夫婦間の口座移動で贈与税はかかるか 家計管理と財産移転を分ける

夫婦の口座間でお金を移しただけで、すべてが贈与になるわけではありません。生活費を預かって支払うのか、相手が自分の財産として自由に使えるよう渡すのかで、確認する事実が変わります。
「夫婦のお金だから」「後で戻すから」という説明だけでは、貯蓄の所有者は決まりません。送金前に、誰が得たお金を、何のために、誰の財産として置くのかを整理します。
- 家計の支払いを預かることと、財産を贈ることの違い
- 生活費として使うお金と貯蓄・投資へ残すお金の扱い
- 後の相続でも資金の出し手を説明できる記録
口座の名義を変えることと贈与の成立は同じではない

まず通帳の名義と、実際のお金の出し手を分けます。夫が得た給与を妻の口座へ入れた場合でも、妻が家計を管理するために預かっているのか、夫婦が贈与に合意したのかを確かめる必要があります。
原資と所有者の合意を確かめる
贈与は、一方が無償で渡す意思を示し、相手が受け取る合意によって成立します。送金履歴に加え、使い道を誰が決めていたか、通帳や暗証番号を誰が管理していたか、その後に誰のために使ったかが説明材料になります。
預かりと贈与を都合よく選び直さない
たとえば夫の医療費30万円を妻が立て替え、夫が同額を返したのであれば、支払いと精算の関係を残します。一方、妻が自由に使う資産として300万円を渡す合意をしたなら、単なる立替精算として扱うことはできません。いずれも説明用の例で、名称だけで結論を変えるものではありません。
生活費の振替と将来の貯蓄への移転を分ける

扶養義務のある夫婦の間で、通常必要な生活費を必要な都度受け取り、その費用へ直接使う場合は、贈与税がかからない扱いがあります。食費、家賃、医療費など、家庭の暮らしに必要な支払いと対応させます。
必要な都度使う生活費の条件
口座に「生活費」と書いて入金すれば、金額や使い道を問わず非課税になる制度ではありません。送金額、実際の支出、その世帯の事情を合わせて考えます。
| 資金移動の目的 | 残したい資料 | 注意する点 |
|---|---|---|
| 家賃等の支払いを預ける | 振込と請求書・家計の支出記録 | 支払いに使ったことを対応させる |
| 配偶者の貯蓄を増やすため渡す | 贈与の合意、入出金記録 | 生活費の非課税を当然には使えない |
| 一時的に管理を任せる | 預かる目的、使途、精算の記録 | 名義だけで配偶者の財産と決めない |
預金や投資へ残すお金は別に判定する
生活費として受け取ったお金でも、使わず預金したり株式を購入したりした部分まで、生活費という理由だけで非課税にはなりません。余ったお金が多いときは、今後の送金額だけでなく、過去の残高が誰の財産なのかも確認します。
贈与する額は受け取る人の年間合計で確認する

配偶者の財産として贈ると決めたお金は、受け取る人の贈与税の対象として整理します。暦年課税の基礎控除110万円は、受贈者が1月1日から12月31日までに贈与を受けた財産の合計に対する枠です。口座や贈与者ごとに増える枠ではありません。
夫婦の貯蓄にも一律2000万円の控除はない
結婚して20年以上の夫婦に認められる贈与税の配偶者控除は、居住用不動産や、その取得資金などの要件がある特例です。普通預金を老後の貯蓄として渡すだけで、一律に2,000万円まで非課税になるわけではありません。適用には申告も必要です。
日付と合意と口座の記録をそろえる
受け取った日、金額、出し手、目的と合意内容を記録し、同じ年の他の贈与も集計します。契約書があることだけで実態に反する説明が通るわけではなく、送金後の管理も一致している必要があります。
相続になったときにも説明できる資金表を残す

家計管理として預かっていたお金が夫の財産であれば、夫が亡くなったときに妻名義の口座に残っていても、夫の相続財産かどうかの確認が必要です。「贈与税がかからなかったから、妻自身の財産」という結び付け方はできません。
名義預金との違いは記録で確かめる
口座ごとに、残高だけでなく給与の入金元、夫婦それぞれの持ち込み資金、家計の支払い、贈与の有無を一覧にします。資金が長年混ざっている場合は、分からない部分を推測で埋めず、そのまま税理士へ示してください。
最初の作業は、移そうとしているお金の目的を一行で書き、通帳の入出金と支払い資料を並べることです。すでに移動済みなら、日付をさかのぼって契約を作るのではなく、当時の事情が分かる資料を集めます。
関連する確認:名義預金は相続税の対象か 判断の基準と申告前に確認する資料。
よくある質問

夫婦で使う共同口座なら贈与税はかかりませんか
共同で使う呼び名だけでは決まりません。口座の資金を誰が出し、誰の財産として管理・使用しているかを確認します。
生活費の残りを貯金しても非課税ですか
使わずに預金や投資へ残す部分まで、生活費を理由に当然に非課税とはできません。原資と所有者の合意、使途を分けて判定します。
いったん戻せば贈与はなかったことになりますか
返金だけで一律に取り消せるとは限りません。当初の合意や管理、返金の事情を確認し、申告が必要かも含めて税理士へ相談してください。