不動産の売買契約中に相続が起きたら 売主と買主の計上

不動産の条件を整理する住まいと土地の資料

土地や建物の売買契約を結んだ後、引渡しと残代金の決済が終わる前に相続が起きると、通常の不動産評価だけでは財産一覧を作れません。亡くなった人が売主なのか買主なのかで、計上する権利と負担が違います。

まず契約の状態と手付金の授受を確認しましょう。同じ売買価格3,000万円、手付金300万円という仮定を、売主側と買主側の二つの相続に分けて、どの資料を申告担当へ渡すか説明します。

この記事でわかること
  • 売主と買主で相続財産となる権利を分ける
  • 手付と残代金の債権債務を二重に計上しない
  • 買主の不動産評価の取扱いと農地の例外を確認する
目次

死亡日までの契約と代金と引渡しの状態をそろえる

手続きの期限を確認するカレンダーと資料

本稿が扱うのは、有効に売買契約が成立し、死亡日に引渡しと代金決済がまだ終わっていない場合です。売却の相談を始めただけ、購入申込書を出しただけの状態と、契約済みの状態を分けてください。

死亡日までに確認すること主な根拠資料金額や日付の確認
契約が成立しているか売買契約書、特約、変更合意契約日と停止条件、解除の有無
どちらの立場を引き継ぐか契約当事者の表示、登記等故人が売主か買主か、対象物件
すでに払った又は受け取った額手付の領収書と通帳300万円という仮定が実際に授受済みか
未了の義務決済予定、引渡条項、精算書案残代金2,700万円と引渡しの予定

解除や停止条件を普通の契約と混ぜない

農地法上の許可などが関わる場合や、解除済み、条件がまだ成就していない場合は、権利の内容を先に確認します。書類に売買と書かれているだけで、すべて同じ日から同じ権利があると処理しないようにします。

また、相続税で何を評価するかと、不動産登記に誰の名義が残っているかは同じ判断ではありません。故人名義の登記が残っていることだけから、相続税も通常の土地・家屋評価でよいと決めないでください。

売主側は残代金債権と受領済み資金を分ける

提出書類を照合するための紙資料と筆記具

売主が死亡した側では、相続する財産は原則として、売買契約に基づく死亡時の残代金請求権です。国税庁は、その未収入金を財産評価基本通達204の貸付金債権の評価により評価するとしています。

仮定の売買価格3,000万円から、すでに受け取った手付金300万円を除けば、残代金は2,700万円です。この残代金請求権を、土地の路線価評価額へ置き換えるものではありません。

売主側で調べる項目この例の金額申告へつなぐ注意点
残代金請求権2,700万円契約価格と受領済み額から確認し、権利の評価条件も照合
受領済み手付金に対応する資金300万円を受領したという事実死亡時に残っている現金・預金等の実残高へ含める
未払いの売却費用金額は別途確認故人の負担で死亡時に存在する確実な債務かを資料で判定

手付金を受け取っていても、生活費などに使った額まで、受領額300万円を別財産としてもう一度加えるわけではありません。死亡時の実際の預金等を調べ、残代金と重複させないようにします。

未払仲介費用等は存在と確実性を別に判定する

契約で故人が負担することになっていた仲介手数料等のうち、死亡時に未払いのものは、債務の根拠と確実性を確認します。売価から将来の費用見積をすべて一括して引かず、契約、請求、負担者を示して債務控除を別に検討してください。売主側の財産が債権となる場合、土地そのものへの小規模宅地等の特例と同じ扱いにはしません。

買主側は引渡請求権と残代金債務を対応させる

取引記録を保管するファイルと資料

今度は買主が死亡した、別の相続の例を考えます。原則として相続するのは不動産の引渡請求権等で、その価額は契約に基づく不動産の取得価額です。一方、支払義務として残代金支払債務を確認します。

買主側の原則的な項目この例の金額取り違えないこと
不動産の引渡請求権等3,000万円支払済み手付金を引いた2,700万円ではない
残代金支払債務2,700万円未払いの額を債務として別に確認
手付金の支払履歴300万円を支払済み現存しない預金として足したり、もう一度債務にしたりしない

ほかの費用を考えない原則例では、3,000万円の権利と2,700万円の債務が対応します。ただし、この差額だけを一行で書き、何を相続したかを省略するのではなく、資産と負債の根拠を別々に残します。

国税庁が認める不動産としての申告を確認する

国税庁の照会は、買主側について、その契約の不動産を相続財産として申告しても差し支えないとしています。その場合の不動産の価額は、財産評価基本通達により評価した価額です。「買主側は必ず契約価格の引渡請求権でしか申告できない」とする説明ではありません。

また、契約から相続まで通常より長期間が経過したなど、取得価額が引渡請求権の価額として適当でない場合は、別途個別評価する扱いがあります。どの取扱いで申告するか、対象財産の資料とともに税理士へ確認します。不動産として申告できることだけから、居住・保有等の条件を調べず小規模宅地等の特例まで使えるとは決められません。

農地の効力時点と準確定申告を別に確認する

合意の内容を確認する契約書類

農地法上の許可又は所定の届出を要する農地等では、国税庁の照会は、原則として許可の日又は届出の効力が生じた日を「引渡しの日」としています。ただし、その日より後に所有権等が売主から買主へ移転したと認められる場合は除かれます。許可等の日、契約、実際の権利移転の資料をそろえ、一般の宅地の契約日や登記日だけで判断しないでください。

契約を死後に解除しただけで当日評価を消さない

相続人が契約の地位を引き継いだ後に解除を選ぶ場合も、死亡日にどんな権利があったかと、後日の選択を区別します。後で白紙に戻したことだけで、死亡時にも財産がなかったと処理せず、解除の原因と時期、返金の資料を示して申告への影響を相談します。

売却に伴う所得税の申告も別の確認です。故人の準確定申告と相続人の所得税のどちらに関係するかは、譲渡収入を計上する時期などから判断するため、相続税の財産区分と一緒に自動決定しません。相続税の申告期限と、所得税等の期限は別に管理します。

最後に、契約、手付金、死亡日、引渡し、残代金、未払費用、解除等の変更を一つの経過表へまとめます。未確認の行を明らかにしておけば、登記と決済を進める担当にも、税務の担当にも同じ事実を渡せます。

相続の資料をそろえる際は、相続税申告に必要な書類 財産別の一覧と集め方や不足時の対応も参考に、今回の判断と全体の申告準備をつなげてください。

ご家族の資料や未確認の点を整理して相談する際は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。

よくある質問

疑問点を調べるための本とメモ

登記が売主のままなら売主の不動産として評価しますか

登記名義だけでは決めません。有効な売買契約後の売主について、国税庁は残代金請求権を相続財産とする取扱いを示しています。契約条件と引渡し等を確認します。

買主が死亡した場合は契約価格でしか申告できませんか

国税庁の質疑応答事例では、原則的な引渡請求権の評価に加え、不動産を財産評価基本通達で評価して申告しても差し支えないとしています。個別の契約と適用条件を確認します。

農地の売買も契約日だけを見れば足りますか

所定の農地等では、原則として許可日又は届出の効力発生日を引渡日とします。ただし、その後に所有権等が移転したと認められる場合を除きます。契約日だけでなく許可等と権利移転を確認します。

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