特許権を相続したら 出願中と登録後の書類を分ける方法

特許に関する相続では、出願中か登録済みか、父が単独で持っていたか共有かを最初に分けます。特許証や発明者名が見つかっただけでは、相続する権利の範囲は確定しません。
出願中一件、父単独の登録特許一件、大学との共有特許一件という架空例を使い、名義の手続きと未処理の通知、特許料の期限を整理します。税額の評価計算ではなく、引継ぎの書類と期限を扱います。
- 出願番号と特許番号から状態を分ける方法
- 出願中の名義変更と登録後の移転、共有持分の違い
- 未処理通知と特許料の期限を引き継ぐ確認表
出願番号と特許番号を分けて三件の状態を確かめる

家族の名前が特許の書類にあっても、発明者としての氏名なのか、権利を持つ出願人・特許権者としての氏名なのかを読み分けます。職務上の発明で会社が権利者なら、父個人の遺産と同じではありません。特許証だけで現在の存続を決めず、原簿等と照合してください。
ここでは、父が出願人の審査中案件、父単独名義の登録特許、父と大学が共有する登録特許の三件を仮定します。共有特許の父の持分は2分の1とし、残りは大学が保有している例です。
| 案件の状態 | 先に調べる情報 | 引継ぎで分けること |
|---|---|---|
| 出願中 | 出願番号、出願人、代理人、最新の通知 | 名義の届出と審査への応答 |
| 登録済みで父が単独所有 | 特許番号、原簿、既納の特許料 | 父の権利の相続と次の納付 |
| 大学と共有 | 特許番号、父の持分、共同出願・実施の契約 | 父の持分だけの相続と大学側の権利 |
登録番号が分からなければ、弁理士の請求書、特許庁からの通知、実施許諾契約から探します。「この発明に関係した」という記憶だけで三件をまとめず、出願番号と特許番号、権利者名を表へ直接記入すると、相談先へ状況を示しやすくなります。
出願中は名義変更と未処理の通知を引き継ぐ

出願中に相続が生じた場合は、特許を受ける権利についての一般承継として、遅滞なく届け出る必要があります。登録済みの特許権を移転する申請とは異なるため、まず手続きの段階を確定します。
INPITは、出願中の案件では「出願人名義変更届(一般承継)」、登録後では「相続による移転登録申請書」を案内しています。死亡と相続人を示す戸籍等、遺言や協議、放棄等の事情に対応する書面を整理し、どの人がどの権利を取得するかを確認します。
名義変更の書面だけをそろえても、拒絶理由通知への応答などが済むわけではありません。父が依頼していた弁理士へ、死亡日と相続関係を伝え、未処理の通知、応答期限、審査請求の状況、今後の代理手続きを尋ねます。家族の話し合いの予定と、特許庁へ対応する期限を別に記録してください。
父のパソコンに届いた通知が読めない、担当事務所が分からない場合も、分かる出願番号と書類を持って相談します。相続があればすべての期限が自動的に止まると考えず、手続きの承継や中断等の該当性を、代理人の有無と具体的な案件に沿って確認することが大切です。
登録済みの権利と共有持分を正しい範囲で移す

登録済みの特許権も、相続等の一般承継は、移転登録をしなければ効力が生じないという原則の例外です。ただし、遅滞なく特許庁へ届け出る必要があります。一般の売買や特定遺贈と同じ原因で申請書を作らず、相続による申請として必要な書面を確かめます。
大学との共有特許では、相続の対象は父の持分2分の1です。その全体を長女が取得する協議であっても、大学の持分まで長女へ移るわけではありません。原簿の持分、相続書面の対象、申請する範囲を同じ番号で突き合わせます。
| 権利の動き | 確認する相手と根拠 |
|---|---|
| 父の持分を相続する | 戸籍や遺言・協議等で相続と取得範囲を確認 |
| 相続した持分を後に第三者へ売る | 相続とは別の譲渡。特許法73条による他共有者の同意等を確認 |
| 第三者へ実施を許諾する | 共有者の同意に関する法73条と契約内容を確認 |
| 大学との共同研究を続ける | 実施条件、費用負担、連絡先、契約上の承継の扱いを確認 |
法73条が定める持分の譲渡や実施許諾の同意と、相続による一般承継を混同しないでください。相続の届出で他共有者の持分を変更することはできず、逆に、持分相続のために常に大学の譲渡同意が必要とも扱いません。相続後に利用や売却をする段階では、改めて共有と契約の制限を確かめます。
移転の手続き中も特許料と存続期間を別に守る

特許権の存続期間は原則として出願日から20年ですが、延長等が関係する場合もあります。いつまで使えるかは登録年だけで計算せず、出願日、延長の有無、現在の存続状態から確認します。
特許料は、登録後の権利を維持するための納付です。移転申請に関する税や弁理士への報酬とは別に、何年分まで納付済みか、次はいつ何年分を支払うかを調べます。期限を過ぎたときには追納等の扱いが問題になるため、書面がそろうまで待たず、直ちに担当弁理士や特許庁へ確認してください。
| 三件の引継ぎ表へ記入する内容 | 出願中 | 単独の登録特許 | 大学との共有特許 |
|---|---|---|---|
| 直近の対応 | 未処理の通知と応答予定 | 次の特許料と相続申請 | 次の特許料、負担者と相続申請 |
| 照合する根拠 | 通知書、代理人の記録 | 原簿、納付の控え | 原簿、納付の控え、共有契約 |
| 完了後の確認 | 出願人と連絡先 | 権利者と納付記録 | 父の持分の移転と大学側の持分 |
相続税の評価に必要な資料は、申請書類とは用途が異なります。未収の実施料や将来の利用契約を分けて税理士へ渡し、移転申請の完了を待つために申告の相談を遅らせないようにします。財産調査の全体は、親の財産の調べ方 預貯金や不動産の照会先と必要書類に特許の原簿や契約を加えて整理してください。
手元の資料と未確認の点を整理して相談する際は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

出願中の特許も相続の手続きが必要ですか
特許を受ける権利を承継する場合は、出願人名義変更届(一般承継)を使う手続きを確認します。登録済み特許の移転申請とは分け、審査中の通知や応答期限も引き継ぎます。
父が共有していた特許は全部を相続できますか
相続の対象は父が持っていた持分です。ほかの共有者の持分は移りません。原簿と協議等の対象を照合し、相続後の持分譲渡や実施許諾は同意や契約を別に確認します。
移転の手続き中は特許料を払わなくてもよいですか
名義の手続きと特許料の納期限は別に管理します。既に何年分まで納付済みかと次の期限を調べ、相続書面が不足していても弁理士や特許庁へ早めに相談してください。