不動産の相続税評価額はどう調べる 土地と建物の計算方法や必要資料

不動産の相続税評価額はどう調べる 土地と建物の計算方法や必要資料のイメージ

親の実家を相続するとき、固定資産税の通知書にある金額を見て「この金額で相続税を計算するのだろうか」と迷うことがあります。土地と建物では評価の方法が違うため、通知書の合計をそのまま遺産額にするとは限りません。

まずは、何のために評価するのかを決めます。相続税の申告、家族での分け方、売却の見積もりでは、必要になる金額が違います。

この記事では相続税の評価額を知りたい人に向けて、資料の集め方、土地と建物の基本計算、貸付けや特例の確認を説明します。不動産を評価した後に、ほかの財産と合わせて申告が必要かを判断しましょう。

この記事でわかること
  • 相続税評価額と売却価格や固定資産税評価額の違い
  • 土地と建物の計算方法と集める資料
  • 賃貸物件や小規模宅地等の特例を確認する順序
目次

不動産の評価額は相続税と分割や売却で使い分ける

不動産の評価額は相続税と分割や売却で使い分けるに関する資料のイメージ

相続税では死亡時の財産を所定の方法で評価する

相続税の財産評価は、原則として相続開始時の時価を基準にし、財産評価基本通達などに沿って計算します。不動産を買ったときの価格をそのまま使うものではありません。

土地は路線価方式や倍率方式、家屋は固定資産税評価額を基にした評価が基本です。土地の形や利用状況、貸しているかどうかなども反映します。同じ住所にある土地と建物でも、計算を分ける必要があります。

家族で分ける価額と相続税評価額は必ずしも同じではない

姉が実家を受け継ぎ、弟が預金を受け取るなら、家族は実家の価値をいくらとして分けるかを合意する必要があります。相続税評価額を参考にする場合もありますが、市場での価格や鑑定額などを使って協議することもあります。

一方、売却価格は買い手との取引条件や建物の状態で変わります。「路線価を一定割合で割り戻せば必ず売値になる」といった計算では、実際の査定を代替できません。

不動産に関係する主な金額の用途
金額主な用途注意する点
相続税評価額相続税の課税価格の計算土地と建物を分けて算定する
固定資産税評価額固定資産税などの計算の基礎課税標準額とは別の欄を確認する
査定額や売却価格売却の検討や実際の取引税務上の評価額と一致するとは限らない
遺産分割で合意する価額家族間の財産の配分用いた評価方法と条件を共有する

課税明細書と登記から土地建物を漏れなく一覧にする

課税明細書と登記から土地建物を漏れなく一覧にするに関する資料のイメージ

通知書では価格や評価額の欄を確認する

固定資産税の納税通知書に添付された課税明細書には、土地や家屋ごとの情報が載っています。自治体によって書式は異なりますが、確認する中心は「価格」「評価額」などの欄です。

同じ紙に載る「課税標準額」や「税額」は、相続税評価の出発点にする固定資産税評価額とは別です。住宅用地の軽減などが反映された課税標準を、土地の倍率方式にそのまま使わないようにしてください。

通知書がなければ、物件の所在する自治体などに評価証明書や名寄帳の取得方法を確認します。相続人であることを示す資料など、取得に必要な書類を先に聞いておくと手続きを進めやすくなります。

登記事項で持分と土地の範囲を確認する

登記事項証明書では、土地の所在・地番・地目・地積、建物の家屋番号や構造などを確認します。共有なら、亡くなった人の持分も確認してください。物件全体の価額と、その人の持分の価額を区別します。

実家の庭や進入路が別の土地になっていることもあります。固定資産税の課税がない私道などは、通知書だけで把握できない場合があります。登記や名寄帳と照合し、非課税だから相続財産にも存在しないとは判断しません。

資料がばらばらの場合は、親の財産がわからないときの調べ方を使い、物件ごとに所在地、持分、資料の所在、未確認事項をまとめます。

死亡時の利用状況は写真と契約書などで残す

自宅、賃貸、空き家、事業用では評価や特例の確認が変わります。賃貸借契約、間取り、入居状況、土地の形がわかる測量図なども資料になります。

申告の直前に現地を見ただけでは、死亡時に誰が住んでいたかがわからないことがあります。施設への入所、建物の解体、転居などがあった場合は、いつ利用状況が変わったのかも記録してください。

土地は所在地に応じて路線価方式か倍率方式で計算する

土地は所在地に応じて路線価方式か倍率方式で計算するに関する資料のイメージ

路線価方式は道路の単価と面積に土地の条件を反映する

路線価が定められた地域では、土地が面する道路の路線価を基に評価します。路線価図の数字は、標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額を千円単位で表示しています。「300」なら30万円です。

仮に、一つの道路に面する自用の宅地100平方メートル、路線価30万円、奥行などの補正率は1.0、ほかの加減算はないとします。この説明用の条件なら、30万円×100平方メートル=3,000万円です。

ただし、実際には奥行、間口、形状、道路との接し方などを確認します。角地で加算される場合もあるため、「路線価×面積」が最終額や必ず上限になるとはいえません。相続があった年の路線価と調整率を使って計算します。

倍率方式は固定資産税評価額に所在地の倍率を掛ける

路線価が定められていない倍率地域では、固定資産税評価額に評価倍率を掛けます。倍率は国税庁の評価倍率表で、該当年と所在地、地目などを確認します。

説明用の例として、土地の固定資産税評価額が1,000万円、該当する倍率が1.1なら、1,100万円になります。面積だけに倍率を掛ける計算ではありません。

倍率表に「路線」と表示されていれば、路線価方式を確認します。また路線価地域の中で一部の道路だけに数字がない場合は、地域全体が倍率地域とは限りません。特定路線価など別の確認が必要になる場合があります。

貸宅地や借地権は権利の内容から評価する

親が土地を所有し、他人が建物を所有している場合と、親が借りた土地に自分の建物を建てている場合では、相続する権利が異なります。契約内容や地代の授受も確認します。

土地と建物を貸している貸家建付地も、自宅の土地と同じに評価するとは限りません。普通借地権、定期借地権、使用貸借などを区別せず、路線価図のアルファベットの割合だけで減額しないようにしてください。

建物は固定資産税評価額を基に貸付けや区分所有を確認する

建物は固定資産税評価額を基に貸付けや区分所有を確認するに関する資料のイメージ

通常の自用家屋は固定資産税評価額に1.0を掛ける

親が自分で利用していた通常の家屋は、固定資産税評価額に1.0を掛けて評価します。固定資産税評価額が600万円なら、この基本計算は600万円です。

買ったときの建築費や、賃貸経営の帳簿上の未償却残高をそのまま使うのではありません。固定資産税の明細と現在の登記を照合し、増築や未登記の建物も確認します。

死亡時に建築中だった場合や、大きな増改築が固定資産税評価にまだ反映されていない場合には、通常の評価額だけでは足りないことがあります。工事契約、支払い資料、完成時期も用意します。

貸している建物は借家権割合と賃貸割合を反映する

貸家の評価は、自用家屋の価額に、借家権割合と賃貸割合による調整をします。建物全部を貸しているか、一部だけか、死亡時に空室があったかを確認します。

賃貸割合は部屋数だけを単純に割ればよいとは限りません。各独立部分の床面積や利用実態が関係し、一時的な空室の扱いも個別に判断します。過去に貸していたことだけを根拠に、全室賃貸として評価しないでください。

分譲マンションは建物と敷地持分に区分所有の補正を確認する

マンション一室では、家屋部分に加え、敷地全体の評価額に敷地権の割合を掛けた土地部分を評価します。さらに2024年1月1日以後に取得した居住用の区分所有財産には、区分所有補正率を用いる場合があります。

タワーマンションだけに限られる制度ではありません。一棟所有の賃貸マンションや対象外の低層建物などとは扱いが違うので、物件名に「マンション」と付くかどうかで判断せず、登記と構造を確認します。

小規模宅地等の特例は土地評価の後に要件を確認する

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居住用宅地の80%減額は建物や相続税全体の減額ではない

一定の居住用宅地は、特定居住用宅地等に該当すれば、330平方メートルまでの部分について80%の評価減を受けられます。減額する対象は土地などの価額で、建物の評価額や税額全体が80%下がるという意味ではありません。

誰が取得するか、居住や所有を継続する必要があるか、親が死亡時にどのように利用していたかで、要件が変わります。配偶者、同居親族、一定の別居親族を一括して同じ条件にしないことが必要です。

別居や施設入所でも個別の条件を確認する

子が別居していた場合は、別居している子の小規模宅地等の特例で確認する条件があります。同居していないという理由だけで、使える・使えないを決めるのは早計です。

親が老人ホームに入っていた場合にも、要介護認定、施設の種類、入所後の家の利用などが関係します。老人ホーム入所後の自宅と特例の確認点を読み、事実がわかる資料をまとめてください。

特例で基礎控除以下に下がる場合でも、特例を適用するための申告が必要です。最初の評価と特例後の額を計算表で分けて残し、申告要否を誤らないようにします。

不動産以外の財産と合わせて申告の要否を確認する

不動産以外の財産と合わせて申告の要否を確認するに関する資料のイメージ

評価額に税率を掛けるだけで相続税額は出せない

不動産の評価が出たら、預金、株式、生命保険金などの対象財産や加算すべき贈与を確認し、非課税枠、控除できる債務や葬式費用などを整理します。そのうえで基礎控除と比較します。

相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。土地の評価額だけに一定の税率を掛けて、自分が納める税額とする計算ではありません。税額は相続人の構成と実際の取得割合、控除などを踏まえて求めます。

税理士には計算額とともに利用状況や未確認事項を渡す

相談する際は、通知書、登記事項、路線価図、測量資料、賃貸借契約、施設入所や居住の経緯をそろえます。資料が欠けている場合は、欠けた箇所を伝え、何を追加で取るかを確認します。

現地を見ないと判断が難しい形状や権利関係もあります。自己計算した数字を確定額とせず、補正と特例の根拠を説明できるようにしましょう。申告が必要なら、原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内の期限も併せて管理します。

資料の数字が違う場合は評価の目的を先に確かめる

固定資産税の通知にある土地の評価額と、路線価から計算した額が違っていても、それだけでどちらかが間違いとはいえません。資料の用途と評価方法が異なるため、何の金額を相続税の計算へ使うかを確認します。

一方、地積や持分など、物件を特定する情報が食い違う場合は、そのまま有利な方を選ぶことはできません。資料の発行日、対象の土地、共有持分を照合し、相続時の権利と状態に合う情報を確認してください。

評価の依頼時は、土地と建物を一組として渡し、敷地とは別にある進入路なども一覧へ入れます。親と母の共有なら、全体の資料と親の持分を区別します。評価対象を漏らさず伝えることが、計算方法を選ぶ前の大切な準備になります。

資料が揃ったら、通常の評価、賃貸などの権利関係の反映、小規模宅地等の特例、遺産全体の税額計算という順番を確認します。いきなり80%の減額だけを掛けると、対象面積や取得者の条件、建物が対象外であることを見落とします。担当者へは最終額だけでなく、各段階の根拠を説明してもらいましょう。

不動産の相続税評価額でよくある質問

不動産の相続税評価額でよくある質問に関する資料のイメージ

不動産の売却価格で相続税を計算しますか

通常は相続税の評価方法に沿って計算します。売却価格や査定額が、そのまま相続税評価額になるとは限りません。

課税明細書の課税標準額を使ってよいですか

固定資産税評価額を使う計算では、価格や評価額の欄を確認します。課税標準額には住宅用地の軽減などが反映されている場合があり、同じ金額とは限りません。

固定資産税の通知書が見つからない場合はどうしますか

物件所在地の自治体などに、評価証明書や名寄帳の取得方法を確認します。相続人として必要な本人確認や相続関係の書類も聞いておきましょう。

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