家族信託の追加信託 対象外の預金と売却代金を分ける

家族信託を始めた後で、契約に入れていない親の定期預金が見つかることがあります。これを移す場合と、信託した不動産の家賃や売却代金を口座へ入れる場合では、確認する契約が違います。
入金先が同じだから全部「追加信託」とは決めません。お金の出所を分けてから、追加の合意、本人の判断、金融機関の手続きへ進みましょう。
- 対象外の財産と信託財産から生じた金銭を分ける
- 追加条項だけで本人の財産を自由に移せると考えない
- 意思能力と代理権と銀行の受付を別に確かめる
入れるお金がどの財産から生じたかを分ける

信託法16条は、信託財産の管理・処分等によって受託者が得た財産が信託財産に属することを定めています。信託したアパートから得た家賃や、その建物を売った代金は、もとの信託とのつながりを追います。
一方、親が自分名義で持ち、当初の信託対象に入れていない預金は、それだけで信託財産へ変わりません。次の金額は分類を考える架空例です。
| 見つかった金銭 | 出所の確認 | 先にする作業 |
|---|---|---|
| 親の定期預金300万円 | 当初目録に含まれない親の財産 | 新しく信託へ入れる合意と処分権限を確認 |
| 信託アパートの家賃12万円 | 信託財産の貸付けによる収入 | 賃貸明細と信託帳簿へ対応 |
| 信託した家の売却代金2000万円 | 信託財産の処分で得た金銭 | 売買契約・決済明細と信託資金へ対応 |
後ろ二つを新たな親の財産の追加と同じ手続きにするものではありません。ただし、契約に別の終了条件がある場合などは、その条件も確認します。売却後のお金を受託者自身の預金へ混ぜて使うことも避けます。
追加条項と変更方法を本人の意思表示へ対応させる

「追加信託」は、後から財産を信託へ入れる実務上の呼び方です。信託法に、この言葉だけであらゆる財産を一方的に追加できる包括的な権限が定められているわけではありません。
当初の財産目録、追加できる財産や方法を定めた条項、契約変更の条項を読みます。金銭を所定口座へ振り込む方法で追加合意をする設計もありますが、「追加できる」とあるだけで、子が親の預金を自由に解約・移転してよいとは限りません。
全員の再署名が必要かも契約と変更内容で分かれる
信託法149条は、信託の変更について原則の合意と別の方法を定めています。どの当事者の合意が必要か、契約で別段の方法を定めているか、受益者の利益への影響があるかを確認します。すべての追加で同じ人数の署名が必要とも、受託者だけで足りるとも一律にはいえません。
定期預金300万円の例なら、追加する財産、追加日、移す方法、受益者、本人に残す生活資金を具体化します。既存契約の当事者が誰かを確かめ、文面を作成した専門家へ追加の方法を相談します。
意思能力と代理権と銀行の受付を別々に確認する

民法3条の2は、意思表示の時に意思能力がなかった法律行為を無効としています。認知症という診断名だけで、すべての取引が当然に有効・無効と決まるものではありません。今回の追加の内容や影響を、本人が理解して意思表示できるかを確かめます。
本人の有効な意思表示ができない場合、子ども全員が賛成すれば代わりになるわけではありません。誰にどの代理権があるか、利益相反がないか、本人の利益に適うかを法律専門家へ相談します。後見人がいればどんな信託追加もできる、ということでもありません。
親の定期預金を解約する権限と、信託口口座で金銭を受け入れる条件も別です。金融機関へ、追加合意を示す書面、口座の使い方、必要な本人確認を事前に照会します。
たとえば三井住友信託銀行の民事信託サポートは、専門職を通した契約書案の確認や公正証書等の開設条件を定めています。これは同社商品の案内であり、全銀行の条件ではありません。開設条件の案内だけで、自分の追加が受付済みと考えないでください。
また、家裁の指示書に基づく後見制度支援信託は別の仕組みです。その「追加信託」の手順を、家族を受託者とする今回の契約へそのまま移しません。
財産目録と入出金と課税の確認を追加日にそろえる

追加を有効に実行できた場合は、合意の根拠、移した財産、実行日、送金元と入金先、追加後の財産目録をそろえます。300万円の定期預金の解約記録と入金記録をつなぎ、親個人の残高がどう変わったかも残します。
家賃12万円と売却代金2000万円は、原取引の収入・処分の記録へ対応させます。三つを足した2312万円を、同じ新規の追加契約額とするものではありません。信託の分別管理と帳簿へ、それぞれの原因が分かるよう記録します。
追加と同時に受益者を親から子へ変えるなど、無償で利益を移す内容があれば、贈与税等は別に確認します。「信託口座へ入れたから無税」とは決まりません。本人の財産を管理する目的と、税務上誰が利益を取得したかを分けます。
最後に、追加していない財産、実行が保留の財産、親の手元に残す資金を一覧へ残します。目録に予定として書いたことと、現実に有効な追加が終わったことを同じ扱いにしないようにしてください。
関連する基本事項は、家族信託は必要ないか 向かないケースと遺言や成年後見との違いも参考にしてください。
契約や手元の資料をもとに相談する場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

信託口口座に入るお金はすべて追加信託ですか
対象外の親の財産を新しく入れる場合と、信託財産から生じた家賃や売却代金を分けます。お金の出所と契約を確認します。
追加条項があれば認知症の親の預金も子が移せますか
条項だけで親の預金を自由に処分できるとは限りません。今回の意思能力、有効な代理権、金融機関の受付条件を別々に確認します。
信託へ追加すれば贈与税は必ずかかりませんか
信託だから一律に無税ではありません。受益者へ無償で利益を移す内容等があれば、取得者と契約条件に応じて課税を確認します。