相続財産の取得費加算の特例 売却期限と加算額の計算方法

相続財産の取得費加算の特例 売却期限と加算額の計算方法のイメージ

相続税がかかった財産を一定期間内に売ると、その財産に対応する相続税を取得費に加えられます。売却益を小さくする制度なので、相続税そのものを払い戻す制度ではありません。

確認の出発点は、売る人自身に相続税が課されているかと、相続税の申告期限です。親の購入価格、相続時の評価額、実際の売却代金は別の数字として用意すると、加算額の計算を整理できます。

この記事でわかること
  • 取得費に加算できる相続税の範囲と売却期限がわかる
  • 相続税申告書を使う計算の分子と分母を区別できる
  • 取得費不明の場合や空き家控除との選択を判断できる
目次

取得費加算は売った財産に対応する相続税を上乗せする

取得費加算は売った財産に対応する相続税を上乗せするに関する資料のイメージ

取得費とは、原則として財産を購入するためにかかった費用です。相続した土地や株式を売るときは、亡くなった親の取得費を引き継ぎます。取得費加算の特例では、この通常の取得費に、売った財産に対応する一定の相続税額を追加します。

対象は譲渡所得が生じる相続財産

相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などを売り、譲渡所得が生じる場合に検討します。相続した財産を売ったというだけで、すべての所得に使えるわけではありません。事業所得や雑所得となる取引には適用されません。

譲渡所得は、売却収入から取得費と譲渡費用を引いて求めます。加算した額はこの利益を減らすため、加算額と同額だけ税金が減るのではなく、減った利益に応じて税負担が変わります。

相続税が課されていない人は使えない

要件は、財産を取得した本人に相続税が課されていることです。子に相続税がかかっていても、売る母の相続税が配偶者の税額軽減でゼロなら、子の納税額を母の取得費に付け替えることはできません。

延納等を利用している場合を含め、単に納付書の支払い済み金額だけで計算を終えず、申告書上のその人の相続税額を確認します。家族全体の税額を使わないことが最初の確認点です。

売却期限は相続税の申告期限から確認する

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期限の数え方を日付で記録する

特例の対象期間は、相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。通常は相続開始からおおむね3年10か月と説明されますが、この目安をそのまま自分の最終日にしないでください。

申告期限が休日に当たる場合など、実際の日付がずれることがあります。相続開始日、相続税の申告期限、特例による売却期限を別々に書き出し、税務署または申告担当税理士に確認します。

契約と引渡しの時期がずれるときは判断を確認する

年末に契約して翌年に引き渡す売却では、譲渡所得をどの年に計上するかも問題になります。申込日や手付金の受領日だけで期限に間に合うと判断せず、契約の効力や引渡しの状況に応じて譲渡時期を確認してください。

売却先が見つかっても、遺産分割や相続登記が未了だと引渡しまで進められないことがあります。税務上の期限に合わせ、相続人の合意と名義変更に必要な期間も見込んでおく必要があります。

相続税申告書を使って財産ごとの加算額を求める

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基本となる計算は、その人の相続税額に、売った財産の相続税評価額が取得財産等の価額に占める割合を掛けるものです。ただし加算できる額は、特例を使わずに計算したその財産の譲渡益が上限となります。

取得費と相続税評価額を混同しない

例として、子が取得した財産の価額等の合計を1億円、本人の相続税額を1,000万円、売った土地の相続税評価額を4,000万円とします。債務や贈与加算などの調整がない単純な例なら、取得費加算額は1,000万円×4,000万円÷1億円=400万円です。

その土地を5,000万円で売り、親から引き継ぐ取得費が1,500万円、譲渡費用が200万円なら、通常の譲渡所得は3,300万円です。400万円を加算すると2,900万円になります。税額が400万円減るという意味ではありません。

数字使う場所
親の購入費等1,500万円通常の取得費
相続税評価額4,000万円加算額を按分する分子
売却代金5,000万円譲渡所得の収入金額

代償分割や贈与の加算がある場合は調整する

計算の分母は、借金を差し引いた後の課税価格をそのまま入れるものではありません。債務控除前の取得財産の価額を基本とし、相続時精算課税適用財産や相続税へ加算される暦年課税の贈与財産等も含め、国税庁の計算明細書に沿って整理します。

代償金を払って土地を取得した場合などは、単純な比率では済まない調整があります。2024年以後の贈与に係る基礎控除や加算期間に応じた控除にも注意が必要です。家族の財産一覧から独自に分母を作るより、相続税の申告書一式を使う方が確認しやすくなります。

取得費が不明な場合と空き家控除との選択を確認する

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親の購入資料を探してから概算取得費を使う

親の購入価格がわからない場合などは、売却代金の5%を概算取得費とする方法があります。この概算取得費を使う場合も、要件を満たす取得費加算を加えることは可能です。

ただし、5%で申告すると実際の購入価格より取得費が小さくなり、税負担が増えることがあります。売買契約書、購入時の精算書、通帳やローン資料などを探してから判断してください。相続税評価額は親の購入価格の代用にはなりません。

両方の要件を満たすなら控除額を比較する

相続した空き家の3,000万円特別控除と取得費加算は、同じ資産の譲渡について併用できません。空き家控除は家屋の建築日や親の居住などの条件が細かく、取得費加算には本人への相続税課税と売却期限という条件があります。

先ほどの例なら加算額は400万円ですが、空き家控除が適用できれば最高3,000万円を譲渡所得から引ける可能性があります。ただし人数による上限等を確認し、実際に使える額で比べる必要があります。名前や最大額だけで決めないでください。

売却した年の確定申告で計算明細書を添付する

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相続税の申告を終えただけでは、自動的に所得税の取得費へ反映されません。売却した年分の確定申告書に、相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書と、財産の種類に応じた譲渡所得の内訳書等を添付します。

先に所得税の申告期限が来る場合は税務署へ確認する

亡くなった年のうちに売却すると、相続税の申告期限より先に所得税の申告期限が来ることがあります。相続税額がまだ確定していないからといって、所得税の申告を放置することはできません。

後から相続税を期限内に申告した場合の更正の請求には、通常の5年と異なる特則が関わるため、申告の順序と請求期限を税務署へ確認します。取得費加算を検討していることを、相続税と所得税の両方の申告担当者へ伝えておきましょう。

修正申告や更正で相続税額が変わったときも見直す

加算額の基になる相続税額や財産評価が後から変われば、譲渡所得の計算への影響も確認が必要です。相続税の変更だけ処理し、所得税の申告をそのままにしないようにします。

売却を検討し始めたら、相続税申告書一式、親の購入資料、売却予定の財産と価格、契約と引渡しの予定日をそろえてください。担当者に加算額と適用期限を同時に確認してもらうと、選択すべき制度が見えてきます。

関連する準備は、親の財産の調べ方も参考にしてください。

よくある質問

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相続税を払っていない人も取得費加算を使えますか

その財産を取得した本人に相続税が課されていなければ使えません。家族の別の人が納めた相続税を、自分の取得費に加算することはできません。

親の購入価格が不明でも取得費加算はできますか

要件を満たせば、売却代金の5%を概算取得費とする場合でも加算できます。ただし、先に購入資料を探し、実際の取得費を使えるか確認してください。

空き家の3000万円控除と両方使えますか

同じ資産の譲渡については併用できません。それぞれの要件を確認し、適用後の譲渡所得を比較して選びます。

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