相続放棄と自己破産はどう違うか 手続きの時期と遺産の扱い

相続放棄は親の遺産を引き継がないための手続きです。自己破産は、自分の返せない債務を整理する手続きで、目的が違います。
自分の破産手続き中に相続が発生したときは、親の死亡日と破産手続開始決定日を担当弁護士へ伝えます。
相続放棄の申述ができることと、破産財団への効力は別に確認が必要です。
- 親の借金と自分の借金では検討する制度が違う
- 相続と破産手続開始の前後で遺産の扱いが変わる
- 家庭裁判所でする放棄と分割協議で取り分をなくす合意は違う
相続放棄は親の遺産を引き継がず自己破産は自分の債務を整理する

放棄しても自分の借金は消えない
親に多額の負債があれば、相続放棄を検討できます。家庭裁判所へ申述し、財産も債務も原則として引き継がない選択です。
一方、自分が借りたお金は親の遺産と別です。親の相続を放棄しても、自分の債権者への返済義務がなくなるわけではありません。
破産の申立てと開始決定と免責は違う
破産は、財産を清算して債権者へ配当する手続きです。残った債務の責任を免れる免責とは分けて考えます。
弁護士に相談した日、破産を申し立てた日、裁判所が開始を決定した日は、それぞれ異なります。「破産中」とだけ伝えず、通知書にある日付を確かめてください。
| 制度 | 主な対象 | 確認する裁判所 |
|---|---|---|
| 相続放棄 | 亡くなった人の財産と債務を引き継ぐか | 家庭裁判所 |
| 自己破産 | 本人の返せない債務と財産の清算 | 地方裁判所 |
相続開始と破産手続開始の前後で遺産の扱いが変わる

死亡日と開始決定日を一枚に記録する
原則として、破産手続開始時に持っている財産が破産財団の対象です。遺産分割や預金の名義変更をした日だけで判断しません。
例えば父の死亡が4月1日、自分の破産開始決定が5月1日なら、父の相続は開始決定前に発生しています。6月に名義変更する予定でも、この順序は変わりません。
反対に、父の死亡が開始決定後なら、開始後に新たに取得した財産としての扱いを確認します。どちらの場合も財産を隠さず、担当者へ報告します。
開始後の放棄には破産法238条の特則がある
開始決定前に相続が始まり、開始決定後に放棄した場合、破産財団に対しては限定承認の効力となる特則があります。
先の例で5月1日の開始後に放棄しても、それだけで遺産を破産財団から外せるとは限りません。家庭裁判所での申述の受理と、財団に対する効力は別です。
破産管財人が放棄の効力を認める制度もありますが、所定の申述が関わります。自分だけで結論を出さず、担当弁護士と管財人の確認を受けます。
家庭裁判所の相続放棄と遺産分割で取り分をゼロにする合意は違う

分割合意は財産処分として問題になることがある
兄弟だけで「遺産を全部長男に渡す」と決めても、家庭裁判所の相続放棄にはなりません。親の債権者への責任も、それだけでなくなるわけではありません。
自己破産との関係では、取得できる財産を他人へ渡す分割合意が問題になることがあります。借金から財産を守る方法として、取り分をゼロにしないでください。
債権者への対応を自己判断で進めない
破産前の財産処分も確認されます。契約書の名前が「放棄」でも、実際にどの手続きをしたかが基準です。
放棄、遺産分割、贈与は別の行為です。作成中の協議書や家族への送金予定があれば、署名や振込みの前に担当者へ見せます。
放棄の期限を確認し財産を隠さず担当者へ伝える

熟慮期間と単純承認の問題を確認する
相続放棄は、原則として自己のために相続が始まったと知った時から3か月以内です。破産の相談中であることだけでは延長されません。
調査が間に合わなければ、熟慮期間の伸長と起算日を確認します。遺産の処分や使用が、放棄に影響しないかも相談します。
受理と民事上の有効性を区別する
放棄の申述が受理されても、後日の紛争でその効力が問題になることがあります。受理通知だけを見て、あらゆる相手との問題が解決したと判断しません。
親の財産と負債、破産関係の通知、協議書の案、送金記録を持参します。親の負債が不明なら、借金の調査も並行して進めてください。
よくある質問

自己破産した人も相続人になりますか
自己破産したことだけで相続人でなくなるわけではありません。財産の扱いは相続開始と破産開始の前後などで確認します。
兄弟に全部渡すと決めれば相続放棄になりますか
なりません。家庭裁判所の相続放棄と、遺産分割で取得額をゼロにする合意は別です。
破産開始後に放棄すれば遺産は財団から外れますか
必ず外れるわけではありません。開始前に相続が始まっていた場合は破産法238条の特則があり、管財人等への確認が必要です。