事業承継の固定合意で株価を決める 評価日と証明資料のそろえ方

合意の内容を確認する契約書類

固定合意で決める株価は、将来の相続税額や会社への売却価格ではありません。贈与した株式について、遺留分の計算に入れる価額を合意時の価額に固定するための数字です。

その数字には、法律で定める専門家による適正価額の証明が必要です。対象株式、評価日、証明の前提をそろえ、値上がりと値下がりの両方を家族へ説明する順序を整理します。

この記事でわかること
  • 合意価額と税評価や売却価格を区別できる
  • 証明を依頼する人と必要資料を確認できる
  • 株価が上がる場合と下がる場合を比較できる
目次

固定する株数と合意日の価額をそろえる

税額の計算を確かめる資料と計算機

最初に、固定の対象にする株式を特定します。会社名、株式の種類、株数、旧代表者からの取得経路を一覧にし、株主名簿や贈与資料と照合してください。

固定合意は、対象会社、後継者、推定相続人等の法定要件を満たす会社の事業承継で使う仕組みです。個人事業の事業用資産を同じ固定合意で処理できるわけではありません。

例えば「対象100株の合意時の価額を3000万円とする」という案なら、100株の範囲と3000万円の評価根拠を一組にします。贈与日、評価の基準日、合意日が違う場合は、どの時点の数字かを説明できるようにします。

以前の贈与税申告書にある評価額は、調査資料の一つです。その数字を今回の合意時の適正価額として、そのまま使えるとは限りません。会社の業績や株式の権利内容が変わっていないかも確認します。

適正価額の証明者と評価資料を確認する

取引記録を保管するファイルと資料

法律は、弁護士、公認会計士、税理士等の所定の資格者や法人が、合意時における相当な価額として証明した価額に限ると定めています。家族同士で納得した金額だけでは足りません。

証明者には除外規定もあります。旧代表者や後継者自身、業務停止中の資格者等のほか、法人について確認すべき条件もあるため、資格名を見ただけで依頼先を決めないようにします。

評価の前提と対象株式を証明書へ対応させる

依頼時は、評価する株式と会社の資料をまとめて提示します。資料が欠けている場合は、その欠落が価額の判断へどう影響するかを証明者に確認してください。

資料確認する内容
株主名簿と贈与資料対象株式の種類・株数・取得経路
定款と登記事項株式の権利内容と会社の状況
決算書と直近の試算表資産負債・利益と評価時点との差
事業計画と重要契約将来見通しや価額に影響する前提
合意案と評価の説明対象、基準日、価額、証明者が一致するか

会社の一部資料しか出せないときに、仮の価額を確定値として合意書へ入れないことが大切です。証明依頼の段階で、不足資料と追加確認の期限を決めます。

値上がりと値下がりを同じ固定額で比較する

提出書類を照合するための紙資料と筆記具

固定合意は、合意後の値上がり分だけを都合よく除く約束ではありません。将来株価が下がった場合も、固定した価額が遺留分の計算に使われる点を確認します。

対象株式を3000万円で固定し、有効な合意が維持されているという仮定で比較します。次の数字は基礎となる財産へ算入する価額で、誰かへの支払額や相続税額ではありません。

仮定した死亡時の価額固定合意により算入する価額家族へ説明する点
6000万円へ上昇3000万円上昇した3000万円をそのまま基礎へ加えない
1000万円へ下落3000万円実際の価額が低くても固定価額が基準となる

実際の遺留分の侵害額には、他の財産、債務、贈与、各人の取得内容なども関係します。この表から「3000万円を他の子に払う」と結論を出すことはできません。

非後継者には固定による上昇分の扱いを、後継者には下落時の負担も含めて説明します。どちらか一方に有利な将来だけを想定して、同意を求めないようにしましょう。

家族の説明と申請資料に同じ数字を使う

支払内容を確かめる領収書と計算道具

対象株式一覧、専門家の証明、合意書には、同じ株数と価額を使います。例えば証明が普通株式100株なのに、合意書が全保有株式となっていれば、署名前に整合を取り直します。

固定合意にも、推定相続人と後継者全員の書面合意、株式処分や経営離脱に関する必須措置、大臣確認、家庭裁判所の許可が必要です。価額の証明を取得しただけで、合意の効力は生じません。

大臣確認の申請は合意日から1か月以内、家裁への申立ては確認日から1か月以内という別々の期限で管理します。許可審判が確定した後も、後継者や推定相続人の変化に伴う失効条件を確認します。

税理士や弁護士へは、固定したい理由と家族への説明内容も渡してください。遺留分の基礎価額を固定する作業と、贈与税や将来の相続税を計算する作業を、別々の数字として管理できます。

関連する資料の準備は、遺留分の計算方法 家族別の割合と生前贈与を含む侵害額の求め方も参考にしてください。

よくある質問

疑問点を調べるための本とメモ

固定合意には贈与税申告の評価額を使えますか

過去の税評価額は参考資料ですが、合意時の適正価額を所定の専門家が証明する必要があります。同じ価額になると決めつけず確認します。

将来の株価が下がれば固定価額を自動的に下げられますか

自動的に死亡時の低い価額へ置き換わる仕組みではありません。下落時にも固定価額を使う効果を合意前に確認してください。

専門家の証明書だけで固定合意は有効ですか

証明書だけでは足りません。全員の書面合意、大臣確認と家裁許可などの手続きを経て、許可審判の確定を確認します。

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