親の借金を肩代わりすると贈与税は誰にかかるか 返済義務と精算の確認

親の借金を子が代わりに返すときは、銀行への支払いと、親子間に残る返済義務を分けて考えます。無償で肩代わりする場合は、利益を受ける親側の贈与税が問題になります。
一方、立替えや保証債務の履行なら、親への請求権がどうなるかも確認が必要です。60万円を払う仮定例で、契約、弁済、家族の精算をつなぐ資料を整理します。
- 肩代わりで利益を受ける人と税務の関係
- 立替えや保証と資力喪失の例外の区別
- 同年贈与の集計と親子間の精算記録
銀行へ払うお金が誰の債務を減らすかを確認する

子が自分の資金で親の銀行借入れを無償で返す場合、利益を受けるのは、返済してもらった親です。子が銀行へお金を出したというだけで、子に贈与税がかかるという関係ではありません。
相続税法8条は、対価を払わず、又は著しく低い対価で、債務の免除、引受け、第三者弁済の利益を受けた場合に、その利益を原則として贈与により取得したものとみなします。家族の借金だから対象外とはいえません。
例として、父の銀行借入れ60万円を、子が自分の口座から銀行へ支払うとします。支払前に、銀行に対する債務者、子の保証の有無、父が子へ返す義務を残すかを確認してください。
| 支払いの関係 | 分けて確認すること |
|---|---|
| 父の債務を子が無償で返す | 父が受ける利益と贈与税 |
| 子が立て替え父が返す | 本当に残る返還義務と返済実態 |
| 保証人の子が保証債務を履行する | 保証契約と求償権、その後の精算 |
立替えや保証なら親子間に残る請求権を調べる

「立替え」と呼んだだけで、無償の援助と異なる扱いが確定するわけではありません。父が子に返す約束があり、実際に返せるか、返済が行われているかを確認します。
保証人である子が支払った場合も、銀行に対する保証責任と、父に対する求償等の権利を別に記録します。元の銀行借入れが減ったことだけを見て、親子間にも何も残っていないと決めないようにします。
| 資料 | 例の60万円に対応する確認 |
|---|---|
| G01 借入・保証等の契約 | 父の債務と子が負う責任の範囲 |
| R01 銀行への弁済記録 | 子がいついくら支払ったか、何の債務か |
| R02 親子間の返済・精算資料 | 返還や求償の根拠、期日、実返済、残額 |
子が支払っても父への請求権が実際に残る場合と、子が最初から返済を求めず負担する場合は同じではありません。求償権があるが回収が難しい場合、その後に請求を免除する場合も、支払時点と免除時点を分けて税務・法律の担当者へ示します。
借用書を新しく作る場合も、実際にはなかった過去の約束を後付けしません。すでに支払っていて記録が少ないなら、当時の連絡と銀行明細を集め、何が確認できないかを伝えます。
資力喪失の例外を生活が苦しいことだけで判断しない

親に資金がない場合には、資力喪失による例外に当たるかを確認する余地があります。ただし、今月の現金が足りない、年金暮らし、無職という事情だけで、一律に贈与税がかからないとは判断できません。
法定の例外は、債務者が資力を喪失して弁済が困難な場合の債務免除や、扶養義務者による債務の引受け・弁済などです。対象となるのは、弁済することが困難である部分の金額で、肩代わりの全額が当然に除かれるという意味ではありません。
家族は、父の預金、不動産などの資産、他の借入れ、収入と支出、換金や回収の見込みが分かる資料をまとめます。子が払った60万円だけを見せるより、父がどの部分を弁済できない状況だったかを説明できる状態にします。
税務署や税理士へは、銀行への支払日と、その時点の資産・負債の状況を伝えます。未確認の不動産価格や残債を都合よくゼロにして、非課税の結論を先に作らないようにしてください。
課税対象の利益は親が受けた同年贈与と集計する

無償の肩代わりが贈与に当たり、通常の暦年課税で計算する場合は、親がその年に受けた他の課税対象贈与も合計します。110万円は、払う子一人ごとの枠ではありません。
仮に父が、子Aから債務弁済の利益60万円を受け、同じ年に子Bから通常の現金80万円も贈られたとします。いずれも非課税等に当たらず、他の贈与や税額控除等はない設定です。
| 計算 | 仮定額 |
|---|---|
| 父が受けた贈与の合計 | 60万円+80万円=140万円 |
| 暦年課税の基礎控除後 | 140万円-110万円=30万円 |
| 一般税率による贈与税 | 30万円×10%=3万円 |
子から親への贈与には、18歳以上の子や孫が直系尊属から受ける場合の特例税率を当てはめません。この例では一般税率を使っています。
60万円だけなら常に無税と覚えるより、父の年間受贈一覧を作る方が実態に合います。資力喪失の例外や実際の返済義務がある場合は、先にその判定を行い、対象になる利益を集計してください。
支払日と残った請求権を家族の精算記録にする

銀行の完済証明は、銀行に対する債務がどうなったかを示す資料です。それだけで親子間の立替金や求償権の精算まで済んだことにはなりません。
支払日、元の債務、支払者、父への請求の根拠、父の返済、免除の有無、未確認事項を一枚の表にします。後に子が「もう返さなくてよい」と決めた場合は、その日と残額を別に追加します。
また、生活費の援助の非課税と、過去の借金の一括返済をそのまま同じにしないようにします。銀行からの請求、親子間の合意、父の資産状況をそろえ、支払いとその後の精算を一緒に確認しましょう。
相続に伴うほかの確認は、贈与税の計算方法と税率表 一般と特例の違いを金額別に比較も参考に、今回の申告資料と分けて整理してください。
よくある質問

親の借金を子が返すと子に贈与税がかかりますか
無償の肩代わりで利益を受ける親側の贈与税を検討します。子自身の保証責任や親への求償権がある場合は分けて確認します。
親に返すお金がなければ贈与税はかかりませんか
生活が苦しいだけでは決められません。資力喪失と弁済困難な範囲、扶養義務者等の条件を資料で確認します。
家族間で立替えと書いておけばよいですか
名称だけでは足りません。実際の返還義務、返済能力や返済の記録まで整えます。