故人の確定申告書を閲覧するには 相続人の書類と窓口

親が生前に提出した確定申告書の控えが見つからない場合は、相続人として税務署の「申告書等閲覧サービス」を相談できます。全員での来署や、来署しない相続人の委任など、確認する人に応じた資料が必要です。
本人向けのe-TaxによるPDF取得や、個人情報の開示請求とは利用できる人と方法が違います。ここでは、準確定申告のために前年の申告内容を確認したい相続人を想定し、対象年の指定から窓口閲覧までを整理します。
- 故人の申告書で利用できる確認方法と対象書類
- 全員の相続関係と委任状や証明書の準備
- 窓口申請と写真撮影やコピー交付の違い
作成したい申告書と見たい年分を先に特定する

国税庁の「申告書等閲覧サービス」は、申告書等を作るために過去の内容を確かめる場合や、提出事実・提出年月日を確かめる場合の行政サービスです。故人が生前に提出した申告書等も、相続人について所定の確認を受けて閲覧することができます。
最初に「親の税金を全部調べたい」とまとめず、税目、年分、書類名と必要な項目をメモします。準確定申告を作るために前年の事業所得を見たいなら、所得税申告書だけでなく、青色申告決算書や収支内訳書も対象として相談します。
| 見たいもの | 閲覧で確かめたい欄 |
|---|---|
| 父の2025年分所得税申告書 | 所得の種類、所得控除、既に申告した金額 |
| 同年分の青色申告決算書 | 事業の収入・経費、減価償却等の内訳 |
| これから作る2026年分準確定申告の作業メモ | 前年の申告書・決算書を参照する理由と未確認の数値 |
これは必要書類を特定するための架空例です。前年の申告額をそのまま死亡年へ写すものではなく、死亡日までの帳簿や支払資料と照合するために使います。また、この閲覧は銀行等へ出す所得証明を作る制度でも、親の全財産を税務署が一括調査する制度でもありません。
本人向けPDF取得と相続人の窓口閲覧を区別する

e-Taxには、本人が所得税申告書等のPDFを取得する方式があります。しかし、この「申告書等情報取得サービス」は、相続人や代理人が故人分を取得するための方式ではありません。子自身のマイナンバーカードがあれば親のPDFも取得できる、とは考えないようにします。
| 方法 | 今回の用途との関係 | 区別する点 |
|---|---|---|
| 手元の控えや保存済みデータ | 保管場所や関与税理士へ所在を尋ねる | 年分と修正後の版を照合する |
| 本人向けのe-Tax情報取得 | 相続人・代理人はこの方式を利用できない | 故人本人として操作する方法で代用しない |
| 税務署の申告書等閲覧 | 相続人として資格資料を用意して相談する | 窓口での閲覧であり通常のコピー交付ではない |
| 保有個人情報の開示請求 | 故人の生前申告書は、そのほとんどが対象にならない | 写しが欲しいから誰でも選べる制度ではない |
国税庁の現行指針は、死亡した個人が生前に提出した申告書等のほとんどが、個人情報保護法による開示請求の対象にならないことも示しています。「閲覧か有料の開示か、好きな方を選べる」とせず、相続人が確認したい書類であることを伝えて窓口を選んでください。
相続関係と全員の委任資料を申請日前の日付でそろえる

故人が生前に提出した申告書等では、相続人全員が来署して全員の氏名を記載した申請書を出すか、来署する一部の相続人が、ほかの相続人全員の委任状と印鑑証明を持参する取扱いです。子一人の戸籍だけで、他の相続人の確認を省けるわけではありません。
父の相続人が母、長男、長女の三人で、長女だけが行く例を考えます。相続人全員との関係を示す戸籍等又は法定相続情報一覧図の写しに加え、母と長男の実印を押した委任状、印鑑登録証明書等を準備します。来署する長女自身の本人確認書類も必要です。
| 用意する資料 | 三人の例での対象 | 提出前に照合すること |
|---|---|---|
| 相続関係証明書類 | 父の死亡と母・長男・長女の関係 | 全員との関係が分かるか、申請日前30日以内の発行か |
| 来署しない人の委任状 | 母と長男 | 実印、閲覧する税目と年分、写真撮影を希望する旨 |
| 印鑑登録証明書等 | 委任した母と長男 | 実印との一致、申請日前30日以内の発行か |
| 来署者の本人確認 | 長女 | 現行の運転免許証や個人番号カード等 |
ここでの「30日」は、親が亡くなってからの提出期限ではなく、証明書の発行日と閲覧申請日を比べる条件です。相続放棄をした人がいる場合は、家庭裁判所の受理通知書や受理証明書等で確認し、その人の委任を要しない取扱いを相談します。
税理士への依頼は閲覧する権限と対象年を明確にする
税理士に依頼する場合は、税理士証票や税理士用委任状等の取扱いを確認します。2024年4月1日以後に提出された税務代理権限証書の委任状欄に、閲覧に係る委任事項が記載されている場合には、税理士用委任状が不要となる取扱いがあります。
ただし、故人分について全員の相続関係や委任を確認することまで消えると考えないでください。顧問だったという事情だけに頼らず、誰のどの年分を閲覧し、撮影も任せるのかを依頼する税理士と共有します。
窓口で申請し撮影と控えの扱いを確かめる

閲覧申請は、原則として故人の納税地を所轄する税務署の窓口で行います。電話は対象書類、窓口や来署時の資料を相談するために使い、電話や郵送だけで申請と閲覧を終えられるとは考えないようにします。
申告書等閲覧申請書には、閲覧する人、対象の納税者、税目、年分や事業年度、書類名、申請理由等を現行様式に沿って記入します。所得税申告書と青色申告決算書のどちらも必要なら書類名を分け、写真撮影を希望する欄や同意事項も読みます。
閲覧は原則として即時ですが、業務センターや集中書庫で保管している場合、マスキング処理に時間がかかる場合などは別の日になります。準確定申告の期限が迫っているときほど、来署前に保管状況と日程を尋ね、閲覧の予定だけで申告期限が延びたとは扱わないでください。
写真撮影は、その場で画像を確認できるスマートフォン等で認められる方式です。動画は認められません。撮影対象と同意事項に従い、他の人の資料などが写り込んだ場合は、職員の確認を受けて消去や撮り直しをします。
通常、申告書のコピーは交付されず、写真や書き写した内容へ原本と相違ない旨の証明が付くわけでもありません。災害で帳簿等も消失した場合や、書き写しが困難な高齢者・障害者等のやむを得ない場合には必要部分に限った例外があるため、その事情を窓口へ伝えます。
閲覧後は、所得税申告書と青色申告決算書の年分やページ、読み取れない欄、まだ不足する帳簿を準確定申告の作業メモへ追記します。申告書に載る財産だけで調査を終えず、親の財産の調べ方 預貯金や不動産の照会先と必要書類も使って、口座や不動産の現在の資料を別に取り寄せてください。
手元の資料と未確認の点を整理して相談する際は、相続サポートの相談窓口をご覧ください。
よくある質問

相続人一人でも故人の申告書を閲覧できますか
一部の相続人が来署する方法はありますが、ほかの相続人全員の委任状と印鑑証明等が必要です。相続人全員との関係を示す書類と来署者の本人確認書類も準備します。
自分のマイナンバーカードで親の申告書PDFを取得できますか
本人向けの申告書等情報取得サービスは、相続人や代理人は利用できません。故人分は相続人として税務署の窓口閲覧を相談してください。
税務署で故人の申告書のコピーをもらえますか
閲覧サービスでは原則としてコピーを交付しません。所定の条件での写真撮影と、災害等のやむを得ない場合の例外を窓口へ確認します。