遺言書保管の通知対象者を選ぶとき 指定欄と変更届の確認

法務局の自筆証書遺言書保管制度では、遺言者の死亡後に保管の事実を知らせる「指定者通知」の対象者を選べます。相続人以外の友人も候補にできますが、通知を受けることと、保管された遺言を読む資格があることは別です。
誰を選ぶか迷ったら、知らせた後に何を頼みたいかを先に整理します。ここでは、子A、遺言に記載した遺言執行者B、相続人でも受遺者でもない友人Cという架空例で、指定欄と変更届を確認します。
- 通知先の役割と遺言を読む資格の違い
- 現行様式で氏名や住所を記入する際の確認
- 死亡後の通知の流れと住所変更等の届出
通知を受ける役割と遺言を読む資格を分けて候補を選ぶ

指定者通知は、保管されている遺言の存在に気付いてもらうための仕組みです。通知の対象者は3名まで指定できます。3名を必ず選ぶものではなく、誰に知らせれば次の手続きにつながるかで考えます。
この例のCは、連絡を受けてAへ知らせる役割を担う候補です。ただし、通知先に指定しただけでCが相続人や受遺者になったり、遺言書情報証明書を請求する資格を得たりするわけではありません。Bを通知先に選ぶ行為と、遺言本文で遺言執行者に指定する行為も区別します。
| 候補者 | 知らせた後に期待すること | 資格についての確認 |
|---|---|---|
| 子A | 保管の事実を知り、遺言の確認へ進む | 相続人であることを示す資料を確認 |
| 遺言執行者B | 遺言の確認と執行の準備をする | 遺言本文の記載と請求時の資格資料を確認 |
| 友人C | AやBへ保管の事実を連絡する | 指定者というだけでは閲覧等の資格は生じない |
連絡先が分かることに加え、相手がその役割を理解しているかも確かめます。住所を借りているだけの人や、家族へ連絡する方法を知らない人を選ぶと、通知が届いても次へつながらないおそれがあります。生前に保管の事実と連絡の順番を伝えておくと、届いた書面の意味を理解してもらいやすくなります。
指定欄の同意と氏名住所を資料に合わせて記入する

通知先の候補表をN01、本人から確認した住所等をN02、申請書や届出書の指定欄をN03として対応させます。N01に3人の名前があるだけでは設定は完了しません。法務省が案内する現行の様式で、指定者通知を希望する意思と必要な同意、対象者の情報を記入します。
複数人を指定するときは、対象者一人につき一枚を使う案内に従い、同じ用紙の空いた場所へ3人を詰め込まないようにします。申請する時点の様式と記載例を確認し、不明な欄は提出先に尋ねてください。
| 転記する内容 | この例で照合する資料 | 避けたい記入 |
|---|---|---|
| 通知を希望する意思 | N03の希望・同意に関する欄 | 対象者の氏名だけ書いて終える |
| 対象者の氏名等 | N01と本人に確かめた表記 | 旧姓や通称だけで推測する |
| 郵送先の住所 | N02の住所と部屋番号等 | 昔の住所や番地の省略 |
| 対象者ごとの用紙 | A・B・CとN03の各用紙 | 一人分の情報を別人の欄へ写す |
法務省は、通知先情報を正確に把握するため、対象者の住民票の写し等で確認することを勧めています。ただし、通知先の住所を確かめる参考にすることと、保管申請でその住民票を必ず添付しなければならないことは別です。必要な添付書類は現行の案内で確認します。
通知を受けた後にAやBが遺言の確認へ進みやすいよう、遺言者本人の氏名、本籍や最後の住所等、手続きで必要になる情報の所在も整理します。機微な資料を誰にでも配るのではなく、保管場所と相談先を必要な相手へ伝えます。
死亡を確認した後の指定者通知と閲覧後の通知を分ける

通知には、指定者通知と関係遺言書保管通知があります。指定者通知は、あらかじめ指定した人に、遺言者の死亡を遺言書保管官が確認した後で保管の事実を知らせるものです。死亡届を出したその日に遺言全文が指定者全員へ届く仕組みではありません。
| 通知 | きっかけ | この例で考える動き |
|---|---|---|
| 指定者通知 | 保管官が死亡の事実を確認したとき | 通知を受けたCがAやBへ連絡する |
| 関係遺言書保管通知 | 死亡後に相続人等が閲覧や遺言書情報証明書の交付を受けたとき等 | 他の関係相続人等にも保管の事実が通知される |
例えばCが先に指定者通知を受けたとしても、その書面だけを使ってCが自由に遺言全文を取得することはできません。AやBがそれぞれの資格を示し、必要な請求を行う流れを想定します。実際の交付では、関係を示す戸籍等をそろえる必要があります。
また、遺言者が外国籍の場合や、戸籍の全部事項証明書を発行できない場合など、戸籍担当部局との連携により死亡を把握できない場合には例外があります。法務省は、遺言書保管事実証明書や遺言書情報証明書の交付によって死亡を把握した場合に限って指定者通知を行う旨を案内しています。自分の事情でどのように死亡を確認するか、保管所へ相談してください。
通知が来ることだけに依存せず、家族等へ保管の事実を伝えておくことも備えになります。葬儀や相続の期限に関する手続きを、指定者通知が届くまで全て止めておくという予定にはしないようにします。
転居や候補者の変更を保管情報の変更届へ反映する

Aが転居した、Cとの連絡が取れなくなった、指定した人が先に亡くなったなどの場合は、通知が届く前提が変わります。保管したときの情報をそのままにせず、変更する欄と、変更対象者を確かめます。
| 起きたこと | 確認する手続き | 別の作業になること |
|---|---|---|
| Aが転居した | 通知対象者の住所等の変更 | 遺言本文の財産分配を変えることではない |
| Cから別の友人へ変更したい | 指定対象者の変更 | 新しい人が閲覧等の資格を得るわけではない |
| Bへの遺贈内容を変えたい | 遺言本文自体の変更方法を相談 | 通知先の変更届だけでは変わらない |
法務省の案内では、変更の届出は全国の遺言書保管所で行え、郵送も利用でき、手数料は不要とされています。実際の届出は最新様式と添付資料、提出方法を確認し、保管証などから対象となる遺言を特定して進めます。
変更が終わったら、N01の候補表とN02の連絡先も更新してください。古い候補表が家族の手元に残ると、法務局の登録と家族が理解している役割が食い違います。変更日と、保管所へ届けた内容の控えを一緒に保存します。
遺言を見つけた人が最初に行う確認は、自筆証書遺言の保管制度 法務局への申請と費用や通知も参考にしてください。
資料の確認や手続きの進め方に迷う場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

相続人ではない友人を通知先にできますか
指定者通知の対象者には、相続人等以外の人も指定できます。ただし、指定したことだけで閲覧や遺言書情報証明書の請求資格が生じるわけではありません。
死亡すると指定した人に遺言全文が届きますか
指定者通知は保管の事実を知らせるものです。遺言の内容を確認するには、資格のある人が必要な請求を行います。
通知先の住所だけを変えたいときも遺言を書き直しますか
通知先情報の変更届と遺言本文の変更は別です。住所等は所定の変更届で対応し、遺贈内容を変える場合は遺言本文の手続きを確認します。