相続人への遺贈登記を一人で申請する条件と添付書類

遺言に「不動産を子に遺贈する」とあれば、受け取る子が相続人である場合は、一人で登記を申請できる制度があります。遺言執行者や他の相続人と必ず共同申請するとは限りません。
受遺者の資格、古い相続への適用、添付書類と最新様式を順に確かめ、相続を原因とする登記との取り違えを防ぐ方法を説明します。
- 受遺者が相続人かを戸籍と遺言で確かめる
- 死亡日が古いときも現在の申請方式を確認する
- 遺贈の申請資料と期限や費用を別に整理する
受遺者が相続人であることを戸籍と遺言で確かめる

不動産登記法63条3項は、相続人に対する遺贈による所有権移転登記について、受遺者が単独で申請できると定めています。遺言に「遺贈する」と書かれていれば誰でも一人で申請できる、という規定ではありません。
遺言をD01、死亡の記載がある戸籍をD02、受遺者の相続関係を示す戸籍をD03として並べ、遺贈された物件と取得する人を読み取ります。親族というだけで法定相続人と決めず、続柄や先順位者、相続放棄等を確認してください。
| 父の遺言の架空例 | 受遺者の立場 | 単独申請の確認 |
|---|---|---|
| 自宅を長女Aに遺贈する | Aが父の相続人 | 63条3項の対象となるか資料を照合 |
| 別の土地を友人Bに遺贈する | Bは相続人ではない | 同項による単独申請とはせず共同申請等を確認 |
相続人ではないBが包括遺贈を受けた場合も、それだけでこの規定の「相続人」に当たるとは扱いません。また、弟が遺言執行者に指定されていることと、Aが相続人として単独申請できるかは別の確認です。
申請日が2023年4月以後なら古い遺贈も現行方式を確認する

法務局は、2023年4月1日より前に開始した相続で遺贈を受けた相続人も、同日から単独申請ができると案内しています。死亡日が古いという一点だけで、従来の共同申請書を使う必要があるとはいえません。
| 仮定した時系列 | 確認すること |
|---|---|
| 2021年に父が遺言を作成 | 遺言の内容と対象不動産 |
| 2022年に父が死亡 | 効力発生日とAの相続人資格 |
| 2026年にAが登記を申請 | 現在の63条3項と最新様式を確認 |
単独申請の仕組みが使えることは、遺言が有効であることや物件の特定が十分であることの保証ではありません。複数の遺言、後の売却、既に別人へ入った登記などがあれば、日付と原資料を専門家へ示してください。
遺贈の申請欄と添付書類を同じ物件へ対応させる

一般的な「相続」の記載例の日付だけを変えず、相続人への遺贈の記載例を使います。原因は遺贈、日付は原則として遺言者の死亡日です。地番や家屋番号、移転する持分は、郵便の住所ではなく登記記録と遺言の内容に対応させます。
| 資料番号 | 役割と確認点 |
|---|---|
| D01 遺言書等 | 物件と取得者、遺贈の内容を確認 |
| D02 死亡の戸籍 | 遺言の効力発生日を示す |
| D03 受遺者の戸籍等 | Aが遺言者の相続人であることを示す |
| D04 住所資料 | Aの住所と、父が登記名義人と同一人であることの必要資料 |
| D05 登記記録 | 所有者、物件表示、持分、他の登記 |
| D06 評価資料 | 申請時の課税価格等の計算に使う |
D02とD03で同じ戸籍が重複するなら、同じ書類を二重に出す必要があるとは限りません。遺言書も、公正証書遺言、法務局保管の自筆証書遺言、それ以外では提出資料や検認の扱いが異なります。保管制度を利用した場合は遺言書情報証明書を確認し、公正証書以外は全て検認が必要とは説明できません。
この単独申請では、従来の共同申請に使う父の登記識別情報や、他の相続人・遺言執行者の印鑑証明書を一律に足さないようにします。一方、父の最後の住所と登記記録が違うなどの場合には、同一人だと示す資料の確認が残ります。
2026年10月5日以後の申請では、名義人となる人の国籍等の申出にも対応する最新様式を使います。氏名のふりがな、生年月日、本人のメールアドレス等の検索用情報と必要な証明資料も現行案内で確認し、古い記載例をそのまま完成版にしないでください。メールアドレスがない場合の記載方法も案内に従います。
単独申請できることと期限や税金の確認を分ける

相続人への遺贈も登記申請義務の対象です。原則として、自分のために相続が始まり、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内という期限を確認します。2024年4月より前の取得には経過措置もあるため、2026年に初めて手続きを始める場合は、いつ知ったかを含めて管轄登記所へ確認します。
本人が一人で申請できることは、手続きが全て無料になるという意味でもありません。登録免許税、戸籍や評価資料の取得費、依頼する場合の報酬を分けて見積もります。相続税の申告要否や期限も登記とは別なので、登記が終われば税務申告も不要と判断しないでください。
提出後は受付記録と補正の連絡を残し、完了したら登記記録を確認します。申請を出した日と名義変更が完了した日は違うため、売却等の予定は完了時期と合わせて専門家へ相談します。
相続に伴うほかの確認は、相続登記の義務化はいつまでか 3年の期限と必要書類や未分割の対応も参考に、今回の申告資料と分けて整理してください。
よくある質問

父が2023年4月より前に亡くなっていても単独申請できますか
相続人への遺贈で、2023年4月1日以後に申請する場合は対象になります。遺言や相続人資格等も確認します。
遺言執行者がいると一人で申請できませんか
相続人への遺贈について、執行者がいることだけで単独申請ができなくなるわけではありません。遺言と取得原因を確認します。
友人への包括遺贈も単独申請できますか
包括受遺者というだけではこの相続人向け規定の対象にはなりません。共同申請等の方法を別に確認してください。