未成年後見人の選任申立て 親権と子の財産を整理する

親が亡くなり、子の預金や遺産の手続きを親族が代わりに進めたいと思っても、同居して世話をしているだけでは法定代理人になるわけではありません。未成年者に親権を行う者がいない場合等には、未成年後見の手続きを検討します。
最初に確かめるのは、現在の親権の状態と、遺言で指定された後見人がいるかです。指定がなく家裁の選任が必要な場合について、申立書、事情説明書、財産目録へ何を分けて記すかを説明します。
- 親権を行う者と遺言による指定の有無を確かめる
- 申立原因と必要な手続きを実際の欄へ書き分ける
- 子の財産と未分割遺産や候補者の利害を分ける
親権を行う者と遺言で指定された人の有無を確かめる

親が一人亡くなれば、すべての子に未成年後見人が必要になるわけではありません。民法838条は、未成年者に親権を行う者がない場合や、親権を行う者が管理権を有しない場合等を後見の開始事由としています。
2026年4月以降は離婚後の共同親権を選べる制度が施行されています。古い家族の記憶だけで親権者を決めず、戸籍、離婚時の取決め、審判等から現在の状態を確認します。生存する親がいることと、その人が現在親権を行う立場であることも、同じ意味ではありません。
また、民法839条により遺言で指定された後見人がいる場合は、指定の効力や就任の届出を確認します。家裁の選任が必要になる場合と同じ申立てを当然に行うのではありません。裁判所の事情説明書にも、遺言で指定された未成年後見人の有無を記す欄があります。
以下では、親権を行う者がおらず、遺言の指定もなく、家庭裁判所で選任を求める場合を中心に扱います。事情が不明な場合は、その確認から家裁や法律専門家へ相談してください。
申立書の原因と必要な手続きを書き分ける

全国案内の申立先は、未成年者の住所地の家庭裁判所です。申立てできるのは、意思能力のある未成年者本人、親族、その他の利害関係人です。候補者の住まいや親の不動産所在地から提出先を選ぶものではありません。
申立手数料は未成年者一人につき収入印紙800円分で、別に連絡用の郵便料等を確認します。郵便料は裁判所によって異なるため、提出先の現行案内を使います。
親権者の死亡は原因で遺産分割は動機に記す
現行掲載の申立書は、「申立ての原因」と「申立ての動機」を分けています。原因欄には親権者の死亡等とその年月日を、動機欄には監護教育、遺産分割、相続放棄、保険金等の請求といった、必要となった手続きを対応させます。
説明用に、15歳の子の父母がすでに死亡し、指定後見人がおらず、叔母が暮らしを支えていると仮定します。原因には親権者死亡等の事実を示し、動機には入学の準備、保険請求、遺産分割など、今困っていることを分けて書きます。「財産管理のため」だけでは、緊急の支払いも生活の状況も伝わりません。
申立書には、住民票上の住所と実際に住む場所を分ける欄もあります。子が叔母宅や寮、施設等で暮らしているなら、居所と連絡方法を実際の状況に合わせて説明します。
子の預金と取得予定の遺産を別の目録に載せる

子がすでに持っている預金と、子が相続人となった未分割遺産は区別します。裁判所の書式には財産目録、相続財産目録、収支予定表があり、同じ金額を二重に記載しないよう資料を対応させます。
| 仮定の財産や請求 | 整理の仕方 | 裏付けの例 |
|---|---|---|
| 子自身の預金70万円 | 本人の財産として残高日を示す | 通帳写しや残高証明 |
| 亡親の未分割の不動産 | 相続財産の範囲と子の立場を示す | 登記、相続関係、遺言等 |
| 請求中の生命保険金 | 受取人と契約を確かめ所定の目録へ | 保険証券と保険会社の案内 |
| 今後の学費と生活費 | 子の収支予定として見込みを示す | 学校の費用資料、生活費の内訳 |
事情説明書は、今後取得する予定の資産について、生命保険金、死亡退職金、遺産等を分け、対応する目録への記載を促しています。子が請求できる保険金を、亡親名義の預金と同じ未分割遺産に機械的に入れないでください。
相続財産の全容が不明なときは、照会中の内容と判明した資料を分けます。不明な残高をゼロとしないこと、子の支出と叔母自身の生活費を混ぜないことが大切です。全国案内は、申立前に取得できない戸籍等の追加提出も認めているので、不足の扱いは家裁へ相談します。
申立書末尾には添付書類のチェック欄があり、候補者が子と金銭の貸借等をしている場合の関係書類も挙げられています。後見人になる候補者から借りているお金がある場合も、都合の悪い資料として省かないでください。
候補者の利害関係と選任後の生活を説明する

叔母を候補者として書いても、その人が必ず選任されるとは限りません。裁判所は、子の年齢や生活・財産、候補者の職業や経歴、子との利害関係、子の意見等を考慮します。必要に応じて専門職や複数の後見人が選任される場合もあります。
候補者が子と同じ遺産の相続人である場合などは、利益相反の可能性を隠さず示します。後見人に選ばれることと、後見人自身と子の取り分を一人で決めてよいことは別です。遺産分割に特別代理人等の別の手続きが必要かも確認します。
申立事情説明書では、子へ手続きを説明したか、子や生存する親、身近な親族が候補者をどう考えているかを記します。親族全員の賛成があれば選任が保証される、反対者がいれば当然に申立てできない、という扱いではありません。意見の相違や連絡不能も事実として説明してください。
保険請求や遺産分割が済んでも管理は続く
選任後は、子が成年に達する場合や養子縁組等で親権者が決まる場合等まで、監護や財産管理の仕事が続きます。保険金を受け取る一回限りの代理を頼む制度ではありません。学校、住まい、生活費、帳簿と裁判所への報告まで、続けられる体制を考えます。
申立てをした後の取下げには、家裁の許可が必要です。候補者以外の人が選ばれそうだから自由にやめる、という前提で申し立てず、申立前から継続する仕事と費用を理解しておきましょう。
関連する基本事項は、親の相続準備 元気なうちに確認する書類と進め方も参考にしてください。
契約や手元の資料をもとに相談する場合は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

親が一人亡くなれば未成年後見人が必要ですか
一律には必要となりません。現在親権を行う者や管理権の有無、遺言指定等を確認し、家裁で選任を求める場合かを分けます。
子の遺産と保険金は同じ目録にまとめますか
権利の種類と受取人を確かめ、所定の財産目録と相続財産目録へ分けて整理します。既存の子の預金と未分割遺産を重複計上しないようにします。
遺産分割が終われば未成年後見人をやめられますか
当初の目的が済んだだけで当然に終わる制度ではありません。成年到達や養子縁組等による終了までの監護・財産管理と家裁の監督を見込んで検討します。