贈与したお金を返してもらうには 取消しの条件と贈与税の扱い

一度贈ったお金を返してもらっても、それだけで最初の贈与税まで消えるとは限りません。
返還を求められる法律上の理由と、税務上その贈与をなかったものとして扱えるかは、別々に確認します。
親が子へ振り込んだ後で取りやめるなら、先に贈与契約、振込記録、返したい理由を整理してください。
返金日だけを調整したり、後から貸付の書面を作ったりしても、元の事実は変わりません。
- 口約束だけの未実行の贈与とすでに渡したお金では解除の扱いが違う
- 合意で返金しても元の贈与税が残ることがある
- 取消しの経緯と使用状況と申告書を残して返還と税務を相談する
返金の前に贈与の成立と返還する理由を整理する

未実行の約束と振込後を分ける
贈与は、あげる人ともらう人の合意による契約です。契約書がないから贈与ではない、とはいえません。
反対に、振込があっても、立替金の精算や本当の貸付であれば、そもそも贈与ではない場合があります。
まず「いくら渡すと合意したか」「書面があるか」「いつ振り込んだか」「何に使ったか」を日付順に書き出します。
税金が想定より高かったという事情と、詐欺や重大な勘違いによる契約だったという事情も、同じ理由として扱わないようにします。
貸付や立替だったかも記録で確かめる
貸付だったと主張するなら、当初の返済約束や実際の返済、資金を渡したときのやり取りが判断材料になります。
贈与税を避けるため、後日になって契約日をさかのぼらせることは適切ではありません。
贈与の成立を確かめる段階では、親の財産の資料を整理する方法も参考になります。返金の相談には、資金の出所と移動を説明できる通帳や明細を持参します。
書面の有無と取消しの理由で返還の可否が変わる

口約束でも履行済みの部分は自由解除できない
民法550条では、書面によらない贈与は各当事者が解除できる一方、すでに履行が終わった部分を除いています。
現金の引渡しや振込が終わった後は、書面がないという理由だけで、一方的に返還を求められるとは限りません。
| 状況 | 確認すること |
|---|---|
| 書面のない贈与でまだ渡していない | 民法550条による解除の対象か |
| 書面を作成した 又は既に渡した | 双方の合意や別の取消し・解除の理由があるか |
| 詐欺や錯誤などが疑われる | 法的な成立要件と証拠を満たすか |
当事者双方が合意すれば、契約を解除して返還すること自体は検討できます。ただし、民事上返せることと、税務上最初の贈与が課税されないことは別です。
錯誤や詐欺等は成立条件と証拠が必要
詐欺、強迫、錯誤などによる取消しには、それぞれ法律上の条件があります。
単に後悔した、家族の関係が悪くなったというだけで、必ず当てはまるわけではありません。
相手が返還に応じない場合や取消しの理由自体が争われる場合には、送金や書面の内容を弁護士へ提示します。
返還を求める前に証拠を保全し、事実と異なる理由を書面に残さないことが大切です。
合意で返金した場合も最初の贈与税を確認する

財産の返還だけでなく利益や申告の状況も確認する
税務では、法定の取消権などに基づく取消しと、当事者の合意による解除を分けて扱います。
合意で取りやめた場合は、原則として最初の贈与に対する課税が残ります。
例外的な取扱いでは、まず贈与税の申告期限までに取消し等を行い、その事実を返還等で確認できることが必要です。
さらに、贈与財産の処分・担保設定・差押え等の有無、関連する税務申告や届出、果実の受領と引渡しの状況を確認します。
条件を満たすだけで自動的に非課税になるわけではなく、税務署長の判断も関わります。
例えば、贈られた200万円で車を買い、後に自分の別の預金から200万円を返したとします。
手を付けていない財産をそのまま戻した状況とは違います。元の贈与と使用の経緯を隠さず伝えてください。
返還行為と新しい贈与を混同しない
贈与の取消しに伴う財産の返還は、それ自体を当然に逆向きの新たな贈与として課税するものではありません。
「往復したので必ず二重の贈与税になる」との説明にも注意が必要です。
ただし、取消しに伴う返還なのか、別の目的で新たに渡したお金なのかは、事実関係から確認します。
解除の合意書だけでなく、返還の振込記録や収益の精算内容も保管してください。
返金前に経緯を残し申告済みなら更正の請求を確認する

日付をさかのぼった書面を作らない
相談時には、当初の契約、送金から返還までの明細、取消しを求める理由、財産を使ったかどうか、税務申告の状況を一つにまとめます。
家族間でのやり取りも、削除せず元の状態で残してください。
税金の見込み違いを理由に課税方式まで自由に選び直せるわけではありません。
特に相続時精算課税を選択した場合は、一度選択した後の扱いと控除も併せて確認します。
申告期限までに税務の結論が出ない場合
贈与税を申告・納付済みで、取消しによって課税関係が変わると認められる場合は、更正の請求などの手続きが問題になります。
法定取消し等の後発的な理由には、理由が生じた日の翌日から2か月以内など、別の請求期限にも注意が必要です。
返金が済めば自動的に還付される制度ではありません。請求できる理由と期限を税務署に確認してください。
贈与税の申告期限が迫っているなら、取消しの協議中であることも税理士や税務署へ伝えます。
返金すれば申告不要と思い込まず、今ある記録から申告と返還の順序を決めてください。
よくある質問

同じ年のうちに返せば贈与税はかかりませんか
同じ年に返すだけで非課税になるわけではありません。取消しや解除の理由、返還と利用の状況、税務上の取扱いを確認します。
契約書がなければ振込後でも一方的に取り消せますか
書面がなくても、すでに履行した部分は民法550条の自由な解除の対象外です。合意や別の法的理由があるかを確かめます。
返金すると逆向きにも贈与税がかかりますか
取消しに伴う財産の返還そのものを、当然に新たな贈与として扱うわけではありません。ただし、最初の贈与への課税が残ることがあります。