代表取締役が亡くなったら 会社を止めない選任と変更登記

代表取締役が亡くなっても、株式会社が当然に消滅するわけではありません。ただし、子が株式を相続しただけで代表者になれるわけでもなく、会社を代表する人を適切な手続きで確保する必要があります。
会社の定款と登記を確認し、残る取締役や株主の状況に応じて後任の選任・選定を進めます。給与や決済が迫っているときは、その対応を相続手続きの完了まで待たず、専門家と並行して整理してください。
会社の財産と亡くなった代表者の財産を分ける

会社名義の預金、不動産、契約は会社の財産です。亡くなった代表者の個人預金や株式と一つにまとめて、遺族の判断だけで使ったり分けたりすることはできません。
代表者の死亡で取締役の地位は終了する
株式会社と取締役等の関係には委任の規定が適用され、死亡により本人の地位は終了します。会社の実印を持っている、社長の長男である、という事情だけで代表権が生じるわけではありません。まず現在の代表者と権限を確認します。
相続人になっても代表権は自動で移らない
相続の対象となる株式は、会社の意思決定を左右する権利です。一方、取締役や代表取締役になるには選任・選定の手続きが必要です。株を受け取る予定の人を社長と呼んで業務を任せる前に、決議と就任の手順を整えます。
会社と個人の財産を分けたうえで、個人側は親の預貯金や不動産の調査を進め、会社の帳簿だけで相続財産が全部判明したとは考えないでください。
定款と登記事項証明書で後任を選ぶ機関を確認する

同じ株式会社でも、取締役会を置く会社と置かない会社では、代表者を決める仕組みが違います。履歴事項全部証明書と定款を並べ、取締役の人数や現在の欠員も調べます。
取締役会がある会社とない会社を分ける
取締役会設置会社では、原則として取締役会が取締役の中から代表取締役を選定します。取締役そのものを新しく選ぶ必要があれば、株主総会の決議等も検討します。代表者の選定と取締役の選任を、同じ意味で使わないことが大切です。
取締役が残っていない場合は裁判所への申立ても検討する
取締役会非設置会社では、各取締役の代表が原則となる一方、定款や株主総会、定款に基づく互選で代表者を定める場合があります。取締役が一人も残らないなど、通常の決議が難しいときは、一時役員等の選任を裁判所に求める必要があるか弁護士に相談します。
株式を誰が行使するか確認して決議を進める

亡くなった社長が株式を多数持っていた場合は、役員を選ぶ側の権利も確認します。遺言、株主名簿、株式数、相続人の範囲を調べることで、必要な決議を誰が行えるかを判断します。
共有株式の権利行使者と会社への通知を確認する
未分割の株式が共有となる場合、会社法106条により、原則として権利を行使する一人を定めて会社へ氏名等を通知することが必要です。会社の同意に関する例外もありますが、共有者間の意思決定や権利行使の方法を省略してよいという意味ではありません。
共有株式の権利行使者が必要になる場合
遺産分割が終わるまで一切動けない、と決めつける必要はありません。ただし、相続人一人が他の人を無視して全株の議決権を使うこともできません。会社の機関設計と株式の権利関係を弁護士・司法書士へ同時に伝え、可能な手順を確認します。
死亡と後任就任を登記して取引先の届出へ進む

後任を決めたら、死亡による退任と新任者の就任等の登記を進めます。会社法上、登記事項に変更が生じた場合の登記は、原則として本店所在地で2週間以内です。
変更事由ごとの登記期限と添付書類を確認する
死亡日、決議日、就任日を別に記録し、死亡を証する書面、議事録、就任承諾書、本人確認や印鑑に関する書類などを確認します。機関設計や選定方法で添付が変わるため、一般の辞任用ひな形を死亡退任へそのまま使わないでください。
金融機関と給与や許認可の届出を分ける
銀行には代表者の変更と支払予定を連絡し、どの証明で手続きできるかを尋ねます。社長の死亡で法人の口座が必ず自動凍結されるとは限りませんが、権限確認のため取引に制限が出る可能性はあります。税務、社会保険、許認可、重要契約の届出も別に洗い出します。
支払期限と選任手続きを一枚の表で管理する

会社を止めないためには、後任選任だけを担当者一人へ任せず、支払いと権限確認、必要な届出を並行して管理します。期限のある決済を一覧にし、相続財産の話し合いと分けて優先順位を付けます。
給与や決済と代表権確認を優先する
給与、買掛金、家賃、税金などの支払日と、実行に必要な承認・銀行手続きを表にします。会社口座から払う費用を遺族の個人預金と混ぜず、立替えが必要な場合も目的と記録を残します。既存の社内権限が使える範囲も確認してください。
会社の借入と個人保証の資料を別に残す
亡くなった代表者の会社への貸付金や個人保証は、役員変更だけでは片付きません。会社の借入契約と個人の債務を別に調査します。最初の資料は定款と履歴事項全部証明書です。これに株主名簿と直近の支払予定を添えて、後任選任の相談を始めます。
| 並行して進める仕事 | 確認する資料 |
|---|---|
| 後任の選任・選定 | 定款・会社登記・残存取締役 |
| 株主の権利行使 | 株主名簿・遺言・相続関係 |
| 変更登記 | 死亡日・決議日・就任日・添付書面 |
| 日常の決済 | 銀行の権限確認・給与等の支払予定 |
よくある質問

社長の子が自動的に後任になりますか
なりません。株式の相続と取締役・代表取締役の地位は別で、会社の機関設計と定款に沿った手続きが必要です。
株式の遺産分割が終わるまで役員を決められませんか
必ず待つとは限りません。共有株式の権利行使者等を適切に整理して進められるか、会社の状況に応じて確認します。
代表者の死亡登記に期限はありますか
登記事項の変更登記は原則2週間以内です。死亡による退任と後任就任の変更日を区別し、司法書士や法務局に書類を確認してください。