相続財産が被災したときの相続税 期限前後の減免

相続した建物が火災や水害で被害を受けたとき、相続税の負担を軽くできる場合があります。ただし、損害額と同額の税金が戻る制度ではなく、被害の規模と災害の時期によって方法が分かれます。
最初に並べるのは、申告書を提出した日だけでなく、法定申告期限と災害の日です。通常の相続後の被災について、保険金を差し引いた損失の判定から申請までを具体例で整理します。
- 災害の日を法定申告期限の前後で分ける
- 保険控除後の損失を二つの10%基準で比べる
- 財産価額の控除と未納税額の免除を区別する
申告した日より法定申告期限と災害の日を並べる

相続税の申告書を早めに提出した後でも、法定申告期限前に災害が起きたなら、期限前の被害として検討します。「申告済みだから期限後」とは判断しません。適用を受ける人に関係する期限の延長等がある場合も、その取扱いを税務署へ確かめます。
| 説明用の日付 | 法定期限との関係 |
|---|---|
| 父が2026年1月10日に死亡し、同日に相続開始を知った | 通常の申告期限を11月10日と仮定 |
| 8月31日に申告し、9月15日に被災 | 申告済みでも法定期限前の被害 |
| 別の例として11月20日に被災 | 法定期限後の被害。未納税額等を確認 |
精算課税の贈与後災害や土地の特例を混ぜない
相続時精算課税で生前に贈られた土地建物の災害特例や、特定非常災害に関する土地の評価は、今回扱う通常の相続後の災害減免とは別に確認します。以前読んだ別制度の申請期限を、そのまま使わないでください。
保険金を引いた損失で二つの10%判定をする

減免の対象となる被害規模は、次のいずれかです。一つは、相続税の課税価格の基礎となった財産の価額から債務を控除した価額に対して、被害部分が10%以上となる場合。もう一つは、その基礎となった動産等の価額に対して、動産等の被害部分が10%以上となる場合です。
被害部分の価額からは、保険金や損害賠償金等で補填される分を除きます。以下は一人の取得財産についての説明用の仮定で、対象となる動産等は3000万円の建物だけ、保険金200万円は確定しているものとします。
| 計算の対象 | 仮定の金額と割合 |
|---|---|
| 取得財産と債務 | 財産1億円−債務2000万円=8000万円 |
| 補填後の被害 | 被害500万円−保険金200万円=300万円 |
| 全体の基準 | 300万円÷8000万円=3.75%で10%未満 |
| 動産等の基準 | 300万円÷建物3000万円=10%で基準を満たす |
全財産を分母にすると10%に届かなくても、動産等の基準を満たす場合があります。家族全員の遺産を一括して比べず、適用を受ける人の取得財産と被害を対応させましょう。
動産等には土地や現金をそのまま入れない
ここでいう動産等は、金銭・有価証券を除く動産、土地と土地上の権利を除く不動産、立木です。建物以外の家財なども対象となるなら、その価額を無視して建物だけを分母にしないでください。
期限前は課税価格の計算へ被害額を反映する

法定申告期限前の被害では、適用要件を満たす被害部分の価額を控除して課税価格を計算します。先の単純な仮例で他の調整がないなら、8000万円から被害部分300万円を控除し、7700万円とする考え方です。相続税額そのものを300万円引く計算ではありません。
実際の税額は、他の取得財産、債務、法定相続人、各種特例等も含めて再計算します。すでに申告書を提出している場合は、被害の資料と提出済み申告書を示し、どの手続きで反映するかを税務署へ相談します。
期限後の免除は災害後に納期限が来る税額が対象
法定申告期限後は、災害のあった日以後に納付すべき相続税額のうち、補填されなかった被害部分に対応する金額の免除を検討します。延納しているなら各回の納期限と残税額を確認しますが、残額全部を免除するという意味ではありません。
延滞税などの附帯税や、災害の日にすでに滞納している税額は対象に含まれません。すでに納付した相続税が、被災を理由に一律に還付される制度とも区別してください。
被害写真と保険資料を添え申請の期限を分ける

期限前の価額計算と期限後の免除承認申請は、提出するものと提出時期が異なります。国税庁の手続案内では、災害減免法6条の被害部分の価額計算等は相続税等の申告期限まで、同法4条の免除承認申請は災害のやんだ日から2か月以内とされています。
| 準備する資料 | 対応させる内容 |
|---|---|
| 被害写真・罹災証明等 | 災害の日、被害を受けた財産と範囲 |
| 修理見積等の被害算定資料 | 被害部分の価額と算定の根拠 |
| 保険会社の支払通知等 | 補填額と対象となる損害 |
| 申告書・納付や延納の資料 | 申告期限と、期限後なら対象となる納期限・税額 |
写真や修理費の総額だけでは、相続した財産のどの部分の被害か分からない場合があります。建物の表示や保険契約、算定明細を対応させ、必要な書類を納税地の税務署へ確認してください。
保険金が未確定なら未確定のまま相談する
申請期限までに保険金が決まらない場合は、請求中の金額と支払見込、確定予定を分けて伝えます。保険金を受け取っていないから補填額はゼロ、と自己判断せず、期限内の申請と後の取扱いを相談しましょう。
制度の基本は、相続税の更正の請求とは 5年と4か月の期限や還付の必要書類も参照してください。
財産や申告について相談する場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

申告書を出した後に被災したら期限後の減免になりますか
実際の提出日だけでは決まりません。法定申告期限前の被害であれば、申告書を提出済みでも期限前の取扱いを検討します。期限の延長等がある場合も税務署へ確認してください。
全財産の10%未満の被害なら対象外ですか
必ずしも対象外ではありません。保険等の補填後の被害について、全体の基準に加え、動産等の価額に対する10%以上の基準を満たすかも確認します。
損害額と同額の相続税が免除されますか
同額の税額控除ではありません。期限前は被害部分を控除した課税価格の計算、期限後は対象となる未納税額のうち被害に対応する金額の免除を、それぞれ検討します。