家族信託で受託者を二人にするには 共同管理と後継指定の違い

家族信託の受託者を二人以上にすることはできます。ただし、二人を選べばどちらも自由に単独で管理できるわけではありません。原則は過半数で決めるため、二人なら二人の賛成が必要です。同時に管理させたいのか、一人が動けなくなった後の後継を決めたいのかを先に分けます。
- 共同受託は同時の管理、後継受託は交代後の管理という違いがある
- 決定の過半数と決定後の執行を区別する
- 契約前に銀行・登記と連絡不能時の運用を確かめる
同時に二人へ任せる共同受託と後継指定は違う

共同受託では信託財産は合有となる
長男と次男を今からともに受託者とするなら、共同で信託事務を処理する関係になります。信託財産は受託者の合有です。兄弟それぞれの個人財産として半分ずつ取得し、自由に使えるという意味ではありません。
| 設計 | 二人目が動く場面 |
|---|---|
| 共同受託者 | 二人が同時に受託者として関与する |
| 後継受託者の指定 | 先の受託者の任務終了等を受け、契約等に沿って引き継ぐ |
| 一人の受託者と監督の仕組み | 管理者を一人にし、報告や監督で別の人が関与する |
兄の長期不在に備えたいだけなのか、日常的に二人の判断を入れたいのかで設計は変わります。肩書きだけ二人にして、口座や連絡を一人へ集中させないようにします。
原則は過半数で決め保存行為は単独で決める

二人の意見が割れると過半数に届かない
80条の原則では、信託事務の処理は受託者の過半数で決めます。二人なら二人、三人なら二人の賛成が必要です。二人のうち一人の賛成は半数であり、過半数ではありません。
一方、保存行為は各受託者が単独で決められます。何でも保存行為として扱うことはできないため、大きな修繕や売却を一人で進める理由にしないでください。
決定後の執行と職務分掌を分ける
適法に決まった事務は、原則として各受託者がその決定に基づき執行できます。また、契約に職務分掌の定めがあれば、それに従い決定・執行します。契約の別段の定めもあるため、「全ての手続きに必ず全員署名」とは一律にいえません。
銀行口座と登記を契約前に確認する

共同受託が可能なことと銀行の受入れは別
法律上は複数にできても、利用したい金融機関がその契約や口座運用に対応できるかは別です。作成後に口座が開けないとわかる事態を避けるため、契約案の段階で確認します。
| 項目 | 質問の例 |
|---|---|
| 口座名義 | 共同受託者の契約を受け付けるか。必要書類は何か |
| 出金と送金 | 誰が何を提出し、決定をどう示すか |
| 不動産 | 信託登記と実際の売買で誰が関与するか |
| 一人の欠員 | 死亡・辞任等の際、どの手続きが必要か |
口座の名義人が一人に見える場合でも、契約上の受託者を一人に変更したことにはなりません。契約と金融機関の書類に食い違いがないか、作成を支援する専門家にも確認します。
役割と連絡不能時の扱いまで書面で設計する

管理を分けても記録と情報は共有する
家賃の管理を兄、修繕業者との連絡を弟へ分けるなら、誰が支出を決め、どこまで単独で動けるかを契約へ反映します。職務を分けたことで互いに帳簿を見なくてよいわけではありません。契約に沿った報告と記録の共有方法を決めます。
二人が対立したときや、一人と長く連絡が取れないときも想定します。単に不在だから残る一人が自由に売却できると考えず、後継指定、任務終了、必要な変更の方法を確認します。
信託を決める前に、共同受託と、一人の受託者に報告・監督を組み合わせる方法を比べてください。財産の数、日常の決済回数、兄弟の連絡の取りやすさから、管理が続く形を選びます。
関連する手順は、家族信託の受託者とは なれる人と財産管理の義務や交代への備えで確認できます。
よくある質問

受託者が二人なら一人の賛成で決められますか。
原則の過半数では二人の賛成が必要です。保存行為、契約の職務分掌や別段の定めは分けて確認します。
共同受託者はすべて一緒に手続きしますか。
決定と、その決定に基づく執行は別です。法律と契約の定めに加え、銀行や登記で必要な書類・関与者を確認してください。
二人目を決めれば後継者の備えも済みますか。
共同受託と後継の指定は同じではありません。一人の死亡や辞任後に誰がどの手続きで管理するか、契約で別に確かめます。
二人に任せたい理由を、日常の分担か、監督か、将来の交代かに分けて書き出してください。その目的と利用銀行を伝え、契約案の決定方法と実際の出金方法を確認します。