亡くなった人の医療費控除 支払日と準確定申告・債務控除の違い

親が亡くなった後に入院費を払ったときは、診療を受けた日だけでなく、誰がいつ支払ったかで申告先を分けます。死亡後に払った医療費は、親の準確定申告の医療費控除へは入れられません。
一方、生計を一にしていた家族が自分で負担した医療費として、その家族の所得税で控除を検討できる場合があります。死亡時に残っていた確実な未払債務は相続税でも別に判定するため、三つの扱いを同じ表で整理します。
医療を受けた日より誰がいつ支払ったかで控除先を分ける

親が診療を受けた費用でも、すべて親の所得税の控除になるわけではありません。医療費控除は実際の支払いと生計関係に基づくため、病院の請求期間だけでは判断できません。
亡くなった人の所得税と家族の所得税を区別する
親が死亡日までに支払った分、死亡後に子が支払った分、まだ未払いの分を分けます。請求書の宛名が親だから親の控除、領収書を子が持っているから子の控除、という決め方はしません。誰の資金で実際に負担したかも確かめます。
相続税の未払債務は別の列で確認する
相続税の債務控除は、死亡日に親の債務として残っていたかを確認する制度です。所得税の医療費控除とは、税目も対象となる時点も違います。同じ病院代を整理するときは、二つの控除の金額を一つの計算欄に混ぜないようにします。
| 支払いの状況 | 確認する申告 |
|---|---|
| 親が死亡日までに負担して支払い | 親の準確定申告の医療費控除 |
| 死亡後に同一生計の子が自己資金で負担 | 子自身の医療費控除を要件に沿って判定 |
| 死亡日に確実な未払債務が残る | 相続税の債務控除を別に判定 |
| 費用を補填する給付や返金がある | 対象の医療費と対応させ二重控除を防ぐ |
生前に本人が支払った分は準確定申告で判定する

国税庁は、準確定申告の医療費控除の対象を、死亡の日までに本人が支払った医療費としています。死亡後に相続人等が払った分を、本人の準確定申告へ含めることはできません。
年初から死亡日までに実際に支払った額を集める
年初から死亡日までの領収書と出金記録を照合します。領収書が死亡後に郵送されても、実際の支払いが生前だったのかを確認してください。逆に、生前の診療について死亡後に請求されて支払ったものは、生前支払分とは別です。
保険金や高額療養費の補填を対応させる
医療保険の給付や高額療養費などの補填がある場合は、その対象になった医療費と対応させます。未確定の補填があれば見込額等の扱いを税理士へ確認します。医療費控除は所得から引く額なので、控除額がそのまま税の還付額になるわけではありません。
死亡後に家族が支払った分はその人の医療費控除を検討する

死亡後に子が自己の資金で払った場合は、その子の医療費控除を検討します。ただし、生計を一にする親族のための医療費を負担したことなど、通常の医療費控除の条件を満たす必要があります。
生計を一にしていたかを確かめる
生計を一にするかは、同じ住所かだけで決まるものではありません。別居でも継続した仕送りなどの事情がある一方、親子というだけで当然に同一生計になるわけでもありません。治療を受けた当時の生活費の負担と、今回の支払者を資料で確認します。国税庁の死亡した親族の医療費の事例も、治療等を受けた時点の生計関係で長男の控除を判断しています。
遺産から払った場合と家族の資金で払った場合を分ける
親の遺産から支払ったのか、子が最終的に自己負担したのかが分からない場合は、出金と精算の経緯を整理します。家族間で都合のよい人へ控除を付け替えることはできません。子の年間医療費や補填額、所得に応じた控除の基準も併せて確認します。
死亡時の未払医療費は相続税の債務控除を別に判定する

死亡時に残っていた未払医療費が確実な親の債務であれば、相続税の債務控除の対象を検討します。引くのは相続税額ではなく、財産の課税価格です。
死亡日現在に存在する確実な債務を確認する
例として、死亡日の入院未払金30万円を、生計を一にしていた子が死亡後に自分の資金で負担したものとします。親の準確定申告の医療費控除へは入りませんが、子自身の医療費控除と、相続税の債務控除をそれぞれの要件で検討します。
医療費控除と債務控除の二つの計算を混ぜない
両方が成立する場合があるのは、別の税と要件で判断しているためです。ただし、相続人ごとの最終負担や、後日の精算を確かめる必要があります。既に生前に支払い済みの費用を、死亡日にも未払いだったものとして重ねて債務へ入れないでください。
葬儀に関わる支出は未払医療費とは別です。相続税で差し引く葬式費用の条件も確認し、同じ領収書を違う費目へ重ねないようにします。
請求書と領収書や補填の通知を支払者別に保管する

病院の請求書と領収書に、支払口座の記録、補填の通知を対応させます。診療期間、死亡日残額、支払日、支払者、最終負担者が分かれば、申告先の違いを説明しやすくなります。
未払残高と後日の支払を一続きに残す
死亡時の残額が不明なら、病院へ確認し、前払いや返金も含めて実額を確かめます。補填の通知が後から届いた場合は、既にした申告に影響するかを確認します。返金を受けた人と、当初払った人が違う場合も記録してください。
準確定申告と相続税の期限を並行管理する
申告が必要な準確定申告は原則として相続開始を知った日の翌日から4か月以内、相続税申告は原則10か月以内です。書類がすべて届くまで放置せず、期限ごとに不足を整理します。まず病院へ死亡日時点の未払額を尋ね、支払者別の表を作ってください。
よくある質問

生前の診療なら死亡後に払っても親の控除ですか
親の準確定申告には入りません。対象は死亡日までに本人が支払った医療費で、死亡後の家族の支払は別に判定します。
別居の子が払った場合は医療費控除できませんか
別居だけで対象外と決まるわけではありません。生計を一にしていたか、誰が実際に負担したかなどを確認します。
医療費控除に使ったら相続税の債務控除はできませんか
一律にそうは言えません。死亡後支払分では家族の医療費控除と相続税の債務控除が両方成立する場合があり、それぞれの条件を確認します。