遺留分の計算方法 家族別の割合と生前贈与を含む侵害額の求め方

遺留分の計算方法 家族別の割合と生前贈与を含む侵害額の求め方のイメージ

父の遺言に「財産はすべて兄に相続させる」と書かれていた。自分にも取り分があるはずだと感じても、請求できる額が遺産の半分なのか、4分の1なのかは、家族構成によって変わります。

遺留分の計算は、割合を調べるだけでは終わりません。計算のもとになる財産に生前贈与を加えるか、自分がすでに受け取った分をどう扱うかによっても金額が変わります。

まずは家族構成から自分の割合を確かめ、次に財産額、最後に不足額を計算しましょう。請求には期限があるので、金額の調査と意思表示を分けて進めることも必要です。

この記事でわかること
  • 家族構成ごとの遺留分の割合と対象になる人
  • 生前贈与や借金を含めた遺留分侵害額の計算方法
  • 請求の期限と金額が決まる前にしておく対応
目次

遺留分は法定相続分と異なり請求できる人が限られる

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配偶者と子などには遺留分があり兄弟姉妹にはない

遺留分は、遺言や生前贈与によって財産が一部の人に偏った場合に、一定の相続人が最低限の取り分を守る制度です。法律上の配偶者、子やその代襲相続人、子などがいない場合の直系尊属が対象になります。

亡くなった人の兄弟姉妹や、その代襲相続人である甥・姪には遺留分がありません。相続人であることと、遺留分を持つことは別です。相続放棄をした人も、放棄した相続について遺留分を請求する立場ではありません。

例えば、子も親もいない夫が全財産を妻に残す遺言を作った場合、夫の兄弟姉妹が法定相続人になるとしても、遺留分を理由に妻へ金銭を求めることはできません。

現在の制度では不足額に相当する金銭を請求する

2019年7月1日以降に開始した相続では、遺留分を侵害された額に相当する金銭を求めます。遺言に書かれた実家が、自動的に兄弟の共有に変わる制度ではありません。

このため、実家を受け継いだ側にも、支払い資金をどう用意するかという問題が生じます。請求する側は、家を取り戻せるかという話と、金銭の支払額をどう計算するかという話を分けて考えます。

2019年6月30日以前に亡くなった人の相続は旧制度が適用されます。古い相続の相談では、今の計算や手続きをそのまま当てはめず、死亡日を専門家に伝えてください。

家族構成から自分の遺留分の割合を確認する

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全体の割合を確認したうえで各人の割合を求める

遺留分を算定する財産全体に対する割合は、直系尊属だけが相続人である場合には3分の1、それ以外で遺留分が認められる場合には2分の1です。これが、遺留分権利者全体についての割合です。

配偶者と子が相続人なら、この全体の割合に、それぞれの法定相続分を掛けます。配偶者と子2人の場合、配偶者は2分の1×2分の1で4分の1、子は一人につき2分の1×4分の1で8分の1となります。

主な家族構成ごとの遺留分
相続人の構成配偶者の割合子または親の割合
配偶者と子1人1/4子1人で1/4
配偶者と子2人1/4子1人につき1/8
子1人のみ該当なし1/2
子2人のみ該当なし子1人につき1/4
配偶者と父母2人1/3親1人につき1/12
父母2人のみ該当なし親1人につき1/6
配偶者と兄弟姉妹1/2兄弟姉妹にはない

配偶者と兄弟姉妹の組み合わせを機械的に掛け算しない

配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合、配偶者の遺留分は2分の1です。法定相続分の4分の3を使って「2分の1×4分の3=8分の3」と計算する扱いではありません。

先に亡くなった子の子が代襲する場合は、人数だけで遺留分を均等に割るのも不適切です。どの子の相続分を引き継ぐかを整理します。養子、前の婚姻の子、相続放棄などが関係する場合も、戸籍と手続きの結果を確認してから割合を決めます。

計算のもとになる財産には一定の生前贈与を加える

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死亡時の財産に贈与を加え債務を差し引く

計算の基礎になる額は、相続開始時の財産の価額に、法律上加えるべき生前贈与の価額を足し、相続債務を差し引いて求めます。死亡時の通帳残高だけでは、計算の範囲を確認したことになりません。

一方で、家族が気にしている出金をすべて贈与にすることもできません。贈与なのか、生活費の支出なのか、親からの貸付けなのか、使途が不明なのかを資料で区別します。領収書、契約書、振込履歴を残し、確認できない部分も一覧にしてください。

調査の進め方は、親の財産がわからないときの確認方法も参考になります。ただし、財産が見つかるまで請求期限を待ってもらえる制度ではありません。

相続人への贈与は原則10年以内の特別受益を確認する

相続人に対する贈与は、原則として相続開始前10年間のうち、婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与を計算に加えます。住宅取得や開業のためのまとまった援助などが論点になります。

相続人以外への贈与は原則として相続開始前1年間が対象です。ただし、贈与した人と受け取った人の双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合には、それ以前の贈与も対象になることがあります。

これらは、相続税で暦年贈与を加算する期間とは別のルールです。「税金がかからなかった贈与だから遺留分にも関係しない」とは判断できません。贈与の時期、相手、目的、金額を個別に確認します。

不動産は相続税評価額をそのまま使うと限らない

遺留分では、相続開始時を基準に財産の価額を評価します。不動産の固定資産税評価額や相続税評価額が、そのまま適切な時価になるとは限りません。金額に争いがあれば、査定や鑑定などの根拠が必要になります。

生前に贈与された財産についても、贈与時の数字を単純に足せばよいとは限りません。現金の価値の換算、贈与後に売却された不動産、非上場株式などは、評価方法も含めて専門家に確認します。

指定受取人の死亡保険金は、通常の遺産と同じに一律加算するものではありません。著しい不公平などの特段の事情が問題になる場合があるため、高額な保険金があるときは契約内容を別に渡してください。

遺留分の金額から自分が取得する分を調整して侵害額を出す

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母と子2人で財産8千万円なら子一人の遺留分は1千万円

次の条件を置いた、本記事独自の計算例で確認します。父が亡くなり、相続人は法律上の妻である母と子2人。計算の対象になる財産は8,000万円で、加算する生前贈与と債務はないものとします。

子一人の遺留分は8分の1なので、8,000万円×1/8=1,000万円です。遺言により、その子が200万円だけを受け取り、ほかに本人が控除される贈与や取得財産を持たないなら、足りない額は800万円となります。

子一人の遺留分侵害額を求める例
計算するもの計算金額
本人の遺留分8,000万円×1/81,000万円
本人が取得する分遺言で200万円を取得200万円
遺留分侵害額1,000万円−200万円800万円

1,000万円がそのまま追加請求額になるわけではありません。すでに取得する200万円を含めて最低限の取り分を考えるので、足りない800万円を求めるという違いがあります。

自分への贈与と承継する債務も調整する

実際の侵害額では、本人が受けた遺贈や特別受益に当たる贈与、遺産分割で取得すべき財産などを遺留分額から控除します。さらに、本人が承継する債務があれば、その額を加えて計算します。

債務は、基礎財産の計算で差し引く処理と、本人の侵害額で加える処理があるため混同しやすい項目です。「借金は兄が全部払うと家族で決めた」という話だけで、債権者に対する責任まで変わったと扱うことはできません。

自分にも住宅資金の贈与があった場合、請求額が当初の見込みより少なくなることがあります。相手の贈与だけでなく自分の分も確認した計算表にすると、交渉でどこに違いがあるか説明できます。

計算が終わる前でも請求の意思表示は期限内に行う

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侵害を知った時から1年と相続開始から10年を確認する

遺留分侵害額請求権は、相続の開始と、遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効で消滅します。単に死亡日から一律に1年と決めるルールではありません。

また、知らなかった場合でも、相続開始から10年を経過すると請求できなくなります。いつ死亡を知り、いつ遺言や贈与の内容を知らされたか、通知やメールとともに日付を整理してください。

「計算額が確定してから連絡する」「遺言が無効かどうか決着するまで待つ」という進め方では、期限を過ぎるおそれがあります。金額や遺言の効力に疑問が残っていても、権利行使の対応は別に確認します。

調停の申立てだけでは相手への意思表示にならない

期限内に必要なのは、遺留分侵害額請求権を行使する意思を相手方に伝えることです。具体的な金額が未確定でも、権利を行使する意思表示は可能です。内容と到達を記録できる、配達証明付き内容証明郵便などが利用されます。

裁判所も、調停を申し立てただけでは相手への意思表示にならないと案内しています。通知先が複数いる場合、相手が受け取らない場合、期限が迫る場合には、誰にどの方法で到達させるかを弁護士と確認してください。

財産の資料と計算の違いを整理して支払いの協議に進む

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一覧には金額だけでなく根拠と未確認事項を付ける

相談の準備では、遺言書、戸籍、死亡時の預金残高、不動産の登記事項、生前贈与の履歴、借金の残額をそろえます。資料がない項目をゼロにせず「未確認」として残すと、追加調査の優先順位を決めやすくなります。

相手から計算表が提示された場合は、対象財産、贈与の範囲、評価時点、自分の取得額、債務の5点を照合します。割合が正しくても、基礎の数字に抜けがあれば結論は変わります。

生前に分け方を準備する人は、生前贈与と相続を比較する際の確認点も踏まえ、税金の試算と家族の取り分を別々に確認します。節税できる方法が、遺留分の問題まで解決するとは限りません。

意思表示の後も金銭請求を放置しない

通知の後は、財産評価と支払額、支払時期、分割払いの条件などを協議します。まとまらなければ家庭裁判所の調停などを検討します。相手の資金が不足していても、当然に請求が消えるわけではありません。

権利行使の意思表示によって生じた金銭債権には、別の消滅時効が問題になります。一般の債権についての5年などの規定と、前述の1年の期限を混同せず、交渉を放置しないことが必要です。

請求する側も受けた側も、金額だけを口頭で決めず、評価根拠と合意内容を残します。ほかの請求まで放棄する内容を含む合意書に署名する場合は、どこまで解決する条文なのかを確認してください。

話し合いでは財産額と請求額の二段階を確認する

遺留分の相談で「実家は3000万円」と伝えるときは、その額が売却相場なのか、相続税評価額なのか、固定資産税評価額なのかを添えます。同じ家でも資料の目的によって金額が異なるため、数値だけを渡すと計算の前提が食い違います。

まず対象財産と贈与、債務を整理して基礎となる財産額を確認し、次に自分の割合と取得済みの利益などを反映して不足額を検討します。家族が示した財産額への異議と、請求額への異議を分けると、何を追加で調べるべきかが明確になります。

すぐに評価が決まらない不動産があっても、請求の意思表示の期限まで待てるとは限りません。金額を検討する資料の不足と、相手へ請求を伝える必要性を別の問題として相談してください。

遺留分の計算でよくある質問

遺留分の計算でよくある質問に関する資料のイメージ

兄弟姉妹にも遺留分はありますか

亡くなった人の兄弟姉妹と、その代襲相続人である甥・姪にはありません。法定相続人でも遺留分があるとは限りません。

遺留分を侵害する遺言はすべて無効ですか

侵害があるだけで遺言全体が無効になるわけではありません。現在の制度では、原則として不足額に相当する金銭を請求します。

財産額がわからないと請求できませんか

請求額が未確定でも、遺留分侵害額請求権を行使する意思表示はできます。調査を続けながら、期限内に相手へ意思を伝える方法を確認してください。

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