自筆証書遺言を代筆してもらえるか 手が動かないときの作成方法

遺言の原本と照合用の資料を重ねて確認するイメージ

手が震えたり麻痺があったりして文字を書けないときも、財産をどう残したいかを本人が決められる場合はあります。ただし、家族が本文を代筆して本人が署名するだけで、自筆証書遺言になるわけではありません。

自書が必要な範囲と作成補助ができる範囲を分け、身体状況に合う方式を相談します。公正証書の出張や意思伝達の方法も含め、本人の希望を確認できるうちに準備を進めましょう。

この記事でわかること
  • 書字の困難と内容を理解して決める力を分ける
  • 本文の代筆と非自書の財産目録は扱いが違う
  • 公証役場へ書字や会話の状態と本人の希望を伝える
目次

自書できないことと意思を決められないことを分ける

贈与の合意を記録する契約書類

手を動かせないことだけで、遺言をする能力がないと判断することはできません。反対に、氏名だけ書けることが、財産と受取人を理解して決められる証拠になるとも限りません。

例えば脳梗塞後の父が、会話では財産と家族の状況を説明できるが、利き手で長文を書けないとします。この場合は書字の制約を正確に伝え、別の方式で本人の意思を確認する方法を公証人へ相談します。

相談メモには、話す・聞く・読む・書く状態をそれぞれ記します。「認知症なし」「寝たきり」という一つの説明だけで、必要な支援を決めないようにします。

自筆本文の代筆と財産目録の作成補助を区別する

提出書類を照合するための紙資料と筆記具

現在の自筆証書遺言では、本文、日付、氏名を本人が自書し、押印することが原則です。家族が財産の分け方を本文へ書き、本人が署名押印だけする方法は、この自書の要件を満たしません。

一方、本文と一体の財産目録には自書不要の特例があり、パソコンや通帳の写し等を使えます。ただしその目録にも、毎葉、非自書記載が両面にあれば両面に、本人の署名押印が必要です。

助けたい作業区別すること
財産資料を集める通帳や登記の整理は作成準備の補助
財産目録をパソコンで作る目録の特例と本人の署名押印を確認
渡す相手と財産の本文を書く家族の代筆を本人の自書へ置き換えない
本人の氏名を家族が書く本人の署名の代わりにはしない

目録だけを作れば足りるわけではないため、書く量を減らせば本人の自書が可能か、別方式がよいかを相談します。署名する動作も難しい場合は、その点を省略せず伝えてください。

手添えや録画だけで方式を置き換えない

取引記録を保管するファイルと資料

本人の手に家族が手を添えた場合の評価は、本人がどのように文字を書いたか等の個別事情に関わります。「手を添えれば必ず有効」という手順として勧めることはできません。家族が動かした手を、後で本人がすべて書いたと説明しないようにします。

本人がうなずいた動画や録音は、作成経過の資料になる場合があっても、それだけで現行の普通方式の遺言に置き換わるわけではありません。家族が書いた書面と動画を合わせれば自筆証書になるとも限りません。

2026年に公布された新しい保管証書遺言等の制度と、現在利用する方式は分けてください。将来の仕組みを先取りして、スマートフォンの動画だけを完成した遺言として残さないようにします。

公証役場へ身体状況と意思伝達の方法を伝える

支払内容を確かめる領収書と計算道具

自書が難しいときは、公正証書遺言を相談する方法があります。公証人が本人の真意を確認する手続きであり、子が父の代理として遺言を作る制度ではありません。

役場へ行けない場合は、病院や施設、自宅への出張の可否を尋ねます。日程、証人、面会条件等を調整するため、本人確認資料と財産や受取人の希望を早めに準備します。

話すことが難しい人については、民法969条の2に口授に代える方式の特則があります。通訳等を使う必要があるか、どのように本人の意思を確認できるかを、公証人へ具体的に相談してください。単に家族が希望を読み上げることとは違います。

現在の公正証書には電子サインの手続きがありますが、本人ができない場合の取扱いも含め役場に確認します。身体の制約と意思確認の要件を別々に伝えることが大切です。

治療予定と必要資料を早めに整理する

相談に持参する書類と封筒

相談する際は、本人の希望、家族関係、主な財産、入院や手術の予定、連絡できる人を一枚にまとめます。家族の希望と本人の希望が一致しているか分からない点も、そのまま伝えてください。

急な体調悪化がある場合は、通常方式に加え、危急時等の特別方式が検討されることもあります。ただし厳格な要件があり、証人や手続きの確認が必要なため、家族だけで簡易な代筆へ置き換えず、直ちに専門家へ状況を伝えます。

依頼すればその日中に必ず完成するとは限りません。予約や資料の準備を前へ進めながら、本人の体調と自由な意思を優先して作成方法を選びましょう。

よくある質問

疑問点を調べるための本とメモ

家族が本文を書いて本人が署名すれば自筆証書になりますか

現在の自筆証書は本文、日付、氏名を本人が自書することが原則です。本人の署名押印だけで家族の代筆本文を補えるわけではありません。

手が動かないと公正証書遺言も作れませんか

書字の困難と本人の意思確認は別です。身体状況と会話等の方法を公証人へ伝え、出張や方式上の対応を相談します。

希望を動画で撮れば遺言として足りますか

動画だけで現在の普通方式の遺言に置き換わるわけではありません。公布された将来の制度と現行方式を分け、利用できる方法を確認してください。

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