定期金に関する権利の相続税評価 年金契約の確認資料と計算

年金として受け取る権利を相続した場合、残りの受取額をそのまま合計すれば相続税の評価が終わるわけではありません。
給付事由が既に発生しているか、有期か終身か、解約や一括受取りができるかで計算方法が変わります。
最初に保険証券と支払通知を確認し、保険会社等へ相続開始日時点の評価資料を依頼してください。毎年の入金額だけでは、申告に使う価額を判断できません。
- 定期金の種類と給付開始前後で異なる評価の考え方
- 解約返戻金や一時金と将来給付額を比較する方法
- 保険会社へ依頼する評価資料と受取り時の所得税との違い
定期金の権利は受取りの開始前後と契約内容で評価が変わる

個人年金の権利と公的な遺族年金を区別する
ここで扱うのは、契約等に基づいて一定の給付を継続して受け取る権利の評価です。
国民年金や厚生年金の遺族年金を、一律に同じ相続財産として計上する説明ではありません。
また、既に支払期が来ている未受領の給付と、将来にわたって受け取る権利も区別します。何の契約から、誰に、いつ支払われる権利かを特定してください。
税負担は契約者の名義だけでなく保険料負担者等も確認する
保険を使う年金では、契約者、実際に保険料を負担した人、被保険者、受取人を確認します。
親が負担していたのか、子自身が負担したのか等により、相続税・贈与税・所得税の確認が異なる場合があります。
給付事由が発生した定期金は解約返戻金などを比較する

有期定期金は返戻金と一時金と複利年金現価による額を確認する
給付事由が発生した有期定期金は、原則として三つの金額を比較し、いずれか多い金額で評価します。
比較するのは解約返戻金、選択できる一時金、残存期間と予定利率等から求める複利年金現価の額です。
存在しない返戻金や選べない一時金を、想像で設定しないでください。
複利年金現価は、将来の給付を現在の価値へ換算する考え方です。
残り10年で年100万円だから評価は必ず1000万円、という単純な総額だけでは判断できません。
比較の手順だけを、給付が始まっている有期定期金の仮定で確かめます。年1回の給付が毎年100万円、計算上の残りの給付期間が10年、契約の予定利率が2%で、権利を取得した日は給付日ではないものとします。相続開始時点の解約返戻金880万円と、選べる一時金900万円が評価資料で確認できた場合です。
| 比較する額 | この例の金額 |
|---|---|
| 解約返戻金 | 880万円 |
| 選べる一時金 | 900万円 |
| 年額×複利年金現価率 | 100万円×8.983=898.3万円 |
予定利率2%・10年の複利年金現価率は、小数点以下第3位までで8.983です。この例では3額のうち最も多い900万円を評価に使い、残りの受取総額1,000万円をそのまま使いません。評価額が900万円になることと、実際の受取方法を一時金へ変更することは別です。返戻金や一時金がない契約へ架空の額を補わず、実際の契約条件を照合してください。
終身定期金や保証期間付きは契約に応じて計算する
終身定期金では、対象となる人の余命年数に応じた計算等を確認します。
保証期間付き終身年金のように複数の性質を持つ契約では、有期部分と終身部分等の扱いも含めて判定が必要です。
無期定期金なども含め、名称が「年金」だからすべて同じ計算式になるわけではありません。
具体的な契約を、相続税法24条と評価明細書のどの区分で計算するかを確認します。
保険会社から相続開始日時点の評価資料を取り寄せる

年金支払額だけでは評価額が決まらない
保険会社等には、相続開始日を指定して、契約の種類、解約返戻金、一時金選択の可否と金額、残存給付期間、年額、予定利率等が分かる資料を依頼します。
一般的な解約試算ではなく、相続税評価に必要なものと伝えてください。
予定利率や残存期間と返戻金の有無を照会する
| 確認資料 | 評価で使う内容 |
|---|---|
| 保険証券と約款 | 受取人と給付期間や保証期間 |
| 年金支払通知 | 支払額と支払期日 |
| 相続開始日時点の証明 | 解約返戻金や一時金額 |
| 評価計算用の資料 | 予定利率と残存期間等 |
| 保険料の支払記録 | 実際の負担者と負担割合 |
名義の変更前に、元の契約と負担者の記録を保存します。相続税申告の必要書類に、契約固有の評価資料を加えて準備してください。
年金開始前の契約は給付事由未発生の評価を確認する

生命保険契約に関する権利は別の扱いを確認する
定期金給付事由が発生していない権利については、生命保険契約を除く相続税法25条の扱いと、生命保険契約に関する権利の評価を区別します。
どちらも受取り前だから同じ、と一つにまとめないでください。
解約返戻金がない契約も一律ゼロとはしない
給付事由未発生の定期金で、解約返戻金を支払う定めがあるものは原則その金額を確認します。
定めがないものは、払込方法、経過期間、予定利率等を使った別の計算を行うため、返戻金ゼロだから評価ゼロとは限りません。
生命保険契約の権利では、相続開始時に解約したとした場合の返戻金等を確認する取扱いがあります。
契約の区分と給付事由を保険会社・税理士へ確認してから、申告の項目を選びます。
評価額と毎年受け取る年金の所得税を区別する

相続時の申告と受取り時の課税は別の確認が必要
権利を取得したときの相続税と、その後に毎年受け取る年金の所得税は、別の計算です。
相続税の対象となった部分等を踏まえた取扱いがあるため、毎年の受取額全額に単純に二重課税する説明にも注意が必要です。
死亡保険金の非課税枠も、すべての年金権へそのまま適用されるものではありません。契約の性質と取得原因を確認します。
契約と受取方法を変える前に税務を確認する
一時金に変えれば評価を自由に選べる、という制度ではありません。
契約上の選択と税務上の評価額の決まり方を分け、変更による手数料や保障への影響も確認してください。
保険証券、年金通知、保険料の履歴をそろえ、まず相続開始日時点の証明資料を取り寄せます。
その資料を基に、権利の種類と評価の区分を税理士と確認するのが出発点です。
よくある質問

残りの年金額を合計すれば相続税評価額になりますか
単純合計とは限りません。定期金の種類に応じて、解約返戻金、一時金、予定利率等を使う計算による金額を確認します。
解約返戻金がなければ評価額はゼロですか
ゼロとは限りません。給付開始前後や契約区分によって、将来給付額や払込額等を使う別の計算が必要になります。
相続税を申告した年金は毎年の所得税を確認しなくてよいですか
受取り時の所得税は別に確認が必要です。相続税の対象となった権利の評価資料と、年金の支払通知を保管してください。