造成中の宅地の相続税評価 着手前の地目と工事費

親の土地で宅地造成をしている途中に相続が起きても、完成後の宅地価額をそのまま使うわけではありません。造成工事へ着手する直前の地目と、死亡日までに投下した造成費用を組み合わせて評価します。
80%を掛けるのは土地全体ではなく、造成に係る費用現価です。土地の基礎価額1,200万円、費用現価500万円という仮定を使い、土地評価と未払工事代金をどう分けるか整理します。
- 造成着手前の地目と死亡日の価格を組み合わせる
- 造成費用現価の80%を土地の価額へ加える
- 施工済み費用と未払代金や残工事を照合する
造成中の土地と仮換地や売買中の土地を分ける

本稿で扱うのは、故人が所有する土地について宅地造成工事が進行し、死亡日にまだ完成していない場合です。財産評価基本通達24-3は、その造成中の宅地の評価方法を定めています。
工事現場であればすべて同じ取扱いになるわけではありません。土地区画整理事業の仮換地には通達24-2の定めがあり、不動産を購入する売買契約の途中であれば、引渡請求権等を検討する場面もあります。まず工事の種類と土地の権利を確かめます。
着手前の地目と死亡時の価格を組み合わせる
契約書、工事着手の記録、着手前後の写真、登記資料や図面から、どの土地で何を行っていたかをまとめます。工事は契約しただけなのか、実際に始まっているのか、完成していたのかという区切りも必要です。
評価に用いるのは、着手直前の地目によって評価した「死亡日現在」の土地の価額です。工事着手日にさかのぼった価格を採用する意味ではありません。
着手前の地目で死亡日の土地価額を評価する

造成前が山林だった土地なら、その着手直前の状態に対応する山林の評価方法を基に、死亡日時点の価額を調べます。購入した時の金額、工事を始めた年の評価、完成後の販売予定額をそのまま採るものではありません。
ここでは、着手前の地目によって評価した死亡日時点の土地価額が1,200万円と確認されたと仮定します。完成宅地の見込額が別に分かっていても、この1,200万円と完成見込額を合算しません。
登記の地目だけで着手前の現況を決めない
登記と現況が異なっていたり、一筆の一部だけで造成していたりする場合もあります。登記簿の一語だけで決めず、工事範囲と従前の利用状況を図面へ対応させます。農地の転用許可などが関係する場合は、その資料も示します。
土地の評価そのものに位置や形状、権利関係などの判断があるため、1,200万円という出発点も根拠が必要です。完成後の予定区画を見ただけで、着手前の評価対象まで同じに分割しないようにします。
造成費用現価の80%を土地の基礎価額へ加える

費用現価は、死亡日までに投下された造成費用を死亡日の価額へ引き直した合計です。国税庁の質疑応答では、埋立て、土盛り、土止め、地ならしなどを例に挙げています。
説明用に、工事契約総額1,000万円、死亡日までの費用現価500万円、支払済み300万円と仮定します。通達24-3の式では、土地1,200万円+500万円×80%=1,600万円です。
| 項目 | 仮定の金額 | 採用する意味 |
|---|---|---|
| 着手前の地目で評価した土地 | 1,200万円 | 死亡日現在の価額 |
| 死亡日までの造成費用現価 | 500万円 | 80%を掛ける対象 |
| 加算する額 | 400万円 | 500万円×80% |
| 造成中宅地の評価額 | 1,600万円 | 1,200万円+400万円 |
土地と工事費の合計1,700万円へ80%を掛ける式ではありません。また、完成後の宅地として評価した金額へさらに400万円を加えると、造成によって増えた価値を重ねるおそれがあります。
造成の見積額と死亡時までの投下費用を分ける
今後必要になる工事費や最初の見積総額は、そのまま死亡日までの費用現価ではありません。工事会社へ施工済みの範囲と金額を照会し、支払日だけでなく、工事の進み方と対応する費用を確かめます。
市街地農地等を宅地比準で評価するときに控除する標準的な宅地造成費とも役割が異なります。本稿は造成中の土地へ投下した費用現価を加算する場面であり、当年の標準単価表だけで工事の出来高を代替しないでください。
未払工事代と完成後の費用を評価と別に検討する

土地評価の80%と、工事代金の未払債務の評価は分けます。先ほどの例で施工済み部分の未払200万円が死亡時に存在する確実な故人の債務と確認できたなら、土地1,600万円と債務200万円を別々に記録します。債務200万円へさらに80%を掛ける制度ではありません。
契約総額のうち死亡後に施工する部分まで、未払という言葉だけで一律に控除しないようにします。請求の対象期間、工事の履行、支払条件、追加や変更契約などを基に判断が必要です。
支払済み300万円は支払ったという経緯であって、死亡日に残る預金300万円ではありません。実際の口座残高と工事会社の入金明細を照合し、土地、預金、債務で同じ金額を二度計上しないことが大切です。
工程表と出来高資料を同じ基準日へ合わせる
評価担当へ渡す資料は、工事契約と変更契約、着手前の現況、死亡日現在の工程・出来高、請求と支払い、土地の評価資料です。工事会社から月末の資料しか出ないときは、死亡日までの範囲を区別できるか尋ねます。
災害で工事をやり直す場合や、長く中断して投下費用の効用が変わっている場合には、通常の例だけで処理しないでください。工事の経緯と現況を伝え、死亡日に残る価値と適用する取扱いを確認します。
土地と家屋の通常の評価は、不動産の相続税評価の基本も参考に、今回の工事に関する資料と分けて整理してください。
判断が分かれる契約や資料不足について相談する際は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

造成中の土地全体を80%で評価しますか
土地全体ではありません。造成着手直前の地目で評価した死亡日現在の土地価額に、造成費用現価の80%を加算します。
造成工事着手時の価格を使いますか
地目は造成着手直前のものを使いますが、価額の評価時点は死亡日です。着手当時の古い価格や購入額をそのまま使う意味ではありません。
造成代金の未払額も80%にしますか
80%は資産評価へ加算する造成費用現価に用いる率です。未払工事代金は、死亡時に存在する確実な債務かを別に判定します。