遺留分の合意書に決めること 分割払いと清算条項の確認表

遺留分について金額の話がまとまったら、合意書で支払いの条件と解決する範囲を確かめます。総額だけを書いても、分割日や遅延時の扱い、ほかに残っている相続問題までは明確になりません。
合意する600万円を頭金と10回に分ける架空例から、条項ごとの確認点を整理します。署名後の支払台帳と税務も含め、合意と実行をつなげましょう。
- 対象となる相続と遺留分の請求を特定する
- 総額と各回の支払いを検算し遅延時の条件を決める
- 清算する範囲と未解決事項や税務を署名前に確認する
何の相続と請求を解決する合意かを特定する

合意書の最初では、被相続人と死亡日、請求した人、支払う人、対象の請求を特定します。遺留分についての合意と、遺産分割協議を同じものとして作らないようにします。
例えば遺留分の金銭請求だけがまとまり、親の預金の一部はまだ分割を話し合っているなら、その問題まで終わらせる意図があるのかを確認します。「相続の一切を解決する」という広い表現は、その意図と合うかを弁護士へ見せてください。
2019年7月1日以後開始の相続では、原則として侵害額相当の金銭請求です。相続開始前に家庭裁判所の許可を得る遺留分放棄とも、別の段階の合意として整理します。
金額と支払日と振込先を具体的に決める

総額、既払金、これから払う額を分けます。以下は利息等を置かず、合意額600万円を頭金200万円と、残額400万円の月40万円・10回で払う仮定です。
| 条項の確認欄 | 架空例と詰める内容 |
|---|---|
| 合意額と既払金 | 600万円。既払いがあるなら別に明記し残額と照合 |
| 頭金 | 200万円の支払日と振込先 |
| 分割の残額 | 400万円。40万円×10回で400万円と検算 |
| 各回の期日 | 初回月から最終回まで具体的な日を並べる |
| 費用と利息 | 振込手数料、利息、休業日に当たる期日の扱い |
「毎月無理のない額を払う」では、いつ完済するかが決まりません。相手が確認できる予定表にし、初回と最終回、端数がある場合の最終額を明確にします。
将来の売却代金で払う部分があるなら、売却できなかった場合の扱いも決めます。資金不足への対策と、実際に合意した支払条件を同じ意味にせず、確約できる内容を確認してください。
分割払いの遅延と回収方法を確認する

分割払いが遅れたときは、何日又は何回の遅れで残額の一括支払いが問題になるか、事前の催告を要するか、遅延損害金をどう定めるかを確認します。意味が分からないまま期限の利益を失う条項へ署名しないようにします。
私署の合意書に署名があるだけで、直ちに預金や給与の差押えができるとは限りません。金銭債務について強制執行認諾文言のある公正証書にするか、調停調書等で合意するか、回収方法も専門家へ相談します。
担保や保証を付ける場合は、対象、額、解除の時期、費用等も別に決めます。支払う人にも受け取る人にも影響があるため、条項の名前だけでなく不履行時に何が起こるかを理解する必要があります。
清算条項が残す権利まで消していないか読む

「互いに債権債務がない」とする清算条項では、どの紛争を対象に、いつの時点でそう確認するのかを読みます。今回決めた分割金まで消す文言になっていないかも確認します。
未発見の財産、ほかの相続の問題、税金の精算等を残すつもりなら、その扱いを明確にします。すべての将来の請求を広く放棄する合意がよいかは、相続の全体像によって変わります。
保険金の情報を確認中、遺言の解釈に別の争いがあるなど、未解決事項を別紙へ並べて弁護士へ示します。清算する事項と残す事項が、本文や別紙の間で矛盾していないかを点検してください。
金銭以外の支払いと相続税の修正を合意前に確認する

現金の代わりに不動産等を渡す案では、相手の合意、評価、担保、登記費用に加え、支払う側の譲渡所得税等を確認します。相続財産だから非課税という整理ではなく、金銭債務に代える資産の移転として税務を検討します。
既に相続税の申告又は決定があり、遺留分に基づき支払う金銭額の確定によって税額が過大となった場合は、相続税法32条の更正請求の特則を確認します。その事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内という期限があり、最終回の入金まで待てばよいとは限りません。
税額が少なくなっていた側の修正申告等も別に確認します。合意日、金額が確定した経過、支払内容を税理士へ伝え、双方の税務資料と合意書が対応するようにします。
署名後も支払台帳と完了確認を残す

署名後は、支払予定と着金実績を別の列にした台帳を使います。各回の期日、予定額、実際の入金日、入金額、残額を記入し、送金明細と対応させます。
途中で支払方法を変えるときも、口頭の了解だけにせず、何を変更したかを双方が確認できる形へ残します。支払いが止まった場合は、合意書と台帳を示して、定めた催告等の対応を弁護士へ相談します。
完済時は、残額、利息等、担保の解除や書類の返還を確認します。合意書を作成した日で管理を終わらせず、実行と完了の証拠まで保存してください。
よくある質問

合意書に署名があればすぐ差押えできますか
私署の合意書だけで直ちに強制執行できるとは限りません。執行認諾文言のある公正証書や調停調書等を使うかも専門家へ確認します。
清算条項は相続について全部終わったと書けばよいですか
意図した範囲と一致するかを確認します。未払の合意金や未解決の財産、税金等まで消す内容になっていないかを点検してください。
相続税の更正請求は分割金の完済後でよいですか
完済日を基準と決めないでください。金銭額確定により過大税額となる場合の特則は、事由を知った日の翌日から4か月以内等の条件を税理士へ確認します。