遺留分が払えないときの対処法 分割払いと支払猶予の進め方

遺留分を請求されたものの、相続した財産が自宅や土地に偏り、現金を用意できないことがあります。支払えない事情があっても請求が消えるわけではありませんが、請求額を確かめたうえで分割払いや支払時期を交渉する余地はあります。
当事者間の合意による分割払いと、裁判所に求める支払期限の許与は別の方法です。まず「いくら負担するのか」と「いつどの資金で払うのか」を分けて整理します。
- 資金がなくても請求を無視せず請求額の根拠を確認する
- 分割払いは相手との合意が必要で期限の許与は裁判所の判断による
- 売却や借入は税金と諸費用を引いた手取りや返済能力で比較する
遺留分が払えなくても請求を放置しない

現金不足だけで支払義務はなくならない
現在の遺留分侵害額請求は、原則として金銭の支払いを求める制度です。遺言で土地を受け取ったから、その土地の一部を渡せば当然に解決するという仕組みではありません。相手が同意するかとは別に、まず金銭債務の額を確認します。
請求書に書かれた回答期限が短い場合も、直ちに全額を認める必要はありません。受け取った日、相手、請求内容、求められている資料を整理し、計算根拠の提示を求めるなど、返答を検討します。
一方で、放置すれば遅延損害金や裁判手続きの問題が生じることがあります。裁判所から書類が届いている場合は、通常の手紙とは分けて期限を確認し、対応を弁護士に相談します。
支払額を確認してから資金計画を立てる

請求額の確認と資金不足の説明を分ける
遺留分がある人なのか、請求の期間を過ぎていないか、遺産と贈与の範囲や評価が適切かを確かめます。請求額を争う理由と、払う資金がない事情は異なるので、「払えないから請求が間違い」という説明にはしません。
不動産の相続税評価額と遺留分の計算に用いる価額は同じとは限りません。自分に有利な税務上の数字だけで計算せず、評価時点や評価方法を含めて検討します。
支払可能額を考えるときは、自分の預金、引き継いだ預金、生活費、相続税、担保付きの借入などを分けます。相続税の延納と遺留分の支払猶予は別制度で、税務署への手続きで遺留分の支払いが自動的に延びるわけではありません。
請求額を認める前にそろえるもの
遺言書の内容だけでなく、亡くなった人の死亡時の財産と負債、関係する贈与、請求者が取得したものを確認します。受け取った不動産に抵当権がある場合は、名義上の資産額と実際に現金化できる額が違うこともあります。
請求書の計算と自分の一覧で差があるところを、評価方法の違い、財産の漏れ、既に支払った金額の三つに分けてみてください。資金の話に入る前に金額の争点が整理されると、根拠のない額を基準に借入することを避けられます。
請求が正しいかの調査中に、支払総額を無条件で認める書面へ署名しないことも大切です。資料の提供や協議を進める連絡と、債務額を確定する合意の違いを意識します。
| 項目 | 確認内容 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 分割払い | 相手の合意 | 期日と金額と遅延時の条件 |
| 期限の許与 | 裁判所の判断 | 猶予の必要性と資金見込み |
| 不動産売却 | 売却手続きと入金 | 費用と税金を引いた手取り |
| 融資 | 審査と返済能力 | 担保と金利と毎月の返済 |
| 代物弁済 | 相手の合意 | 不動産評価と税務や登記 |
相続税の納付も重なる場合は、土地の相続税が払えないときの対処法も踏まえ、税の納期限と遺留分の支払い時期を別々に整理してください。
分割払いと期限の許与は手続きが異なる

分割の約束と裁判所の猶予を区別する
相手が合意すれば、一括ではなく分割で支払うことや、一定期日まで支払いを待つことを話し合えます。毎月の額、最終回、利息や遅延損害金、支払いが遅れた場合の扱いまで具体的にします。
民法1047条5項は、裁判所が請求を受けた人の請求により、金銭債務の全部または一部について相当の期限を許与できると定めています。申し出ただけで必ず認められる制度でも、元本を免除する制度でもありません。
猶予の必要性を説明するためには、資産の内容、現金化の見込み、借入の可否、生活や事業への影響などの資料が必要になります。どの手続きで求めるか、請求済みの事件との関係を弁護士に確認します。
毎月払える金額から提案を組み立てる
分割払いの提案は、希望する回数を先に決めるより、収入から生活費と既存の返済、税金などを引いた継続可能な額を把握して作ります。退職金や売却代金など一時的な入金を見込む場合は、入金日が確定しているかも区別します。
例として、月々の余裕が5万円しかないのに、早く合意したいからと毎月15万円を約束すれば、合意後の不履行につながります。支払う人の事情だけでなく、受け取る人が待つ負担もあるため、説明資料と実行可能な案を示します。
裁判所による期限の許与を求める場合も、単にお金がないという説明では足りません。なぜ今は払えず、どの時期にどの資金を用意する見込みがあるかを整理することが、手続きの検討に役立ちます。
不動産の売却や融資を選ぶ前に比較する

売却代金の総額ではなく使える金額を見る
不動産を売って支払うなら、売却見込額からローンの返済、仲介手数料、登記費用、譲渡所得税などを差し引いた金額を把握します。売り出してから入金までの期間と、請求への回答や支払期限が合うかも確認します。
例えば、売値が3,000万円でも、借入返済や諸費用が残れば3,000万円全額を支払いに充てることはできません。相続税の取得費加算などが関係するかは別途条件を確かめ、控除を使える前提で資金を約束しないようにします。
融資を使う場合は、担保価値だけでなく毎月返済できる収入が必要です。不動産そのものを渡す代物弁済は相手との合意が必要で、税務や登記費用も生じ得ます。借入、売却、代物弁済の費用と時間を比較してから提案します。
家を売る案では売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。相続した家の売却でかかる税金を確認し、諸費用も引いた金額で支払えるかを判断します。
支払条件が決まったら合意内容を書面に残す

合意は金額と清算範囲まで記載する
合意書には支払総額、期日、振込先、分割条件のほか、どの遺留分請求を解決するのかを記載します。一部の支払いなのか、すべてを清算する合意なのかが曖昧だと、支払った後にも争いが残ります。
強制執行に関する内容を含む公正証書や裁判上の和解などは、支払いを受ける側にも効果があります。内容を理解せず署名せず、期限の利益を失う条件や保証の有無も確かめます。
最初に、請求書、遺言書、財産一覧と、いつ何円を用意できるかの資金表をそろえてください。金額の争いがある部分を明示したうえで、実行できる支払方法を検討することが、約束を守れる解決につながります。
売却と相続税の期限を同じ表で管理する
不動産売却には、名義の整理、買主探し、契約、引渡しという時間がかかります。買主が見つかっただけでは資金が入るとは限らず、ローン特約や境界確認などで入金時期がずれる可能性があります。
資金表では、相続税の納期限、遺留分の協議期限、売却代金の入金予定、借入の実行予定を分けます。税務上の猶予を利用する場合にも、遺留分の相手へ当然に同じ期間を待ってもらえるわけではありません。
住んでいる家を売る案では転居費用とその後の住居費も必要です。支払いのために売却することが家族の生活に及ぼす影響まで計算し、当面の支払いだけで資金計画を終えないようにします。
よくある質問

お金がなければ遺留分は払わなくてよいですか
現金不足だけで支払義務はなくなりません。請求の妥当性と支払方法を分けて検討します。
分割払いを一方的に決められますか
決められません。相手との合意が必要で、裁判所による期限の許与とも別の方法です。
相続した土地を渡して払うことはできますか
相手が同意するなどの条件が必要です。評価、登記、税金を確認し、金銭債務をどう清算するかを書面で決めます。