任意後見の受任者が亡くなったら 開始前と開始後の備え直し

任意後見を頼んだ相手が亡くなっても、その人の家族が当然に代理権を引き継ぐわけではありません。本人と受任者の委任関係は、受任者の死亡により終了します。まず任意後見監督人が選任される前か後かを確かめ、本人が新しい契約を結べる状態か、今の支払いを誰が支えられるかを確認します。
- 受任者の死亡と本人の死亡では必要な対応が違う
- 開始前は本人の判断能力に応じて新契約や法定後見を検討する
- 開始後は監督人・家裁へ連絡し管理の空白と登記を確認する
受任者の死亡は本人死亡の手続きとは違う

監督人選任前と選任後を確かめる
任意後見契約は公正証書で結び、本人の判断能力が不十分になった後、家裁による任意後見監督人の選任で効力を生じます。契約しただけの段階と、任意後見人がすでに代理をしている段階を分けます。
| 段階 | 確認すること |
|---|---|
| 監督人選任前 | 新しい契約を理解して結べるか。日常の支援も止まっていないか |
| 監督人選任後 | 監督人と家裁への連絡、財産・書類の所在、支援体制の再構成 |
故人の相続人が通帳や契約書を保管していても、それだけで本人のお金を動かせるようにはなりません。亡くなった受任者の相続手続きと、支援を受ける本人の財産管理は区別してください。
開始前なら本人の判断能力に応じて備えを作り直す

新しい相手との公正証書契約を検討する
本人に契約内容を理解する力があるなら、新たな候補者と任意後見契約を結ぶことを検討します。以前の契約書に家族が別の名前を書き加えるだけでは代わりません。公証役場へ、以前の契約と死亡の事実、新しい候補を伝えて相談します。
判断能力が低下していれば法定後見を相談する
すでに新しい契約を結べない状態なら、契約の作り直しだけでは対応できません。後見・保佐・補助のどの支援が必要かを、生活状況や医師の資料を踏まえて家裁等へ相談します。
任意後見以外の財産管理委任や見守りを併せて頼んでいた場合は、それぞれの契約が止まる影響も確認します。本人の施設費、家賃、医療費の支払期限と、現在動かせる口座を整理しておくと、急ぐ支援が見えます。
開始後は監督人と家庭裁判所へ早く連絡する

口座や支払いの継続と財産引継ぎを確認する
開始後なら、まず任意後見監督人と、事件を扱う家裁へ死亡を知らせます。通帳、印鑑、契約書、直近の報告、預り金等の所在と、未払いの請求を確認します。家族が故人の代理権を使い続けるのではなく、誰がどの権限で引き継ぐかを確かめます。
受任者死亡時の急迫の事情については民法654条の規定がありますが、故人の相続人が後見業務全体を続けられるという意味ではありません。必要な応急対応と今後の管理者を、監督人・家裁・関係先と確認します。
終了登記と新しい支援を分けて準備する
契約終了の登記手続きと、本人の新しい支援体制は別です。任意後見監督人が欠けた場合の補充と、任意後見人そのものの死亡を混同しないでください。家裁が同じ契約の後任を自動的に補充すると考えず、現存する他の契約の有無や法定後見の申立て等を個別に検討します。
代替体制は現行制度で実行できるか確認する

後継候補の記載だけで代理権が生じるとは考えない
元気なうちに見直すなら、受任者の年齢や健康状態だけでなく、死亡・長期入院に備えた連絡先と書類の保管先を決めます。複数の人との契約などを検討する場合も、各人がいつ何の権限で動くか、現行制度で実行できる設計を公証人等へ確認します。
単に「次は長女へ頼む」とメモしただけで、公正証書の契約や監督人選任等に代わるわけではありません。また、成年後見制度等の改正が公布されていても、未施行の仕組みを現在の備えとして扱わないようにします。
本人の希望、契約の内容、判断能力、今すぐ必要な支払いを一緒に示すことが、新しい支援を選ぶ出発点です。
関連する手順は、任意後見制度とは 契約と開始の手続きや家族信託との違いで確認できます。
よくある質問

受任者の子がそのまま任意後見人になりますか。
当然には引き継ぎません。受任者の死亡で委任関係は終了するため、開始前後と本人の状態に応じて新しい契約や法定後見等を検討します。
監督人選任前なら受任者名を書き換えればよいですか。
家族の書き換えでは代わりません。本人が契約を理解できるか確認し、新しい相手との公正証書契約を公証役場へ相談します。
開始後に亡くなったら誰へ連絡しますか。
任意後見監督人と担当家裁へ早く連絡します。財産・書類の引継ぎ、支払いの空白、終了登記と今後の支援体制を分けて確認してください。
任意後見契約と最新の登記事項、監督人の連絡先を確認し、次に支払いが必要な費用を控えてください。本人の判断能力と合わせて、どの支援を急ぐかを相談します。