父との交流、死亡を知った経緯を分けます。記憶と書面で確かめられる事実を区別しておくと、相談で不足する証拠を見つけやすくなります。
認知が確定すると子として相続へ関わる

認知の効力は原則として出生時にさかのぼります。そのため、認知された子は父の相続について子としての立場を主張できるようになります。
出生にさかのぼる効力と第三者保護を分ける
ただし、認知の遡及効は第三者が既に得た権利を害することはできないとされています。過去の全ての手続きを、認知があっただけで無条件にやり直せるわけではありません。
認知の判決が確定した後は、戸籍への届出等も確認します。判決が確定すれば自分の氏や所属する戸籍まで当然に全て変わる、という問題ではないため、必要な届出を市区町村へ尋ねます。
婚姻中の子と相続分が違うと思わない
現在の法定相続分では、婚姻中の子と婚姻外の子という理由だけで取り分が半分になる仕組みではありません。古い資料の相続分を、そのまま現在の相続へ当てはめないでください。
実際の取り分には、ほかの相続人、遺言、生前贈与等の事情が関係します。子としての相続権があることと、特定の財産を必ず取得できることを分けて考えます。
ほかの家族関係も重なる場合は、再婚した親の相続と子の相続権で、前婚の子や連れ子との違いを確認できます。認知の有無と、親の婚姻歴を混同しないことが必要です。
遺産分割の前か後かで求める内容が変わる

相続について何を求めるかは、認知が認められた時点で遺産がどう扱われているかによって変わります。認知の手続きだけでなく、分割の進み具合も調べます。
分割前なら相続人として協議に参加する
まだ遺産分割等が済んでいなければ、子として協議に参加することを検討します。相続人の範囲、遺言、財産と負債を確かめ、ほかの相続人と分け方を話し合います。
これに対し、生前から認知されていた相続人が単に協議から外された場合は、最初から相続人だった人を欠く分割の問題です。分割後に死後認知で相続人になった場合と、当然に同じ扱いにはなりません。
分割後は原則として価額の支払いを求める
ほかの共同相続人が既に分割等をした場合、民法910条によって原則として価額による支払いを求めることになります。受け取った不動産を直ちに分け直す請求とは異なります。
請求額を計算する財産の範囲や評価時点、消滅時効の問題もあるため、分割協議書や処分の資料を確認します。相続税の評価額だけで金銭請求額まで決めないでください。
| 遺産の状況 | 主に確認する対応 |
|---|---|
| 父との親子関係が未確定 | 原則死亡日から3年の期間と認知訴訟の証拠 |
| 認知が確定し分割前 | 相続人として協議への参加を検討 |
| 認知が確定したが既に分割等が済んだ | 民法910条の価額請求と対象財産・期限 |
| 既に認知済みの子を除いて協議した | 相続人を欠く協議の効力。事後認知と区別 |
| 税務申告も済んでいる | 新相続人と既申告者の申告・更正等を別に確認 |
相続税の修正や請求の期限も並行して整理する

認知の訴えを出せる期間だけを管理して、相続に関するほかの期限を見落とさないことも必要です。価額請求や遺留分、税務の手続きは別々に確認します。
認知と遺留分と価額請求は別々の期限を持つ
遺言で他の人へ財産が渡っている場合は、子としての遺留分が問題になることがあります。認知の訴えを起こしたことだけで、ほかの全ての請求期間が自動的に延びるとは考えないでください。
新しく相続人が確定すると、相続税の申告や既に申告した人の更正等が必要になる場合もあります。誰のどの申告を修正するかは、認知や財産の取得が確定した経過とともに税理士へ確認します。
父の戸籍と遺言と分割書面を一緒に相談する
父と自分の戸籍、父の死亡日、遺言、既存の分割書面、父との関係を示す資料をまとめます。財産を受け取った人へ交渉する前に、父子関係を確定する訴えと相続上の請求を同じ日程表へ載せます。
最初は死亡日と認知の有無を確認してください。分割が終わっているから何もできない、死亡を最近知ったから必ず3年間ある、と自己判断せず、資料を示して相談します。
よくある質問

死後認知の3年は父の死亡を知ってから数えますか
原則は父の死亡日からです。戸籍上の父子関係など特別な事情の下で死亡が客観的に明らかになった時から数えた判例はありますが、死亡を知らなかっただけで一律に知った日から3年とは考えず、早急に相談してください。
父の配偶者が認めれば認知の裁判は不要ですか
家族の承諾だけで法律上の親子関係が確定するものではありません。死亡後は検察官を被告とする認知の訴え等、必要な手続きを確認します。
遺産分割が終わっていたら相続できませんか
直ちに権利がなくなるわけではありません。分割後に認知で相続人となった場合は、原則として民法910条の価額による支払いを求めることを検討します。