相続放棄と家賃請求の整理例 滞納分と死後の請求と子の保証を照合

親の部屋の家賃を請求されたときは、合計額だけで判断せず、どの期間の賃料を、誰に、どの契約に基づいて請求しているのかを分けます。自分も保証人になっている場合は、相続人への請求と同じ家賃の保証請求を重複して数えないことも必要です。
ここでは、父の死亡前の滞納分と死後の期間の賃料、子自身の保証という架空の一件を台帳で整理します。支払義務や相続放棄の可否が確定した事例ではなく、請求書と契約書から未確認の箇所を取り出す記入例です。
- 同じ家賃への相続請求と保証請求を重複させない方法
- 支払日と契約上の期日や原資を分ける記入例
- 死亡日と保証条項や追加署名を照合する箇所
三行の家賃請求を同じ契約と期間へ結び付ける

父が2026年9月20日に亡くなり、同居して住み続ける人はいないものとします。普通の住宅賃貸借で月額家賃は6万円、契約終了の手続きはまだ確認できていません。10月5日、子Aへ8月分の滞納と10月分、合計12万円の請求が届き、同時にAの保証責任にも言及されたという設定です。
| 管理番号と請求 | 対象期間・額 | 請求根拠として確認する書類 |
|---|---|---|
| R01 父の死亡前の滞納 | 8月分6万円 | 賃貸借契約と入出金履歴。既払い・相殺等は未確認 |
| R02 死亡後の期間の賃料 | 10月分6万円 | 契約の継続・終了、月額と対象期間。支払期日は条項を確認 |
| G01 Aへの保証請求 | R01・R02と同じ12万円を対象とする主張 | Aの保証契約、保証する範囲と元本確定 |
R01とR02を足した請求額は12万円です。G01は同じ賃料に対する別の請求根拠なので、さらに12万円を加えて家賃24万円と記録しません。既に誰かが払っているなら、その債務の残額がどうなったかも確認します。
通常の賃貸借は、借主の死亡だけで当然に終了するものではありません。ただし、R02が請求書に載っていることから、A自身がその全額を払う義務まで確定するわけではありません。対象期間、契約終了の有無と、相続・保証それぞれの責任を確認します。
支払日と原資と未確認を請求台帳へ記入する

台帳には、請求日、契約上の支払期日、実際に支払った日を別欄にします。10月5日は請求を受けた日であり、R02の支払期日であると推定してはいけません。支払期日は契約書から転記し、分からなければ未確認と書きます。
| 請求行 | 支払日と原資の記入例 | 未確認のまま実行しないこと |
|---|---|---|
| R01 | 未払い。原資は未定 | 父の預金から出す案は単純承認への影響を先に相談 |
| R02 | 父の口座で自動引落しが続いていないか照会予定 | 引落し済みの事実を確認前に記入しない |
| G01 | 保証範囲を確認後、Aの自己資金による履行を検討 | 保証対象・残額を確認せず12万円を確約しない |
故人の現金・預金から債務を払う行為は、相続財産の処分として法定単純承認が問題になります。請求が家賃だから、自動引落しだからと安全を決め付けず、既に行われた支出は日付・金額・指示者・使途を記録して相談します。
Aの自己資金と父の預金は、同じ支払欄へ混ぜません。自分の資金で払うことと遺産を処分することは異なりますが、自費なら同じ書面に含まれる解約、家財処分、新たな債務引受けまで問題がなくなるわけではありません。
子の保証請求を死亡日と契約条項で突き合わせる

Aが自分で負った保証責任は、父から相続する債務と別です。相続放棄が受理されても、その事実だけでA自身の保証が消滅するわけではありません。一方、保証人なら請求書の全項目を当然に払う、という関係でもありません。
保証書G01を取り寄せ、契約日、更新・変更日、極度額、保証する債務、主債務者の死亡に関する条項を読みます。賃貸借の更新日と、保証について新しい合意をした日を同じものとして転記しないようにします。
2020年4月1日以後の契約に適用される個人根保証の規定では、極度額の定めや、主債務者・保証人の死亡による元本確定が重要です。死亡後に新たに発生する賃料を、死亡前の滞納分と同じように保証へ含めてはいけません。確定した元本に関する利息等と、新たな元本も区別します。
| 台帳へ戻して確認する欄 | G01と照合する内容 |
|---|---|
| R01 8月分 | 死亡前に発生した債務か、既払いがないか、保証範囲内か |
| R02 10月分 | 死亡後に新たに生じた債務か、元本確定後の対象となるか |
| 契約の適用法 | 2020年4月前の契約か、その後の保証合意・変更があるか |
| 保証の残額 | 極度額と既払額、利息・費用等を含む請求内訳 |
この例では保証書の契約日や条項は未取得の設定なので、R01だけ払う、R02は絶対に払わないと結論を記入しません。請求の全額を認める前に、資料を弁護士へ示してG01の対象行と残額を確認します。
請求への返答と解約等の署名を別の作業にする

貸主からの依頼が家賃だけでなく、解約通知、鍵の引渡し、敷金の受領、家財処分の同意まで含むなら、台帳に別の作業行を追加します。支払いについて返答したことを、全ての処分への承諾に広げないためです。
| 追加された依頼 | 台帳へ残す未確認事項 |
|---|---|
| 契約を解約する署名 | 誰が賃借権を処理できるか、相続放棄への影響 |
| 敷金をAへ返す提案 | 控除明細、返還を受ける権利と受領者 |
| 家財処分の承諾 | 財産の価値、処分権限、必要な保存の範囲 |
| 鍵を返す依頼 | 返却先、部屋の管理、契約終了や明渡しとの関係 |
連絡時は、父の死亡日、相続放棄を検討していること、請求と保証条項を確認中であることを伝え、R01・R02の期間別内訳と保証書の写しを求めます。どの行為への回答を保留しているかも記録します。この記入例を、そのまま解除通知や債務を認める文面として使わないでください。
放棄時に財産を現に占有している場合の保存義務も、支払責任とは別に確認します。熟慮期間は原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月であり、家賃の確認が終わるまで自動で待ってもらえるものではありません。
請求書、賃貸借契約、保証書、入出金履歴をR01・R02・G01へ結び付け、分からない欄を残して相談してください。合計額へすぐ署名するより、何をどの立場で払うのかを確認することが先です。
手続きの状況や相談したい内容を整理する際は、相続の相談窓口もご利用ください。
よくある質問

相続人への家賃請求と保証人への請求は足し算しますか
同じ賃料債務に対する請求なら、別の家賃として重複加算しません。対象期間と残額、相続と保証それぞれの請求根拠を分けて確認します。
父の口座から引き落とされていたら放棄できませんか
引落しの時期、内容、指示等を確認し、単純承認への影響を個別に相談します。事実を確認する前に安全又は不可と一律に決めないでください。
保証人なら死亡後の家賃も全て払いますか
契約時期と内容、個人根保証の元本確定等によります。相続放棄で保証が当然に消えるわけではありませんが、請求された死亡後の新規賃料が全て保証対象になるとも限りません。